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体験的心理療法とは

動画解説「苦痛な気分」とその解決法


ここでは、私たちが普段体験している「苦痛な気分」とその解決法について解説しています。


 

「苦痛な気分」―その構造と解決法


ここでは、私たちが体験する「苦痛な気分」とその解決法について解説していきたいと思います。
心の苦しみは、正しい理解と正しいアプローチを使えば、必ず解決します。

ここで、苦痛な気分と呼んでいるのは、「不安」「抑うつ感」「憂鬱感」「罪悪感」「自責感」「自信がない」「自己肯定感が低い」「生きづらさがある」などさまざまな気分を指しています。私たちは、人生のさまざまな場面でそれら体験しています。

ところで、私たちがこのような「苦痛な気分」に襲われた時、どうするでしょうか?
通常は、
「気を紛らわす」
のではないでしょうか?

何か別の良いことやポジティブなことを考えて、そのネガティブな気分を振り払おうとします。追い払おうとします。
自分にパワーと肯定感を与えて、明るい気分にするように、元気を出すように仕向けるわけです。
プラス思考でなんとか気持ちを切り替えて、乗り切ろうとします。やりきろうとします。
それで一瞬、気分が良くなることもあります。
しかし、それは正直、しんどい気持ちを残します。
ドーンと落ちる気分を、無理やりパワーで上げる感じとなり、葛藤を感じるからです。
「意識の前面」はいっとき明るくなるのですが、やはり心の底や背後のところには、どんよりした気分を残した形となるのです。

さて、生活や仕事に支障ないレベルの「苦痛な気分」でしたら、上に書いたようにプラス思考で乗り越えて、さして気にする必要もありませんが、この苦痛の大きさが、支生活や仕事に支障をきたすまでに大きいようでしたら、これはきちんと対処して、取り除いた方がよいということになります。

そんな時は、心の構造をきちんと理解して、自分の心に働きかけるのが最適なアプローチとなります。

では、心の構造とは、どのようになっているのでしょうか?
上の図をご覧ください。
私たちの心(意識)が、「顕在意識」「潜在意識」に分かれているというような話を、どこかで聞いたことがあると思います。
精神分析を創ったフロイト以降の深層心理学では、私たちの心を「意識」と「無意識」、「顕在意識」と「潜在意識」に分けて考えるものです。

「顕在意識」とは、一般的な言いまわしで、私たちが「意識」という言葉で呼んでいる心理領域のことです。
この思考と知覚の「自意識の領域」です。「〇〇を意識している」「〇〇を意識しながら行なう」と言う場合、私たちはこの顕在意識のことを指しています。

「潜在意識」とは、私たちが、通常の意識では「意識していない(できない)領域」ですが、心の領域としては実在している「意識下の意識」のことです。「無意識」とも呼ばれます。私たちが「無意識のうちに〇〇をしていた」という時、この無意識(潜在意識)を指しています。

そして、深層心理学がよくよく指摘することは、私たちの心の中では、「潜在意識」の方が大きいし、力も強いということです。
私たちは、自分でも「意識できない」無意識の衝動に突き動かされて日々を生きているということです。

そして、ここで重要なことは、さまざまな苦痛な気分とは、この潜在意識の原因からやって来るということなのです。
私たちの「心の苦痛」「苦痛な気分」は、潜在意識によって生み出されているのです。
しかし、その原因が「無意識」の中にあるため、私たちはその原因に気づくことができないという仕組みになっているのです。
結果としての「嫌な気分」だけを体験しているという事態なのです。

上の図にもありますが、潜在意識の中にある複数の欲求(感情)葛藤により、苦痛な気分は生み出されているのです。
例えば、上の図では、私は欲求Aをもって何か(A)を行なおうとしているのですが、潜在意識の中にある他の欲求(感情)がそれを妨害する様子が描かれています。
「未完了の体験」とはゲシュタルト療法の用語ですが、私たちが過去に体験したトラウマにも似たこだわり(とらわれ)の感情を指しています。このこだわり(とらわれ)があると、或る物事を行なおうとした時に、行動や欲求(感情)に苦痛やブレーキが発生します。
また、違う例を挙げると、私は欲求Aをもって何か(A)を行なおうとしているのですが、潜在意識の中に欲求Aに反対する欲求Bがあって、欲求Aを行なおうとすると、欲求Bが作動してきて、私たちは苦痛を感じてそれを行なうことができないのです。そのような際も、私たちは、顕在意識で「苦痛な気分」を体験するだけで、潜在意識にどんな「欲求A」と「欲求B」の葛藤があるかは、よくわかっていないのです。

しかし、このような「心の構造」など、人生の中で、私たちは誰かから教わったことがあるでしょうか?
親や学校から教わったでしょうか?
普通は教わることはありません。(厳密にいうと、高校の時、保健体育の授業で或る理論として少しだけ触れられます)

私たちは、自分の心とは、「この私」「この意識」という主観的な印象、自意識の主体的感覚で生きているのです。
そして、実はむしろ、そのような設定にしたいのです。その虚構を信じたいのです。
ここには、現代社会のある種の文化的抑圧(近代主義の幻想)もあります。

「自意識の世界」だけを、私たちの心、「この世界を生きている自分」としたいのです。

というのも、一方で、世間には、
「心にフタをする」
「心の中を見ないようにする」
というような言い回しがあるように、私たちは心の底の部分では、直観的・野生的に、この潜在意識の存在やその底に黒く溜まっているもののことをよく知っているからです。

しかし、基本的には、心の中は見たくないのです。
そのため、ドヨーンした「苦痛な気分」が出ても、それを「この意識」から取り除くというアイディアしか持たないのです。
暗い気分を振り払おうとするだけなのです。

