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気づきの3つの領域

自己想起 self-remembering の効能 マインドフルネスと、グルジェフからのヒント

さて、別に、世間一般や心理療法の現場で漠然と語られている「気づき awareness」という心理状態(上位機能)を、構造的に理解するために、G・I・グルジェフの自己想起 self-rememberingという気づきの実践技法をさまざまに見てみました。
気づき awarenessと自己想起 self-remembering

マインドフルネスが語られるようになってきた昨今、特に重要なテーマと考えられたからです。そこでは、変性意識状態(ASC)の研究で有名なチャールズ・タート博士の著書『覚醒のメカニズム』(吉田豊訳、コスモスライブラリー)をもとに諸々を考えみました。

今回は、グルジェフの弟子としても著名なウスペンスキーの著書『奇蹟を求めて』(浅井雅志訳、平河出版社)から、グルジェフの言葉やウスペンスキーの洞察を取り上げ、自己想起 self-remembering の大きな潜在力について考えてみたいと思います。

ところで、それに少しでも取り組むと分かるように、自己想起 self-remembering は、非常に困難であると同時に、極めて重要な実践であり、人生を決定的に違う光りのもとに照らし出すものとなっています。

さきのタート博士は語ります。

「ウスペンスキーの『奇蹟を求めて』を読んだ結果、私が初めて自己想起を実践した時、これは自分が必要としている何かきわめて重要なことだとすぐにわかった。」(前掲書)

また、ウスペンスキーも語ります。

「G(グルジェフ)の言ったこと、私自身が考えたこと、また特に自己想起の試みが私に示したことすべてから、私はこれまで科学も哲学も出合ったことのない全く新しい問題に直面しているのだということを間もなく納得したのである。」(前掲書)

ウスペンスキーの言葉は、すでに100年前のものですが、この間、人類はまったく進化していないので、事態はまったく変わっていないのです。

グルジェフは語ります。

「人生全体、人間存在全体、人間の盲目性全体はこれに基づいているのだ。人が自分は自分を想起することができないということを本当に知れば、彼はそれだけで彼の存在(ビーイング)の理解に近づいているのだ。」(前掲書)

ところで、筆者自身は、拙著『砂絵Ⅰ』の中でも記したように、個人的には「自分の自意識を外側から見る」というような変性意識的体験により、自分の日常意識の「無明性(眠り)」を突きつけられた結果、この自己想起の重要性に気づいていったという経緯があります。
→内容紹介『砂絵Ⅰ: 現代的エクスタシィの技法 心理学的手法による意識変容』

 

◆自己想起の実態

さて、この自己想起 self-remembering ですが、ウスペンスキーの本の中では、弟子たちが自己観察の宿題に対してさまざまな回答する中で、グルジェフが語ったことにあります。

「誰も私が指摘した最も重要なことに気づいていない。つまり、誰一人、君たちは自分を想起 remember yourselvesしていないということに気づいていないのだ〔彼はここの部分を特に強調した〕。君たちは自分を感じて feel yourselvesいない。自分を意識 conscious of yourselvesしていないのだ。君たちの中では、〈それ it が話し〉〈それ it が考え〉〈それ it が笑う〉のと同様、〈それ it が観察する〉のだ。君たちは、私 I が観察し、私 I が気づき、私 I が見るとは感じていない。すべてはいまだに、〈気づかれ〉〈見られ〉ている。……自己を本当に観察するためには何よりもまず自分を想起しなければならない。〔彼は再びこの語を強調した〕。自己を観察するとき自分を想起 remember yourselvesしようとしてみなさい。」(前掲書)

自己想起 self-rememberingは、普通に、現代社会で生活する中では、決して教わることのない独特な意識の働かせ方です。

自己観察の宿題を指示する中で、グルジェフは、私たちが自分自身だと思い、自分たちの自明の道具(特性)だと思っているこの「意識」は、決して確固として、いつもここに在るわけではない、私たちの存在を満たしているわけではないと指摘していたのです。それを観察するようにと示唆していたのです。

「私の言っているのは、意識が再び戻って来たとき初めて、それが長い間不在だったことに気づき、それが消え去った瞬間と再び現れた瞬間を見つけるか、あるいは思い出すことができるということだ。」(前掲書)

「自分の中で、意識の出現と消滅を観察すれば、君は必然的に、現時点では、見もせず認識もしていない一つの事実を見ることになるだろう。その事実というのは、意識を持っている瞬間というものは非常に短く、またそれらの瞬間瞬間は、機械の完全に無意識的かつ機械的な働きの長いインターヴァルによって隔てられているということだ。」(前掲書)

ウスペンスキーは、実際に、自己想起をトライした印象を次のように語ります。

「自分自身を想起すること、あるいは自分を意識していること、自分に、私は歩いている、私はしているといいきかせること、そしてとぎとれることなくこの私を感じ続けること、こういった試みは思考を停止させるというのが私の最初の印象である。私が私を感じていたとき、私は考えることも話すこともできず、感覚さえ鈍くなった。それにまたこの方法では、ほんのわずかの間しか自分を想起することはできなかった。」(前掲書)

そして、ウスペンスキーは、なんとか見出した定義として、次のように語ります。

「私は、自己想起 self-rememberingの特徴的な点である、注意の分割ということを話しているのである。私は自分にそれを次のような方法で説明した。何かを観察するとき私の注意は観察するものに向けられる。これは片方だけに矢印が向いている線で示される。

 私―→観察されている現象

私が同時に自己を想起しようとすると、私の注意は観察されているものと私自身の両方に向けられる。第二の矢印が線に現われる。

 私←→観察されている現象

このことを明確にしたとき、問題は何か他のものに向ける注意を弱めたり消したりしないままで自分自身に注意を向けることにある、ということに気づいた。さらにこの〈何か他のもの〉は私の外部にあると同様、私の内部にもありうるのであった。」

「注意のそのような分割の最初の試みが私にその可能性を示してくれた。同時に私は二つのことにはっきり気づいた。」

「第一に、この方法がもたらす自己想起は〈自己を感じること self-feeling〉や〈自己分析 self-analysis〉とは何の共通点もないことがわかった。それは奇妙に親しい趣のある新しくて興味ある状態だった。」

「第二に、自己想起の瞬間は、まれにではあるが生活の中でたしかに起こることに気づいた。このような瞬間を慎重に生みだすことによってのみ新しさの感覚を生むことができるのである。(中略)私は、自分の人生の一番古い記憶―私の場合は非常に幼少時のものであった―は自己想起の瞬間 moments of self-rememberingであったことがはっきりわかった。このことに気づくと他の多くのことがはっきりしてきた。つまり私は、自分を想起した過去の瞬間だけを本当に覚えているということがわかったのである。他のものについては、それらが起こったということだけしか知らない。私にはそれらを完全によみがえらせrevive、再びそれらを経験することはできない。しかし自己を想起した瞬間は生きて aliveおり、またいかなる意味でも現在 presentと違っていなかった。」

「私はまだ結論に至ることを恐れていた。しかし、すでに自分がおそろしく大きな発見の敷居の上に立っていることに気づいていた。」(前掲書)

そして、

「これらはすべて最初の頃の認識であった。後になって注意を分割することができるようになったとき、自己想起は、自然な形で、つまりおのずから、非常にまれな、例外的な状況でしか現れないようなすばらしい感覚を生み出すことがわかった。」(前掲書)

自己想起の能力は、訓練によって変容していくのです。
ところで、筆者自身も、人生の最初期の記憶は、自己想起 self-remembering と思しきものでした。それは一人で公園の砂場で遊んでいる時のもので、その状況はまったく覚えていませんが、何かを求めて注意を視界のない(遠くの)どこかに向けている時のものでした。そして、これが今も記憶として残っている理由は、風景の内容のせいではなく「遠くに注意を向けている自分の存在」というものを強烈に感じとっていたためであったのです。

さて、以前の記事にも引いた、タート博士の言葉を再び見てみましょう。

「人々が『感じること、見ること、聞くこと』を初めて試みる時、彼らは、しばしば、ある種の微妙な透明さ―その瞬間の現実により敏感で、より存在しているという感じ―を体験する。それは、合意的意識では味わうことができず、また、事実、言葉では適切に述べることができない、そういう種類の透明さである。たとえば私は、それを『透明さと呼ぶことにさえ自分がいささかためらいを感じているのに気づく。と言うのは、その言葉は(あるいは、それに関するかぎりでは、いかなる特定の言葉も)それ(透明さ)が安定した、変わらない体験であることを含意しているからである。それはそうではない―バリエーションがある―のだが、しかしそのことは、あなたがこの種の自己想起を実践すれば、自分で発見するであろう。」(前掲書)

さて、ところで、ゲシュタルト療法では、「気づきの連続体 awareness continuum 」といって、刻々の自己の状態に、気づいて awareness いくことを重要な実践として行なっていきます。

エクササイズもありますが、エクササイズ自体は、あくまでもイメージをつかむためのもので、本番は、日々の暮らしの中で、これをいつも行なっていくことにあります。
気づきの3つの領域 エクササイズ

この連続的な実践は、きちんと深めていくと「透明さ」「その瞬間の現実により敏感で、より存在しているという感じ」に近づいていくものでもあります。それはセッション(ワーク)を深めると同時に、普段の統合感を進めていくものであるのです。

そして、つまりは、この気づき awareness の連続的な実践に、自己想起の要素を持ち込むことは、私たちの気づきの範囲をひろげ、その統合的な効果をより倍化させていくことでもあるのです。

そのような点からも、この自己想起 self-remembering は注目すべき実践となっているのです。


※気づきや統合、変性意識状態(ASC)へのより総合的な方法論は拙著↓
入門ガイド
『気づきと変性意識の技法:流れる虹のマインドフルネス』
および、
『砂絵Ⅰ 現代的エクスタシィの技法 心理学的手法による意識変容』
をご覧下さい。


 


気づきawarenessと自己想起self-remembering

さて、
ゲシュタルト療法においては、
気づきawarenessの力について、
特に重視しています。

気づきの3つの領域 エクササイズ


ゲシュタルト療法の創始者、
フリッツ・パールズは語ります。

 「『気づく』ことは、クライエントに
自分は感じることができるのだ、
動くことができるのだ、
考えることができるのだということを
自覚させることになる。
『気づく』ということは、
知的で意識的なことではない。
言葉や記憶による『~であった』という状態から、
まさに今しつつある経験へのシフトである。
『気づく』ことは意識に何かを投じてくれる」

「『気づき』は常に、現在に起こるものであり、
行動への可能性をひらくものである。
決まりきったことや習慣は学習された機能であり、
それを変えるには
常に新しい気づきが与えられることが必要である。
何かを変えるには別の方法や考え、
ふるまいの可能性がなければ
変えようということすら考えられない。
『気づき』がなければ
新しい選択の可能性すら思い付かない」
(パールズ『ゲシュタルト療法』倉戸ヨシヤ訳、ナカニシヤ出版)

拙著やサイトの、
別の個所でも述べているように、
気づきawarenessは、
通常の私たちの心に対して、
少しメタ(上位)レベルの機能とも、
いえるものなのです。
内容紹介『砂絵Ⅰ: 現代的エクスタシィの技法』

さて、しかし、
この気づきですが、
「気づきawareness」という言葉は、
日常的な言葉な分だけに、
その状態が、
カバーしている帯域は非常に幅広く、
実践している人たちの間でも、
その状態(含意)が、
きちんと特定できていないという、
難点があります。