しかし、「潜在意識」に原因があるため、それはうまくいかないのです。

さて、次の段階は、「潜在意識」の中を見ようとする段階です。
「苦痛な気分」を顕在意識から追い払うだけでは解決にいたらないとわかった私たちは、次に「心の構造」を理解しようとします。
書物を読んで、情報を集め、自分の潜在意識の中に何があって「苦痛な気分」を生み出しているのか理解しようとします。
「なるほど、なるほど…」と理解していきます。
そのうち、読んだ本の量や集めた情報は、膨大なものになるかもしれません。
しかし、「苦痛な気分」はなくならないし、軽くなった感じもあまりないのです。
むしろ、本を読んだことで余計に気分の悪さが増えたりもします。

というのも、「考える」とか「思考する」という機能自体が、潜在意識の欲求(感情)の葛藤を解消するのに役に立たないものだからなのです。

「考える」や「思考する」の機能は、そもそも無意識(潜在意識)の欲求(感情)を抑圧したりするために成長したものなのです。
そのことによって、私たちは、顕在意識を達成したのです。
そのため、その顕在意識の「考える」や「思考する」もって、潜在意識に介入しようという事態自体が、とても逆説的な事態といえるのです。
土台、無理な話なのです。
だから、つい最近まで(フロイトの登場まで)、人類は「無意識」や「潜在意識」を発見することも、きちんと向き合うこともなかったのです。
これは、人類史的な逆説的事態でもあるのです。

では、どうすればよいのでしょうか?
そのまま「潜在意識」の空間に入っていくことです。

その上で、さまざまな自我状態の欲求(感情)に「感じる/体験する」ことを通して、同一化していきます。
さまざまな自我状態の欲求(感情)そのものに「なる」のです。さまざまな葛藤状態そのものを体験していくのです。
そうすると、そこにはらまれた感情エネルギーが解放されていくことになるのです。
もつれた欲求(感情)がほぐれていくことになるのです。
(この背後の次元では、基底的な微細な気づき awareness による意図/情報の交流も起こっています)
そのように、さまざまな自我状態の欲求(感情)そのものになることで、そのエネルギーが解放され、その葛藤と苦痛が解消されていくことになるのです。

各自我(欲求)状態に同一化するのに重要なことは、「考える」ことではなく「感じる」ことです。
「考える」ことは抑圧と解離を起し、欲求(感情)のエネルギーを発散しなくなるからです。私たち現代人が普段からやっている抑圧的な振る舞いです。
ゲシュタルト療法フリッツ・パールズ「思考を離れ、感覚になれ」といったのはそのような意味からなのです。

「潜在意識」の空間には、通常の顕在意識のままでは入っていくことはできません。

そのため、「特別な空間」をつくる必要があるのです。
心理療法(ゲシュタルト療法)のセッション空間とは、そのために設けられるのです。

このようにして、潜在意識の中の欲求(感情)が解放され、葛藤が解消し、統合が生まれると、顕在意識にある「苦痛な気分」もなくなることになるのです。


さて、このような潜在意識の統合が行なえると、気分も「肯定的な気分」に変わります。

「潜在意識」の方が原因で、「顕在意識」の方は結果でしかないからです。
「顕在意識」には、肯定的で積極的、さまざまな自信に溢れた能動的な気分が満ちてくるということになるのです。

ですので、「苦痛な気分」が大きくある時には、「潜在意識」にダイナミックな葛藤状態があると気づき、それらの原因に手を打っていくことを考えるべきなのです。
そして、潜在意識の欲求(感情)を解放し、葛藤をほどくことが、「苦痛な気分」をなくすのに必要なことなのです。

【ブックガイド】
ゲシュタルト療法については、基礎から実践までをまとめたこちら↓
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気づきや、変性意識状態(ASC)を含むより総合的な方法論については、拙著
入門ガイド
『気づきと変性意識の技法:流れる虹のマインドフルネス』
および、よりディープな
『砂絵Ⅰ 現代的エクスタシィの技法 心理学的手法による意識変容』
をご覧下さい。


動画解説「変性意識状態(ASC)と身体感覚の拡張」


この動画では、
心身一元論的アプローチによる、
変性意識状態(ASC)の作りやすさや、
身体感覚の拡張や変容について、
解説しています。


【PART1 Basic】ゲシュタルト療法
ゲシュタルト療法【基礎編】
ゲシュタルト療法【実践・技法編】
ゲシュタルト療法【応用編】
「セッション(ワーク)の実際」

【PART2 Standard】
気づきと変性意識の技法 基礎編
変性意識状態(ASC)とは
「英雄の旅」とは
体験的心理療法
NLP 普及・効果・課題
禅と日本的霊性
野生と自然

【PART3 Advanced】
気づきと変性意識の技法 応用編
変性意識状態(ASC)の活用
願望と創造性の技法
その他のエッセイ

【PART4 当スペース関係】
フリー・ゲシュタルトについて
セッションで得られる効果
なぜ、ゲシュタルトなのか
メニュー/料金
著作紹介
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彼方まで聴くということ 傾聴の技法


今回は、
「聴く」とか「傾聴する」ということについて、
少し触れてみたいと思います。

というのも、
私たちは、
相手の話を「本当に聴く」ことができれば、
それだけで、相手の人に、
大きな変容のきっかけを持ってもらうことが、
できるからなのです。

ここに一冊の本があります。

『傾聴のコツ』金田諦應著(三笠文庫)、
です。

著者は、曹洞宗の住職であり、
東日本大震災後に、
移動式カフェ「カフェ・デ・モンク」をボランティアで運営し、
被災地で、二万人以上の人々の話を、
聞いてきました。