最近、日本においても、
マインドフルネスや、
ヴィパサナー瞑想も、
大分、メジャーになって来て、
気づきawarenessの重要性が、
知られるようになって来ていますが、
それでもいくらか、
わかりにくい要素が多いようです。

ここでは、
「気づきawarenessの先にあるものが何なのか」
と補助線を引くことで、
その途中段階にある、
「気づきの状態」を特定し、
それを訓練し、
育てていく実践と勘所について、
考えていきたいと思います。


◆気づき・自己想起・客観意識

そのため、ここでは、
気づきawarenessの状態の、
より先にある状態として、
ロジアの秘教的な思想家、
G・I・グルジェフが唱えた、
「自己想起self-remembering」
というものについて、
取り上げてみたいと思います。

グルジェフ自身は、
スーフィー系の、
秘教的なスクール出身のため、
その修行システムの体系には、
なんとも判断しがたい、
不思議な宇宙論が含まれているのですが、
それを脇に置いて、
その実践的な心理学を取り出すだけでも、
心理療法的な見地からも、
充分示唆に富む内容となっているのです。

変性意識状態(ASC)という言葉を有名にした、
アメリカの心理学者で、
意識の諸状態の研究家、
チャールズ・タート博士は、
そのようなグルジェフの実践システムについて、
心理学的な知見から、
『覚醒のメカニズム』(吉田豊訳、コスモス・ライブラリー)という、
興味深い本をまとめています。

今回は、
そこで描かれている、
自己想起self-rememberingの、
特性や原理・構造を見ていくことで、
気づきawarenessに必要な状態(強度)が、
どのような状態であるのかについて、
見ていきたいと思います。

それというのも、
気づきawarenessは、
訓練の果てに成熟していくと、
だんだんと、
自己想起self-remembering
の状態に近づいて来るからです。

逆にいうと、
自己想起self-remembering
と、まったくかけ離れている、
気づきawarenessは、
まだ、非常に微弱な段階にある、
幼い、気づきawarenessの状態である、
ということでもあるのです。

ところで、
自己想起self-rememberingとは、
その名の通り、
「自分のことを思い出している状態」
のことです。

重要なポイントは、
ただ思い出すだけではなく、
普段の日常生活の中で、
何かを(没頭的に)行なっている時に、
それを行ないつつ、
「このことを行なっているのは私」
と、自分の存在自身に、
気づいているということなのです。

つまり、生活の中で、
つねに、
自分の存在に、
今ここで、
ずっと気づいているawareness
という状態なのです。

たとえば、
この文章を読みつつ、
読んでいる自分自身の存在にも、
気づいていることです。
「読んでいる内容」をくみ取りながら、
「読んでいる私(自分)の存在」にも、
気づいていることです。

ウスペンスキーは、
注意力を、
対象と自分自身に分割する、
といいましたが、
そのような状態です。

実際に、
行なってみると分かるように、
この状態を、
持続的に維持していくことは、
至難の業です。

そのような自己想起self-rememberingが、
気づきawarenessの先にあることの意味が、
分かるかと思います。

実際、
自己想起self-rememberingに習熟すると、
気づきawarenessの状態も、
ずっと練度と力を増したものに、
なっていくのです。

ところで、
この自己想起の体験内容
(人生を一変させる、
めざましい覚醒感と豊かさ)を、
表現するのも、
至難の業です。
しかし、
これは自己想起を説明しようとする、
すべての人が、
逢着する地点なのです。

自己想起について、
さまざまに解説した後、
タート博士は述べています。

「私はこれらの言葉に満足していない。
けれども私は、自己想起のなんらかの体験をした
他の誰かには、かなりよく
これらの言葉の意が伝わることを知っている。」
(前掲書)

「気づきawareness」も、
そのような伝達の難しい側面を持っていることは、
分かるかと思われます。
自己想起は、
それがより強まったものでもあるのです。

ここからも、
気づきと自己想起の関係が、
類推されます。


◆自己想起の困難

自己想起はまた、
実践が難しいものです。
短時間、自己想起できても、
私たちはすぐにその実践を、
忘れてしまいます。

その難しさのひとつの要因は、
力とエネルギーに属することにもあります。

タート博士は述べています。

「自己想起の初期の難しさを理解するのに
役立つ類比がある。
われわれの注意力は筋肉―
われわれの心的機能が
あまりに自動化してしまっているので、
自分の側のなんの努力もなしに
われわれの注意を
その自動的な通路に沿って
いともたやすく運んでくれるため、
ほとんど使われることのない、
そういう筋肉―
のようなものである。
今あなたはそのたるんだ筋肉を
意図的な注意のために
使い始めているのだが、
しかし意図的な努力に慣れていないので、
それはすぐに
疲れてしまうのである。」
(前掲書)

また、慣性によってすぐ自動化する、
私たちの心の普段のふるまいに合わないからだとも、
いえます。
グルジェフは、
心の自動化を防ぐため(常に目覚めるため)、
自己想起を重視したので、
当然といえば当然なわけです。

「困難は、
必要とされる注意力と
努力の連続性を
維持することにある。
私の経験では、
自己想起は自動的にはなりえない。
あなたは常に、
それを意志的に行うことに、
意図的で意識的なわずかな努力と注意を
当てなければならないのである。」
(前掲書)


◆自己想起の存在論的な強度

たとえば、
タート博士は、以下の文にあるように、
自己想起の実践で起こる感覚を、
「透明さ」
「より存在しているという感じ」
と呼んでいますが、
多くの人が、
自己想起の中で、
そのような、濃密化する存在感を、
感じ取るのです。