そのきっかけとなった
震災直後の過酷な体験を、
著者は次のように語っています。

「私たち宗教者は、被災地を歩き、
目の前に広がるがれきの山から立ちのぼってくる
ヘドロと遺体の臭いを嗅ぎながら、
お経をあげました。
声が震えてお経が読めなくなりました。」

「海岸を目指して歩きはじめて二時間後、
南三陸町戸倉の海岸に立ったとき、
私は、宗教者としてのフレーム(枠組み)が
壊れてしまったと感じました。
いままで学んできた教義や、
宗教的な美しい言語はどこかに行ってしまいました。」

このような体験の中から、
被災地の人々の話を虚心で聴いていこうという
著者の活動は始まったようです。

そこにおいて聴くことは、
もはや深く実存的な行為となります。

Doingではなく、
Beingが問われているからです。

自分のBeingをもって、
相手のBeingを聴きとることができた時、
相手の人のBeingの中で、
何か変容が起きるからです。

そして、それは、
ただ深く聴くことを通して、
起こっていくことであるからです。

この本は、
そのような
「存在自身を聴きとること」
にまつわる、さまざまなヒントを、
与えてくれるものとなっているのです。

そして、
私たちに、
彼方まで聴くことによる、
限りない可能性を、
示唆してくれてもいるのです。



【PART1 Basic】ゲシュタルト療法
ゲシュタルト療法【基礎編】
ゲシュタルト療法【実践・技法編】
ゲシュタルト療法【応用編】
「セッション(ワーク)の実際」

【PART2 Standard】
気づきと変性意識の技法 基礎編
変性意識状態(ASC)とは
「英雄の旅」とは
体験的心理療法
NLP 普及・効果・課題
禅と日本的霊性
野生と自然

【PART3 Advanced】
気づきと変性意識の技法 上級編
変性意識状態(ASC)の活用
願望と創造性の技法
その他のエッセイ

【PART4 当スペース関係】
フリー・ゲシュタルトについて
セッションで得られる効果
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映画『マトリックス』のメタファー(暗喩) 残像としての世界

昔、『マトリックス』という三部作の映画がありました。ユニークな世界観や映像表現でヒット作となった映画です。

その世界観についても問題をはらみ、多様な解釈や議論がなされましたが、ここでは、少し違う切り口で考えてみたいと思います。

ところで、この映画が示している感覚表現(表象)の世界は、変性意識状態(ASC)シャーマニズムまたサイケデリック的な状態(世界)考える者にとっては、大変興味深いメタファー(暗喩)となっているのです。

実は、映画で描かれているマトリックスの創りだす世界と、私たちの生きているこの現実世界とは、さほど事情が違っているわけではないからです(むしろ、鏡写しの世界です)。

ところで、拙著『砂絵Ⅰ』の中では、この日常的現実とは何かを考えてみたところで、「合意的現実」という考え方について取り上げてみました。
→内容紹介『砂絵Ⅰ: 現代的エクスタシィの技法 心理学的手法による意識変容』

私たちのこの現実世界も、皆の合意した集合的な信念体系(ビリーフ・システム)として存在しているという考え方です。

ところで、このような合意的現実のあり方は、単に思考や認識、認知の拘束として、私たちの世界を映し出しているだけではありません。

実際には、「知覚的な拘束力」をともなって、「この世界」を映し出してもいるのです。
そのため、私たちはなかなかこの合意的現実を相対化することが
できないのです

ところで、ゲシュタルト療法体験的心理療法を解説する中で、その前提となっている「心身一元論的」な人間のあり様を見ました。硬化した心と硬化した身体とは、相互的なフィードバックを繰り返して、生活史の中で硬化した抑圧的な世界を創りだしてしまうのです。
心身一元論的・ボディワーク的アプローチ

その多くの由来は、現代社会(やその出先機関である親、教師)の「信念体系」です。
そして、私たちは物心がつく前から、そのシステムによって、感情や肉体や知覚を狭められ、拘束された状態で社会に出されて(再生産されて)いくのです。

実際のところ、社会の私たちの知覚・感覚への洗脳は、映画におけるマトリックス(母体)による支配と、実は大差がないものなのです。
ところで、映画でもそうですが、この拘束された知覚世界の外に出るには、強度の変性意識状態(ASC)を誘発する「赤いピル」のようなものが必要(有効)です。

アップルのスティーブ・ジョブズは、自伝の中で自身のLSD体験人生の最重要事に挙げています。一方、実際問題、比喩的にいえば、多くの人は日々の中で、赤いピルを得るチャンスに出遭っても、青いピルを選んで眠りつづける人生を選んでいるのです。それほど洗脳が強いわけです。

ところで、赤いピルのような物質によらずとも、強度の変性意識状態(ASC)を誘発し、この拘束的な知覚世界を超脱していく手法は多様にあります。

体験的心理療法などもそのひとつです。LSDセラピーの権威スタニスラフ・グロフ博士が、LSDセラピーからブリージング(呼吸法)・セラピーに移行したようにです。

実際、ゲシュタルト療法をはじめ、体験的心理療法の多くの手法が、強烈な変性意識(ASC)を創りだし、内側から心身を解放し、私たちの硬化した信念体系や知覚のコードを溶解する効果を持っています。

ゲシュタルト療法などの体験的心理療法的な探求を、実直かつ真摯に進めていくと、心身が深いレベルで解放され、エネルギーが流動化されていきます。身体の感受性が深いレベルで変わっていくことになります。知覚力が鋭敏になっていくのです。

変性意識(ASC)への移行や、日々の気づきの力も、ずっと流動性を高めたものになっていくのです。そして、私たちは、旧来の硬化した世界を、まったく別様に見ていることに気づくこととなるのです。

硬化した見慣れた世界は、単なる世間の信念体系、後付け的に既存の意味を再構成した「残像としての世界」にすぎず、よりリアルな世界とは、刻々にまばゆい息吹が流動するエネルギーの世界であると感覚できるようになるのです。

それは、あたかも映画の中で、主人公ネオが腕を上げていくのにつれて、マトリックスのつくり出す幻想世界よりも「より速く」知覚し、動けるようになっていくのと同じことなのです。

これらの体験についての映像表現は、流動化し、透視力化していく知覚力の変容をうまく表現しています。

シリーズ一作目の終盤で、あたりの風景やエージェントを「流動するデータ」として透視し、エージェントに立ち向かいはじめるネオの姿が描かれています。

映画のストーリーとしては、自分の力の可能性を感じはじめるネオという、覚醒的でエキサイティングなシーンでもあるのですが、実際には、たとえ特別な救世主でなくとも、私たちの誰もがこの洗脳的な表象世界を透視し、それよりも「速く動き」その支配を脱する力を持っているのです。
「信念体系」の牢獄を超えて、新しく拡張した透視的な「身体性」として、空間の中をエネルギー的にひろがりはじめるのです。

私たちに必要なのは単に信じることではなく、心身と意識を実際に解放していくこと、そして、その中で新たな知覚力を訓練・開発し、エネルギーを解放していくことなのです。

そして、それは実際できることなのです。

 

※気づきや心理統合、変性意識状態(ASC)へのより総合的な方法論は拙著↓
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心身一元論的なアプローチⅡ

「心身一元論的・ボディワーク的アプローチ」より

 


②ゲシュタルト療法における心身一元論的開放

 

さて、ゲシュタルト療法の、

心身一元的論的なアプローチでは、

身体チャンネルを通して、

クライアントの意識しない多様な自我が、

表れてくることを見ました。

 

そして、

ボディ・シグナルを糸口に、

その多様な自我と、

コンタクトすること(技法)についてを見ました。

 

さて、そして、

ここからが重要なのですが、

ゲシュタルト療法においては、

その糸口から、多様な自我の、

深く十全な自己表現、

深い十全な感情表現というものを、

探っていきます。

 

意図せずに、

身体チャンネルに現れる自我とは、

未完のゲシュタルトとして、

やり残した仕事として、

抑圧されていた「自我」だからです。

そして、

その自我に、

十分な表現と存在の場を与えてあげることが、

必要だからです。

 

そして、その感情表現の際に、

この心身一元的な視点が、

とても重要になります。

 

ライヒが、

筋肉の鎧をもつ、防衛的な身体には、

十分な感情体験がないことに気づいたように、

十分な感情体験とは、

十分な身体的運動(表現)が、

ともなうからです。

 

そのため、

ゲシュタルト療法では、

クライアントの方の感情表現の際の、

身体として表現に注目します。

 

身体的な反応や、

ブロックが表れたりする際は、

さまざまなサポートを行ないます。

そして、十分な表出が、

行なわれるようにするのです。

 

そして、実際、

ゲシュタルト療法においては、

クライアントとして、

そのような、心身一元的な、

全身的な、表現活動を繰り返していると、

表現と感情の流れによって、

段々と、

身体のブロックが解除されてきます。

 

身体が変わっていくのが、

実感されます。

呼吸がなめらかになり、

喉や胸がひらき、

骨盤の詰まりがなくなります。

身体の感受性が高まります。

快楽の感度も高まります。

その結果、

使えるエネルギーが増大して、

エネルギッシュになります。

 

(また、目的ではありませんが、

―目的でもいいですが―

年齢も、若く見られるようになります)

 

このように、

体験的心理療法では、

心身一元論的なアプローチが多いのですが、

ワークの進展に従い、

心理的にも、

肉体的(物理的)にも、

全身的な開放が、進んでいくのです。

進化が、

分かりやすい所以です。

 

動画解説「心身一元論的アプローチⅠ」

動画解説「心身一元論的アプローチⅡ」

 



※気づきや統合、変性意識状態(ASC)への

より総合的な方法論については、拙著↓
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および、
『砂絵Ⅰ 現代的エクスタシィの技法 心理学的手法による意識変容』
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心身一元論的・ボディワーク的アプローチ

①ボディワーク・セラピーの地平

 

ゲシュタルト療法の創始者、

フリッツ・パールズの教育分析を行なった、

ヴィルヘルム・ライヒWilhelm Reichは、

初期の精神分析運動を加速した重要人物です。

(パールズに、ライヒを薦めたのは、

カレン・ホーナイだったと言われています。

「あなたは複雑なタイプなので、

ライヒじゃないと理解できないかもしれない」と)

 

ライヒは、活動の初期から、

物議をかもす、

さまざまな先進的な知見を持っており、

その後も、キワモノ的な扱いや、

一部では、カルト・ヒーロー的な扱いもありますが、

現在においても、その考えのすべてが、

きちんとフォローされているわけではありません。

 

 

まず、ライヒは、

精神疾患において、

目立ったトピックとしての「症状」ではなく、

一見、見過ごされがちな、

「性格」という、

恒常的な運用システムについて、

早くから注目しました。

そこに、病理が、温存される「戦略」(性格戦略)を、

見抜いたのです。

 

近年、「人格障害」が、

精神疾患をはじめ、

社会のさまざまな場面で、

注目を集めるようになりましたが、

(そういう難治の事例が、増えているからですが)