「人々が
『感じること、見ること、聞くこと』を
初めて試みる時、
彼らは、しばしば、ある種の微妙な透明さ―
その瞬間の現実により敏感で、
より存在しているという感じ―
を体験する。
それは、合意的意識では味わうことができず、
また、事実、
言葉では適切に述べることができない、
そういう種類の透明さである。
たとえば私は、
それを『透明さ』と呼ぶことにさえ
自分がいささかためらいを感じているのに
気づく。
と言うのは、その言葉は
(あるいは、それに関するかぎりでは、
いかなる特定の言葉も)
それ(透明さ)が安定した、
変わらない体験であることを
含意しているからである。
それはそうではない―バリエーションがある―のだが、
しかしそのことは、
あなたがこの種の自己想起を実践すれば、
自分で発見するであろう。」

これは、
ある種のマインドフルネスで、
人が、はじめのうち、
新鮮に体験する領域と、
近いものでもあります。

ちなみに、ここで、
「合意的意識」と呼ばれているのは、
既成の社会の集合的合意によって、
催眠をかけられている、
普段の私たちの日常意識のことです。
「合意的トランス」とも、
呼ばれたりしています。

催眠の専門家でもあるタート博士は、
グルジェフと同じように、
私たちの日常意識とは、
社会集団が、成員に押しつけたい、
合意的な信念(ビリーフ)によって、
催眠をかけられている状態であると、
喝破しているのです。

そして、
その催眠を解くには、
自己が同一化している、
さまざまな自動的な自我状態に、
刻々気づく、自己想起の状態が、
必要であるとしているわけです。

自己想起が育つことで、
私たちは、
自分の自動化に気づき、
そのパターンを中断し、
より意識的な統合を、
なしていくことが、
できるわけなのです。


◆自己想起の構造・原理・効能

さて、そのような、
私たちの催眠にかけられた、
複数の自我状態(副人格)と、
自己想起self-rememberingの、
構造的関係を、
次に見てみましょう。

ゲシュタルト療法における、
気づきawarenessと、
複数の自我を扱う、
ワーク(セッション)のアプローチと、
大変近いことが分かると思います。

「基本的に、自己想起は、
とりわけ、任意のいずれかの時の
あなたの意識の特定の中身と同一化せず、
あなたの全体性の跡を
つけていくことができる、
そういう意識の一側面を
創り出すことを伴う。
それは、合意的トランスからの
部分的ないし完全な覚醒である。」

また、
「自己観察」と対比しつつ、
自己想起の特性を、
以下のように述べます。

「自己想起でも
同じ内容の世界および体験を
観察することができるが、しかし
観察のレベルまたは源泉が異なる。
注意を分割し、それによって、
両腕両脚中の感覚のような何か他のものに
同時に注意を留めながら、
通常よりもずっとよく観察いられるようにすべく
行使される意図的な意志は、
普通の心の外側のレベルで作用する機能を
創り出す。
あなたは起こりつつあることに心を奪われない。
あなたが―
『独立して』という用語が
通常用いられているよりも
はるかに大きな意味で―
独立して存在する、
そういう仕方があるのだ。」
(前掲書)

ここでも、
「普通の心の外側のレベルで作用する機能」
「あなたは起こりつつあることに心を奪われない」
「独立して存在する」
と、自己想起のつくる、
心的機能の新しい支点(中心)が、
私たちの自動化を超克する機能として、
指摘されています。

「自己想起とは、
われわれの分離した諸機能を
より統一された全体へと
まとめ上げることをさす用語である。
それは、
あなたという存在の(理想的には)全体、
あるいは、少なくとも
その全体のいくつかの側面が、
意識の詳細と同時に
心に留められるような仕方での、
意識の意図的な拡大を伴う。
それは、
われわれの知的な知識はもちろん、
われわれの身体、われわれの本能、われわれの感情を
想起することであり、
それによって
われわれの三つの脳の発達と機能の統合を
促進するのである。
このより広い範囲に及ぶ注意は、
われわれが体験の詳細に熱中し、
それらの詳細および
そのような熱中に伴う
自動化した機能と
同一化することを防いでくれる。
通常の自動化した同一化と
条件づけのパターンの外側に
意図的な意識の中心を
創り出すことによって、
われわれは、より多く目覚め、
より少なくトランス状態に陥っている自己―
主人のための土台―
を創り出すことができ、
それによって
われわれはより良く自分自身を知り、
より効果的に機能することが
できるのである。」
(前掲書)

さて、
ここでは、
自己想起の狙いでもある、
「意識の意図的な拡大」が、
指摘されています。

私たちは、
そのような意識の拡張を通して、
分裂と自動化を超え、
より統合した存在に、
近づいていくのです。

このような構造にも、
ゲシュタルト療法や、
当スペースが記している、
方法論との共通点が、
うかがえるかと思います。

実際、ゲシュタルト療法に、
グルジェフの観点を持ち込むことは、
大変、益の大きなことなのです。

また、
このような構造的連関で見ていくと、
気づきawarenessと言われている状態に、
自己想起self-rememberingと同じく、
どのような強度が無ければならないのか、という、

前段(冒頭)の論点も、
より見えやすくなって来るのです。

そのような意味でも、
この自己想起self-rememberingの視点は、
気づきawarenessを考える上でも、
大変、参考になるものとも、
なっているのです。

また、興味深いことは、
グルジェフ自身は、
この自己想起の成長の先に、
「客観意識」という、
次の状態があることも、
示唆しているという点です。

自己想起は、
まだまだ不安定な状態ですが、
それが確固として、
安定した状態があるとしているのです。

そのような観点(考え)も、
本書で扱っている、
意識の階層構造の仮説と、
通ずるものがあり、
意識の海図を構成する上での、
また、実践を進める上での、
興味深いヒントと、なるものなのです。
映画『攻殻機動隊』ゴーストGhostの変性意識
「聖霊」の階層その3 意識の振動レベル


※気づきや統合、変性意識状態(ASC)への

より総合的な方法論については、拙著↓
入門ガイド
および、
『砂絵Ⅰ 現代的エクスタシィの技法 心理学的手法による意識変容』
をご覧下さい。





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【PART1 Basic】ゲシュタルト療法
ゲシュタルト療法【基礎編】
ゲシュタルト療法【実践・技法編】
ゲシュタルト療法【応用編】
「セッション(ワーク)の実際」

【PART2 Standard】
気づきと変性意識の技法 基礎編
変性意識状態(ASC)とは
「英雄の旅」とは
体験的心理療法
NLP 普及・効果・課題
禅と日本的霊性
野生と自然

【PART3 Advanced】
気づきと変性意識の技法 上級編
変性意識状態(ASC)の活用
願望と創造性の技法
その他のエッセイ

【PART4 当スペース関係】
フリー・ゲシュタルトについて
セッションで得られる効果
なぜ、ゲシュタルトなのか
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カスタネダと「世界を止める」

さて、別のところで、攻殻機動隊に出て来る「疑似体験の迷路」という言葉を素材に、私たちの日常的現実について考えてみました。
映画『攻殻機動隊』2 疑似体験の迷路と信念体系

そして、私たちの日常的現実や日常意識も、疑似体験の迷路とそんなに違うものでもないということについて考察を行ないました。
加えて、そのような日常意識の中身を見抜くのに、変性意識状態(ASC)からの視線が有効であることについても見てみました。
さて、今回はそのような疑似体験の迷路としての日常意識に、介入するためのより身近な視点について考えてみたいと思います。

◆カスタネダと「世界を止める」

カルロス・カスタネダといえば、人類学者として出発し、インディアンのシャーマンに弟子入りすることで、そのサイケデリックな世界観を内側から報告する特異な作家として有名になりました。

その後、作品の語り口は、さまざまに変貌し、途中からは南米の古代的なシャーマニズムやその独特の世界観(や方法論)を伝える作家となりました。

カスタネダの師匠であったドン・ファンの実在性そのものが創作であると疑われているように、カスタネダの語っていることが、本当に伝統的なシャーマニズムのものであるか否かは分かりません(本人は、事実であると明言していますが)。

ところで、そのようなカスタネダの有名になった言葉のひとつに「世界を止める stop the world」という言葉があります。
私たちの「世界」とは、私たちの「内的なおしゃべり」「内的な対話」によって作り出されているという事柄に由来する言い回しです。

私たちは、いつもいつも「世界とは、こういうものだ」「世界とは、かくかくしかじかのものだ」と、自分自身に向かって言い聞かせることで、この「世界」を維持しているとカスタネダ(ドン・ファン)は指摘するわけです。
そして、その内的対話を止め、世界を止めるということが、真のリアリティへの道であるというわけなのです。

この内的対話は、信念体系(ビリーフ・システム)の働きとも連動して、私たちの知覚・認知する世界を保持しているのです。
NLPニューロ・ロジカル・レベル(神経論理レベル)の効果的な利用法

「その点に関するドン・ファンの説明はこうだった。われわれはみずからに語りかけることによって、世界にたいする自分の知覚を強化し、それをある一定レベルの効率と機能に保っておけるのである。『全人類が、内的対話によって確固たるレベルの機能と効率を保っているのだよ』いつだったか彼が私にいったことがある。『内的対話は、集合点を全人類が共有する一点へ固定しておくための鍵なのだ。その一点とは、肩甲骨の広さの、腕をいっぱいに背後へ伸ばしたところにある。内的対話とは正反対のもの、すなわち″内的沈黙″を達成することによって、実践者は集合点の固定した状態を打破することができ、知覚の驚くべき流動性を獲得することができるのだ」カスタネダ『呪術の実践』(結城山和夫訳、二見書房)

ここでは、「集合点」という知覚を編集するエネルギー・ポイントが言及されていますが、この興味深い内容については、別の機会に譲りましょう。
この集合点云々の説明を抜きにしても(また暗喩としてとらえたとしても)、ここで語られている事態の意味合いや妥当性は理解されるかと思われます。
私たちが、内的対話を続けることで、世界体験を反復的に自己産出しつづけていることは明らかなことと思われるのです。

私たちの内面を冷静に振り返ってみても、自分がいつもいつも自分の中でおしゃべりをし続けている(止められない)ことに気づかれるかと思います。
私たちは、このようなおしゃべりを止められないのです。
このような、おしゃべり自体が、その偏向的な性格によって、自動的に反復されている「疑似体験の迷路」ともいえるものなのです。

当スペースのような変性意識状態(ASC)を軸とした視点からいうと、特に現代社会では、私たちは、通常価値観の
「日常意識」の「疑似体験の迷路」の中に閉じ込められています。
現代社会では、それだけが「現実」であると、洗脳的に教え込まれているからです。

たとえば、変性意識状態(ASC)を利用して、「日常意識」を相対化することで、これらの内的対話を止めることもできるのです。
そのことで、私たちはそのようなフィルタリングに妨げられることなく、「より直接的な世界」というものを体験していくことができることにもなるのです。
その世界とは、おしゃべりに曇らされることなく、生き生きと陽光にみちたエネルギーのまばゆく流動する世界、より色鮮やかな世界であるのです。

 

※気づきや統合、変性意識状態(ASC)へのより総合的な方法論は拙著↓
入門ガイド
『気づきと変性意識の技法:流れる虹のマインドフルネス』
および、
『砂絵Ⅰ 現代的エクスタシィの技法 心理学的手法による意識変容』
をご覧下さい。


気づきの3つの領域 エクササイズ

◆気づき awarenessとは

 

ゲシュタルト療法では、

〈気づき〉 awareness

の持つ機能(力)を、

とても重視しています。

 