この「人格(性格)」というものの運用を核とした、

システムへの洞察や、働きかけにおいても、

ライヒは、先見の明を持っていました。

「性格の鎧」とは、

彼が有名にした言葉です。

 

さらに、重要なのは、

この「性格の鎧」が、

平行して、

私たちの肉体の中に、

「筋肉の鎧」として、

存在していることに注目したことです。

 

生気のない目。

浅い呼吸。

悪い皮膚の色。

貧弱な手足。

こわばった身体の動作。

等々…

それらが、

防衛的な生活史によって、

つくりあげられた、

(「性格の鎧」とパラレルな)

「筋肉の鎧」だと、

気づいたのです。

 

そして、その肉体のブロック()、

緊張や硬化に、直接働きかけることが、

深い情動の解放を促し、

心理的な面からの解放と、

相乗効果を生み、

より一層、速く深い治癒効果となることを、

発見したのでした。

 

ここから、

ボディワーク・セラピーの、

大きな潮流が育っていくことになったのです。

 

ライヒの直弟子であった、

アレクサンダー・ローエンの、

「バイオエナジェティックス」では、

ライヒが発見した、

身体の特有のブロック箇所に、

直接働きかけるワーク/エクササイズと、

心理的な分析とを組み合わせた、

体系的なシステムを、洗練させました。

 

別章では、

呼吸と感情との関係について触れました。

人は、通常、呼吸を止めることによって、

感情の流れを止めます。

その結果、

筋肉は段々と「硬化」し、ブロックと化します。

そして、

感情の流れは、細くなり、

流れにくくなります。

生命力が、枯渇し、

精神に障害が現れます。

 

身体の特有のブロック箇所は、

背骨にそって流れるエネルギーを、

遮断するように、

背骨に対して、「垂直に」「切る」ように、

できてきます。

目、喉、胸部、骨盤等々にです。

そこに、直接的に働きかけていくのです。

 

 

②ゲシュタルト療法における心身一元論的開放

 

さて、ゲシュタルト療法の、

心身一元的論的なアプローチでは、

身体チャンネルを通して、

クライアントの意識しない多様な自我が、

現れてくることを見ました。

 

そして、

ボディ・シグナルを糸口に、

その多様な自我と、

コンタクトすること(技法)についてを見ました。

 

さて、そして、

ゲシュタルト療法においては、

その糸口から、

多様な欲求や自我状態の、

深く十全な表現、

深い十全な感情表現というものを、

探っていきます。

 

意図せずに、

身体チャンネルに現れる自我とは、

葛藤や未完了のゲシュタルトとして、

抑圧されてがちな、

欲求(自我)だからです。

そのため、

その自我に、

十分な表現と存在の場を与えてあげることが、

必要となります。

 

そして、

その感情表現の際には、

心身一元的な視点が、

特に重要になります。

 

というのも、

ライヒらが、

筋肉の鎧をもつ、防衛的な身体には、

十分な感情体験がないことに気づいたように、

十分な感情体験とは、

十分な身体的運動(表現)が、

ともなうものだからです。

 

そのため、

クライアントの方の感情表現の際に、

身体表現にも注目します。

そこに、十全でしなやか、

自己一致した表現があるのか、

確認します。
 

また、実際、

ゲシュタルト療法においては、

クライアントとして、

そのような、心身一元的な、

全身的な、表現活動を繰り返していると、

表現と感情の流れによって、

段々と、身体の緊張や硬化が解除されてきます。

 

身体エネルギーが流動化し、

身体が変わっていくのが、

実感されます。

使えるエネルギーが増大して、

見た目にもエネルギッシュになります。

 

このように、

ゲシュタルト療法は、

心身一元論的なアプローチであり、

ワークの進展に従い、

心理的にも、

肉体的にも、

全身のしなやかな解放が進んでいくのです。

統合の進化が、

物理的にも、分かりやすい所以です。

 

※気づきや統合、変性意識状態(ASC)への

より総合的な方法論については、拙著↓
入門ガイド
および、
『砂絵Ⅰ 現代的エクスタシィの技法 心理学的手法による意識変容』
をご覧下さい。

へリンガーのファミリー・コンステレーション

ファミコン


バート・ヘリンガー氏の創始した、

「ファミリー・コンステレーション」は、

興味深い心理療法です。

 

「コンステレーション」とは、

配置、布置、星座という

意味であり、

ユング心理学などでは、

よく使われる言葉です。

 

ファミリー・コンステレーションは、

A・ミンデル博士の、

プロセスワークで行なう、

「ワールドワーク」の、

元ネタになったとも言われますが、

実際に、そのセッション(ワーク)を経験していくと、

個人と集団(集合)

または、

個人的なテーマと、

集団(集合)的なテーマとの間にある、

一種、不思議な、

エネルギー的な結びつきについて、

感覚的な体験を、

深めていくことができます。

 

 

①ワークの方法

 

通常、心理療法のワークでは、

セラピストが、

クライアントの方の主訴を聞き、

当然ですが、

クライアントと直接に、

何らかのやり取り、

働きかけを行なっていくことにより、

ワークを進行させます。

治癒のプロセスを促進します。

 

しかし、

ファミリー・コンステレーションにおいては、

まず、そこが違うのです。

 

セラピストが、

クライアントの主訴を聞いた後、

クライアントの家族や家系等について、

いくつかの質問を行ない、

そのワークで使っていく、

「登場人物」を、

幾人か選定していきます。

(多くは、家系に関係した、両親や親族です。

クライアントが、

実際に会ったことのない人物も含みます)