この点が、

ゲシュタルト療法を、

単なる心理療法を超えて、

禅や各種の瞑想流派に

近づける要素でもあります。

 

これは、

〈気づき〉という機能が、

通常の注意力や意識に対して、

メタ(上位)的な働きを含め持ち、

それらを統合していく力を、

持っているからです。

 

「『気づく』ことは、

クライエントに自分は感じることができるのだ、

動くことができるのだ、

考えることができるのだということを

自覚させることになる。

『気づく』ということは、

知的で意識的なことではない。

言葉や記憶による『~であった』という状態から、

まさに今しつつある経験へのシフトである。

『気づく』ことは意識に何かを投じてくれる。」
(パールズ『ゲシュタルト療法』倉戸ヨシヤ訳、ナカニシヤ出版)

 

気づきの力は、

自分が意識している体験自体に、

気づくことができるのです。

 

ゲシュタルト療法では、

この気づく能力を高めることで、

統合的なプロセスを進め、

治癒過程を深めていくのです。

 

「『気づき』は常に、現在に起こるものであり、

行動への可能性をひらくものである。

決まりきったことや習慣は学習された機能であり、

それを変えるには

常に新しい気づきが与えられることが必要である。

何かを変えるには別の方法や考え、

ふるまいの可能性がなければ変えようということすら考えられない。

『気づき』がなければ新しい選択の可能性すら思い付かない。

『気づき』と『コンタクト』と『現在』は、

一つのことの違った側面であり、

自己を現実視するプロセスの違った側面である。」
(パールズ『ゲシュタルト療法』倉戸ヨシヤ訳、ナカニシヤ出版)

 

パールズは、

「自覚の連続体 awareness continuum」

とも呼びましたが、

意図的な気づきの力は、

それだけでも、

心の治癒を促進する、

大きな効力を持つものです。


 

気づきの3つの領域

 

さて、

ゲシュタルト療法では、

気づきがとらえる3つの領域を、

区分しています。

 

通常、人は、

無自覚(無意識)のうちに

注意力を、

これらの各領域に、

さまよわせています。

 

ゲシュタルト療法では、

自分の注意力が、

どの領域にあるのかに、

瞬間瞬間、

気づくことによって、

また、

各領域にバランスよく注意を向け、

気づけるようになることを通して、

統合のプロセスを、

促進していきます。

 

3つの領域とは、

上に図にしたように、

外部領域、内部領域、中間領域と呼ばれます。

それぞれは、以下を意味しています。

 

外部領域

 →目の前や周りの環境、外部に実在している物質世界、

  自分の皮膚の外の世界を、直接知覚する五感の領域です。

 

内部領域

 →自分の皮膚の内側の領域です。

心臓の鼓動、動悸、胃の痛み、血流、体温、興奮等々、

内的な感覚です。情動が働く領域でもあります。

 

中間領域

 →思考と空想の領域です。

  外部でも内部でもない世界です。

諸々の想念(心配、不安、希望、意欲、妄想)の

るつぼです。

 

ゲシュタルト療法では、

「ゲシュタルトの形成と破壊のサイクル」で見たように、

環境に生きる生き物として、

内部への「引きこもり」から、

外部への「接触(コンタクト)」までの、

欲求行動を、

速やかに、とらわれなく、

自由に実行できることを、

健全な能力と見ます。

 

しかし、人は、

さまざまな要因(トラウマや癖)により、

偏った領域に、

「注意力」を、

集めがちです。

 

たとえば、外部領域の経験で、

傷つきやトラウマの体験を持った人が、

中間領域(空想や思考の領域)に、

引きこもりがちになってしまうというのは、

常識的な感覚からいっても、

納得されることでしょう。

 

そして、

自分が、無自覚に、

どの領域に、

「意識」や「注意力」を、

向けているかに、

〈気づき〉を持てるだけでも、

その偏差に対する、

統合(修正)効果となるのです。

 

 

気づきのエクササイズ Exercise

 

さて、そのため、

ゲシュタルト療法では、

以下のような、

「気づきのエクササイズ」を、

行なっていきます。

 

このことを通して、

自分の「意識」や「注意力」の、

偏りの持ち方に

気づいていくのです。

 

ABの二人が、

一組になって行なう、

エクササイズです。

 

1人が、

相手の人に、

問いかけを続けます。

(数分間つづけます)

問いかける側が、

応える人の答えを、

メモしていきます。 

 

A: 「あなたは、今、何に、気づいていますか?

B: 「私は、今、○○に気づいています」

 

Bの答えの例としては、

 

「私は今、

 あなたの声のかすれに、気づいています」 

 →外部領域

私は今、

 首の痛みに気づいています」 

 →内部領域

私は今、

 明日の会社の仕事を考えているのに気づいています」 

 →中間領域

等々がありえます。

 

これを、

数分続けます。

 

エクササイズ終了後、

振り返りの中で、

それらの回答(気づき)が、

3つの中の、

どの領域に、分布しているかを、

お互いに見ていきます。

 

人によって、

ある領域が、多かったり、

ある種の傾向性があったりと、

自分の癖やパターンが、見えてきます。

 

ゲシュタルト療法では、

このパターンの偏りが、

心の可動域をせばめたり、

充分な体験を阻害したりと、

能力の制限にもなっていると考えます。

 

この部分を、

ゲシュタルト療法では、

ワーク(セッション)などを通して、

心の可動域が広がるようにします。

 

この能力は、

頭(中間領域)で理解しただけでは、

なんの解決にもなりません。

 

日々の気づきと、

ゲシュタルト療法的な実践の中で、

3つの領域に、

自在に〈気づき〉をめぐらせる訓練の中で、

開放されていくものなのです。

 

現代人の場合、特に、

「中間領域」(空想領域/心配/妄想)への耽溺が、

大きな特徴として上げられます。

思考過多(中毒)なのです。

 