 

そして、クライアントに、

「本人(自分)役」も含めて、

その登場人物たちの「役」を演じてもらう人=「代理人」を、

ワークショップの参加者の中から、

直観で、選んでもらうよう、要請します。

 

クライアントは、

それぞれの役の「代理人」を、

自分の役も含めて、

数名(人数分)選び、

部屋の中の、ここだと思う場所に、

(登場人物たちの、「関係性」を、感じながら)

空間配置します。

 

そして、そこから、

面白いことですが、

セラピストと、

この代理人たちとによって、

代理人同士のやりとりによって、

ワークが、展開されていくのです。

 

そして、

クライアントは、

それを、横で見ているのです。

 

これは、

心理療法としては、

大変、奇妙な(異様な)光景です。

 

 

②ワークの展開と体験

 

さて、

代理人を演ずる参加者は、

通常、クライアントのことを、

ほとんど知りません。

そのワークショップの当日に、

会場で、初めて会ったからです。

 

しかし、

代理人として、

その、家族・家系関係の「場」の中、

「空間配置」の中に立つと、

他の代理人(家人)との関係が、

エネルギーの強弱、

快不快の身体感覚、

感情的な情報として、

なぜか、感じられてくるのです。

 

その情報を、手がかりに、

セラピストは、

代理人たちとやり取りを進め、

代理人たちに、

空間移動をさせ、

表現を促し、

代理人(家人)の、

からだの向き、

立ち位置や位置関係を、

さまざまに変えて、

調整していきます。

 

そのことにより、

その家系(家族)の、

正しい位置関係や、

その家系(家族)の中で、

排除した(欠落させた)人物やテーマを、

探っていくのです。

 

それは、あたかも、

家系(家族)の関係性自体が、

ひとつの生体として持っている、

自律的なエネルギーを、

ほぐし、伸ばして、

「整列」させるかのように、

展開していきます。

(これを「もつれを解く」と呼びます)

 

そして、ワーク(セッション)では、

その整列・展開の果てに、

クライアントを、

家系(家族)の配置の中に、

招きいれ、

その家族・家系の、

全体のエネルギーを、

正しく流れていくように、

調整していくのです。

 

クライアントに、

自己の家系の存在と、

そのつながりを理解してもらい、

自分の存在の位置を、

深く理解してもらうのです。

 

 

 

さて、

ファミリー・コンステレーションの、

ワーク(セッション)は、

通常の心理療法とは、

まったく進め方も、

体験の質も違います。

 

しかし、

クライアントにとっても、

役を演じた、代理人にとっても、

とても不思議な、

印象深い体験となります。

 

私たちの背後に生きている、

「家系のエネルギーの流れ」という、

よくわからない力が、

何らかのエネルギーとして、

存在していることを、

(自分たちに影響していることを)

体験する、

貴重な機会となるからです。

 

そしてまた、

そのようなテーマが、

一定の心理療法的なセッションの中でも、

実は、浮上していること、

そして、

関わっていくことができることに、

気づくからです。

 

それはまた、

セッションの新たな可能性を、

見出していくことにもなります。

ミンデル博士が、

ワールドワークを、

着想していったようにです。

 

実際、

筆者自身も、

その後の経験の中で、

ファミリー・コンステレーションで、

体験した要素は、

ゲシュタルト療法その他の、

セッションの中でも、

人物たちの場の配置や、

エネルギーの流れにより、

色々と現れていることを、

その後、確認していきました。

 

そして、

ファシリテーションの幅を、

広げていく霊感にもなったのです。

 

 

   

※気づきや統合、変性意識状態(ASC)への

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変性意識状態(ASC)の「ホリスティックな治癒効果」

さて、変性意識状態(ASC)について非常に興味深い点は、変性意識状態それ自体が、とても深いホリスティック(全体的)な治癒効果(癒しの力)を持っているという点です。
変性意識状態(ASC)においては、普段の生活の中では、顕在化していなかった潜在意識の深い感情・微細な生体情報・エネルギーが活性化してきて、日常意識でも気づきやすくなります。
日常意識
と深い潜在意識との間にさまざまな情報的・エネルギー的な交流が可能となるのです。
そのあたりの要素が、人間の治癒能力を増大させるのでしょう。

①変性意識状態(ASC)の心身一元論的プロセス

また、変性意識状態(ASC)の多くは、基本的に心身一元論的なプロセスの性質を持ち、身体や生体の深い生命プロセス、自律的プロセスを活性化する傾向を持ちます。
ゲシュタルト療法の用語でいうと「内部領域」という体内(生体)領域が活性化するのです。
その点が、この治癒(癒し)効果を強くする要因にもなっていると考えられるのです。

というのも、「日常意識」とは基本的には、理性的な「自我」機能に拠るものです。
理性的な「自我」機能とは、ゲシュタルト療法の用語でいえば、「中間領域」の世界です。
精神分析的な心理構造でいえば、現実原則による二次過程を担当し、生体の組織でいえば、「表層的な部分」になっています。
それがために、理性的な「自我」機能は、外部の人間世界と辻褄を合わすことに長けているのですが、生体の内部の深層プロセスとは若干「解離的」な側面も持っているわけです。

変性意識状態(ASC)においては、この理性的な「自我」機能が弛んで、拘束が解除されて、意識が生体の内部の深層プロセスにコンタクト(接触)しやすくなるのです。
この点が、変性意識状態(ASC)が心身一元論的に生体の深いプロセスを活性化するポイントとなっていると考えられるのです。

そして、身体の深層プロセスが活性化されることで、普段においては、硬化し滞っていた生命エネルギー・生体情報・感情が活性化してきて、生体のホリスティック(全体的)な活動が働きはじめるのです。
それは、心と肉体の潜在能力が深いレベルから解放された状態といえます。
その状態の中で、心身をきちんと整備しようとする「生体の自律的なプロセス、ホリスティックな自然治癒のプロセス」が、私たちを再調整・再統合していくこととなるのです。
それゆえ、変性意識状態(ASC)は、普段にない形で強い治癒作用を持つものとなるのです。自然本来の持つ自己回復機能が発現するといえるのです。

例えば、「ブリージング・セラピー」などは、テクニック面においては「呼吸」を利用するだけのシンプルな技法ですが、心身の深いプロセスを活性化して、そこで自然に生ずる強い変性意識状態(ASC)の作用によって、深い記憶の浮上、深い感情とエネルギーの放出、筋肉硬化の解除などによって、通常のセラピーでは起こらないようなホリスティックな変容をクライアントの方に起こすものとなっているのです。
ブリージング・セラピー その1 
呼吸法と事例 

②変性意識状態(ASC)のシステム論的プロセス

また違うシステム論的に考えていくと、私たちは、変性意識状態(ASC)を通して、私たちがもつ未知のホリスティック(全体的)なシステムや高次階層システムにつながっていくという可能性も考えられるのです。

別のところでは、映画『攻殻機動隊』や変性意識研究の大家リリー博士の経験を参考に、私たちの心の階層構造について考えてみました。
つまり、聖書にある「聖霊にみたされる」体験を、システム的に意識(存在)が未知なる「上部階層」とつながり、整列させられる体験として考えてみたのです。
映画『攻殻機動隊』のラストでは、主人公の意識が、広大な上部階層の世界に溶け込むことでより、下位的な現実世界から消えてしまいます。
そのような上部階層のシステムとつながる体験であるがゆえに、下位存在がシステム的に整備(プログラム)されることにより、「ホリスティックな調整作用(治癒・癒し)」が働くとのではないかと考えてみたわけです。
つまり、「聖霊に満たされる」体験とは、上位のホリスティック(全体的)なシステムにつながり・整列することで、「私たちという下位のシステム」が整えられ、癒されることを表現しているのではないかと。
そのようにに考えると、「ホリスティックな癒し」とは何かについて、よりシステム的・機能的に考えることもできるようになるのではないかということです。
映画『攻殻機動隊』ゴースト Ghost の変性意識
「聖霊」の階層、あるいはメタ・プログラマー ジョン・C・リリーの冒険から

以上見たような理由からも、変性意識状態(ASC)に入るスキルを身につけることは、心理的な治癒においても、身体的な治癒においても、ともに大きな可能性をはらんだ効果を持っているといえるのです。

【ブックガイド】
※気づきや統合、変性意識状態(ASC)へのより総合的な方法論は拙著↓
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関連記事
X意識状態(XSC)と意識の海の航海について
「聖霊」の階層あるいはメタ・プログラマー ジョン・C・リリーの冒険から
映画『攻殻機動隊』ゴースト Ghost の変性意識

野生と自然

 

◆自然と私たち

 

さて、

ゲシュタルト療法や、
体験的心理療法などの、
心理的な探究を長年つづけて、

心身がほぐれていくと、

意識の可動域が拡大し、
個人に限定されない、
さまざまな領域にまで、
自己の範囲が、

広がっていくこととなります。

 

そのことは、やがて、

「自然」というものに対する、

私たちの関係を変えていくことにもなるのです。

 

このことは、

人間関係(関係性)だけを突き詰めていくことによって、

しばしば行き詰ってしまう、

従来的な心理療法に対する、

別種の観点としても、意味を持って来るのです。

精神科医の加藤清は言っています。

 

「もしクライエントとセラピストとの関係、

人間の関係だけであれば、

場の基底がもうひとつ弱い。

そこに、ディープ・エコロジカルな基盤があってこそ、

出会いが成立する。

人間と人間との出会いは同時に、

自然とクライエントとセラピストの出会いでもある。

魂の出会いといってもいい」

(加藤清、上野圭一『この世とあの世の風通し』春秋社)

 
 

ところで、
心身一元論的なボディワーク・セラピー
ブリージング・セラピーなどの、

体験的心理療法の中では、

肉体という領域への、

感受性を深めていくため、
私たちが自然の生物として持っている
深層的な能力についても、
各種の気づきがひろがっていきます。

 

また、グループワークを主体とする、

体験的心理療法では、
仲間との協働で、セッションを進めるため、

私たち自身の「群れ(集団)」としての側面について、
新たな気づきの洞察が深まっていきます。

 

実際、グループ・セラピーの現場では、
しばしば、ありえないような形で、
人々の心の共振・共鳴が生じます。

それは、物理的な共振・共鳴とまったく同様です。

 

そこにおいて、私たちは、

意識や感情エネルギーの物質的的な基盤について、
深い感覚的な理解を得ていきます。


◆人間種を超えて

 

さて、このような「つながり」の感覚は、

その感受性を延長していくと、

人間共同体(家族、仲間、社会)を超えて、
自然や大地、動植物、鉱物にまで、

およんでいくこととなります。

知覚力や心が、研ぎ澄まされ、

身体として浸透していくかのようです。
これらは知的なものとしてではなく、
直接のつながりの感覚として、

得られていくのです。

 

 

◆シャーマニズム的な姿勢

 