ゲシュタルト療法のアプローチは、

この現代人の中間領域志向についても、

強い解毒作用を発揮します。

この点などが、などとの共通点ともなっているのです。

 

ゲシュタルト療法普及の初期に、

その実存主義と禅の風味を強調した時代に、

クラウディオ・ナランホが示した、

ゲシュタルト療法の基本姿勢は、

このあたりの感覚を、よく表現しています。

ゲシュタルト療法の基本姿勢


関連記事

→気づきawarenessと自己想起self-remembering


 


※気づきや統合、変性意識状態(ASC)への

より総合的な方法論については、拙著↓
入門ガイド
および、
『砂絵Ⅰ 現代的エクスタシィの技法 心理学的手法による意識変容』
をご覧下さい。




 

ゲシュタルト療法とは はじめに


ゲシュタルト療法 gestalt therapy は、元精神分析家のフリッツ・パールズ Fritz Perls らによって創始された心理療法の一流派です。主に1960年代後半、パールズが晩年をすごした米国西海岸のエサレン研究所を中心に世間一般には広まりました。
1960年代の当時、(晩年のカール・ロジャーズが熱中した)グループ・セラピーであるエンカウンター・グループ encounter group などとともに「自己成長・自己発見のための新しい心理療法」として、ゲシュタルト療法は注目を集めたのでした。
ゲシュタルト療法そのものは、すでに1950年代に東海岸で旗揚げされていましたが、単なる風変わりな心理療法として、理解も注目もされていませんでした。それが時代とシンクロ(共振)する形で、1960年代に突然、エサレン研究所で注目をあびたのでした。

ところで、エサレン研究所は、ワークショップ・センターのようなものであり、特に医療機関でもアカデミックな機関でもありません。というのも当時は、治療のために心理療法を受けるのではなく、自分の心の解放・能力の開発・自己成長、また潜在能力の可能性を探るために、多くの人々が新しいタイプの心理療法(体験的心理療法)を試してみたのでした。そのような状況だからこそ、大胆な新しい実験がさまざまに行なえたという側面もあります。
また、日本では一般的ではありませんが、心理療法(心理学)のテクニックを、能力開発や心のさらなる解放に使うというのは、現在でもアメリカや先進国などではごく一般的な現象(使用法)であり、そ
のような環境の中でさまざまな心理療法が流行してきたのでした。必ずしも治療のために、心理療法を受けるということではないのです。ゲシュタルト療法の影響を受けたNLP(神経言語プログラミング)などもそのような状況の中で誕生したものでした。
一方、日本では、心の自由や健康、自己実現のための心理療法の利用という面が、とても遅れている現状があり、とても残念(悲惨?)な結果となっています。これは大変もったいない状況といえます。適切な心理療法メソッドの利用で、人生は簡単に飛躍的に変容させることができるからです。

「私は、以前より、開かれ自発的になりました。 自分自身をいっそう自由に表明します。 私は、より同情的、共感的で、忍耐強くなったようです。 自信が強くなりました。 私独自の方向で、宗教的になったと言えます。 私は、家族・友人・同僚と、より誠実な関係になり、 好き嫌いや真実の気持ちを、 よりあからさまに表明します。 自分の無知を認めやすくなりました。 私は以前よりずっと快活です。 また、他人を援助したいと強く思います」(ロジャーズ『エンカウンター・グループ』畠瀬稔他訳、創元社)

これは、エンカウンター・グループというグループ・セラピー体験者の言葉ですが、このような心のしなやかさや感度の獲得は、体験的心理療法のセッションを深めて、心理的な統合を達成した場合のおおよその共通した要素といえます。ゲシュタルト療法においても、同様の心理的統合が達成されていきます。

◆ゲシュタルト療法の特徴―構成要素

ゲシュタルト療法は、元精神分析家のフリッツ・パールズらによって創られました。そのため、パールズが影響受けた要素を理解することで、ゲシュタルト療法の特徴を理解することができます。

フロイトの精神分析 (深層心理学) →「無意識」「潜在意識」の存在の重視
  ライヒの精神分析 (筋肉の鎧) →心身一元論的(ボディワーク的)なアプローチへの理解
ゲシュタルト心理学 (知覚の統合機能/全体論的見方) →「体験の統合性・全体性(ホリスティック)」の重視
③その他の「姿勢」など
 ハイデガーの実存主義 (実存〔世界内存在〕的な人間のあり様) →責任 responsibility の重視=反応する能力 response-ability の重視

  (存在と世界をありのままに体験する) →気づき awareness の機能の重視

精神分析への批判が、パールズがゲシュタルト療法を創った大きな原動力のひとつですが、その前提として精神分析からの影響があります。精神分析の重要な知見は、人間が「無意識の衝動」に突き動かされている存在であるというです。当然、ゲシュタルト療法にもその視点が前提としてあります。
次に、パールズの教育分析家であったヴィルヘルム・ライヒの精神分析の影響があります。それは、「心身一元論的」なものの見方です。ライヒは、クライアントの「肉体」に心の症状が現れていることを最初に見抜いた天才でした。彼の洞察から、後のさまざまなボディワーク・セラピーが生まれることになりました。この心身一元論的な視点が、ゲシュタルト療法にもあります。心とからだは一つであり、同じテーマが心にもからだにも同様に現れるという視点です。ここからゲシュタルト療法の興味深い介入技法がさまざまに生まれました。

ゲシュタルト心理学は、その名称にもとられた「ゲシュタルト」の概念の元になった認知心理学です。ゲシュタルト心理学が唱える、人間の認知構造(統合的・全体論的視点)は、ゲシュタルト療法の中核的な要素となっています。

実存主義やも、ゲシュタルト療法の「姿勢」に強い影響を持ちました。パールズ自身は、芸術家志望の側面があり(晩年の自伝によく現れていますが)、若い頃に交流したボヘミアンたちの風情や考え方にとても強い影響を受けています。この側面が、ゲシュタルト療法が多くの生真面目で退屈な心理療法との違い生み出す大きな要素ともなっています。
ちまたで有名になった「ゲシュタルトの祈り」などは、ゲシュタルト流の実存主義の表明といえるものです。
また、パールズは、世界旅行の中で京都に寄って参禅体験もしています。自伝で回顧していますが、その体験は、彼がセラピーの探求上えられた結論の確証としての体験であったようです。禅そのものへの評価は若干批判的なもの(疑念をもったもの)でもあります。
また、このような姿勢は、直弟子のクラウディオ・ナランホ claudio naranjo が書いた「(ゲシュタルト療法の)基本姿勢」などにもその影響を強くとどめています。

このような構成要素が、ゲシュタルト療法の特徴となり、他にないユニークで実践的な心理療法となったのでした。
結果として、すばやく効果を出す劇的な方法論となったのでした。

◆気づき awareness の力 マインドフルネスの効力

ところで、ゲシュタルト療法では、感じることや表現することと同時に、「気づき awarenessの能力」というものをとても重視します。そこに、心理的な変化を生み出す飛躍的な力を見ているからです。

「気づき」とは日常的な言葉であるため、この言葉が意味している本当の意味が分かりづらくなっていますが、日本でも最近「マインドフルネス」という言葉のひろまりとともに、この気づき awareness の能力の本当の意味や重要性が少しずつ知られるようになってきました。

パールズは語っています。

「『気づく』ことは、クライエントに自分は感じることができるのだ、動くことができるのだ、考えることができるのだということを自覚させることになる。『気づく』ということは、知的で意識的なことではない。言葉や記憶による『~であった』という状態から、まさに今しつつある経験へのシフトである。『気づく』ことは意識に何かを投じてくれる」「『気づき』は常に、現在に起こるものであり、行動への可能性をひらくものである。決まりきったことや習慣は学習された機能であり、それを変えるには常に新しい気づきが与えられることが必要である。何かを変えるには別の方法や考え、ふるまいの可能性がなければ変えようということすら考えられない。『気づき』がなければ新しい選択の可能性すら思い付かない」(パールズ『ゲシュタルト療法』倉戸ヨシヤ訳、ナカニシヤ出版)

「今ここの気づき」のなかに、変化の因子が潜んでいるのです。もし、心の何かが変化するとしたら、 それは 「今ここの気づき」 を通して起こってくるのです。セッションの中では、このような「今ここでの気づき」を利用して、さまざまな取り組みを行なっていきます。

クライアントの方は、セッションの中では、その瞬間の気づきで得たことをもとに、実際に新しい自己表現を試してみたりします。そして、そのことで「自分が新しい行動をとれること」「自分が新しい感情を味わい、表現できること」をまざまざと実感していくことになるのです。

子どもの頃のように、自分が制限されていない、可能性に満ちた存在であることを実感していくことになるのです。そして、そのようなセッションを重ねることで、クライアントの方の中に、確実な変化や力が蓄積されていくことになるです。

◆ゲシュタルト療法の可能性 心理療法を超えて

さて、ゲシュタルト療法が広まった当時は、カウンター・カルチャー(対抗文化)的な思潮の盛んな時代でありました。のちにアップルをつくる若きスティーブ・ジョブズが、サンフランシスコ禅センターなどに熱心に通ったような時代です。

そのような時代の雰囲気の中で、ゲシュタルト療法のもっている禅的で風変わりで直截的なスタイルが、そのめざましい治癒効果とあいまって注目を浴びたのでした。
しかし、時代の流行も去って、ゲシュタルト療法もさまざまな効果検証を経ながら、時代とともにそのスタイルやアプローチ方法をより洗練させてきました。時代によっても、個人の療法家によっても、ゲシュタルト療法のスタイルやアプローチは多様です。人によってのスタイルの違いにより「とても同じゲシュタルト療法とは思えない」と言われることもあります。

ただ、ゲシュタルト療法自体の持っているエッセンスは、今も変わらずに、その可能性と有効性を秘めているといえるのです。パールズ自身は、かつて自分のことを「ゲシュタルト療法の創始者ではなく、再発見者にすぎない」と言いました。
そのココロは、ゲシュタルト療法の「原理」自体は、近代的な心理学などよりもずっと普遍的なものであり、人類の歴史文化の中で、いたるところに存在していた(している)普遍的な気づきと表現の技法であるという意味合いなのです。

たとえば、ユング心理学の流れを汲むプロセスワーク(プロセス指向心理学)の創始者アーノルド・ミンデルは指摘します。

「現代のゲシュタルト療法の創始者であるフリッツ・パールズは、先住文化のシャーマンがいれば間違いなく仲間として歓迎されたであろう。パールズは、自己への気づきを促すために、夢人物(ドリーム・フィギュア)や身体経験との同一化ならびに脱同一化法を用いた。そして、モレノの「サイコドラマ」から、夢見手が自分や他者を登場人物にすることによって夢の内容を実演化する方法を借用している」
(ミンデル『ドリームボディ』藤見幸雄監訳、誠信書房)

当スペースでは、そのような普遍性と特徴をもつゲシュタルト療法を使って、自己実現や能力開発、意欲・自信の回復や自己肯定感の向上、人間関係の改善や心の癒しなどさまざまな心理的サポートを行なっています。

特に、ゲシュタルト療法は上記の引用のように、それが元来含み持っている普遍的な特性(シャーマニズム的な特性)によって、心理療法にとどまるものではない人間意識の拡張や創造力の開発に他にない劇的で目覚ましい効果を生み出すものでもあります。そのため、その領域でご提供できるものも多岐に渡っているのです。

↓【ゲシュタルト療法の各項目解説】

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