ところで、自然とじかに交わり、
大地との交感を深めていくといえば、
伝統には、それはシャーマニズムの領域と、

重なっていくことともなります。

そのため、当スペースでは、

心理療法に基盤を置きつつも、

そのような観点から、

これらの取り組み全般を、

シャーマニズム的な姿勢であると、

見なしているのです。



※気づきや統合、変性意識状態(ASC)への
より総合的な方法論については、拙著↓
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および、
『砂絵Ⅰ 現代的エクスタシィの技法 心理学的手法による意識変容』
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関連記事
シャーマニズムについて
『生物都市』と鉱物的な変性意識状態(ASC)
フロー体験について
サバイバル的な限界の超出 アウトプットの必要と創造性



 

 

【PART1 Basic】ゲシュタルト療法
ゲシュタルト療法【基礎編】
ゲシュタルト療法【実践・技法編】
ゲシュタルト療法【応用編】
「セッション(ワーク)の実際」

【PART2 Standard】
気づきと変性意識の技法 基礎編
変性意識状態(ASC)とは
「英雄の旅」とは
体験的心理療法
NLP 普及・効果・課題
禅と日本的霊性
野生と自然

【PART3 Advanced】
気づきと変性意識の技法 上級編
変性意識状態(ASC)の活用
願望と創造性の技法
その他のエッセイ

【PART4 当スペース関係】
フリー・ゲシュタルトについて
セッションで得られる効果
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ブリージング・セラピー(呼吸法) BPM

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H.R.ギーガー
 


ブリージング・セラピー(呼吸法)Ⅰでは、スタニスラフ・グロフ博士の「ホロトロピック・ブレスワーク」の実際のセッション体験について記しました。
ここでは、この理論の前提となっている「分娩前後マトリックス」について、ここでは少しご紹介しましょう。
※グロフ博士の『脳を超えて』(吉福伸逸他訳 春秋社)という大著があります。最下部の一覧表は同書からの要約です。

◆「出生外傷(バース・トラウマ)」の発見
―「分娩前後マトリックス」

博士は、当初、LSDを使った心理療法(サイケデリック・セラピー)を行なっていましたが、クライアントとの数千回にわたるLSDセッションを行なう中で、人間の深層に「出生外傷(バース・トラウマ)」が存在することを発見しました(そう判断しました)。
(http://hive.ntticc.or.jp/contents/interview/grof)

それは、人間が「胎児として、子宮から膣道を通って出産される」という強烈な体験過程の記憶です。それがLSDセッションでは回帰(再体験)してくることになります。

グロフ博士は、これを基本的分娩前後マトリックスBPM (Basic Perinatal Matrix)と呼んで、体験のフェーズごとにBPMⅠ~ BPMⅣまで4つに分けて解説しています。

そして、それらが「原トラウマ」として、その後の人生に大きな影響を与えていることと考えたのです。
それらは精神障害で現れるタイプ・傾向から、日常生活での好み嗜好/強迫観念、性的な好み嗜好までその人を貫く大きな要素として存在しているという仮説です。

①BPMⅠ 母親との原初の融合

最初のフェーズです。これは胎児が、母親の子宮の中にたゆたっている状態です。子宮内が良好な状態であれば、これは安逸(至福、天国)の体験です。子宮内が胎児にとって不快な状態であれば、最悪の体験(地獄)です。胎児にとっては子宮内が宇宙そのものであるからです。

②BPMⅡ 母親との拮抗作用

やがて、出生の時期を迎えます。胎児は子宮口に吸い込まれていく体験に入ります。胎児にとっては危機的な状況です。窒息や吸引など様々な脅威がこの体験過程の表象となっています。

③BPMⅢ 母親との相助作用

産道・膣道を通って出産される場面です。胎児は膣道の万力のような圧倒的な力に、自分が圧し潰されそうになる脅威を感じます。膨大なエネルギーが発散・放出されます。同時にぞっとするような性的でもある火山的エクスタシーを体験することもあります。

④BPMⅣ 母親からの分離

実際に、出産されて母親の外に出る体験です。恐ろしい苦難の後の突然の解放体験となります。そこでは、まばゆさと歓喜に満ちた元型的な世界を体験したりもします。

さて、以上のような4つのフェーズが原型的な体験となって、私たちの深層意識の底に巣食い、その後の人生に与えていくというのがグロフ博士のBPM仮説となっています。

ところで、このような心の原風景は、筆者の変性意識状態を使ったゲシュタルト療法においても、しばしば現れてくるものであります。
そのため、ブリージング・セラピーに限らず、クライアントの深層意識をあつかうセラピスト、ファシリテーターは、この仮説(理論)が描写する生々しいイメージや症状、欲求(感情)形態、心理構造をよく理解しておいて損はないと思われます。

 

※体験的心理療法や変性意識状態(ASC)についての総合的な方法論は拙著↓
入門ガイド
『気づきと変性意識の技法:流れる虹のマインドフルネス』
および、よりディープな
『砂絵Ⅰ 現代的エクスタシィの技法 心理学的手法による意識変容』をご覧下さい。

↓動画「ブリージング・セラピー(呼吸法)」

※多様な変性意識状態についてはコチラ↓動画「ゲシュタルト療法 変性意識 『砂絵Ⅰ: 現代的エクスタシィの技法 心理学的手法による意識変容』」


ブリージング・セラピー(呼吸法)事例


ここでは、「体験的心理療法」の典型として、ブリージング・セラピーである「ホロトロピック・ブレスワーク」とその事例を紹介したいと思います。その治癒的な効果と、変性意識状態(ASC)の現れ方のあり様がよく分かると思われます。

ブリージング(呼吸法)を使ったセラピーは各種あります。
呼吸は、私たちの意識と無意識をつなぐとても重要な媒体(要素)であり、そのため古今東西の瞑想技法でも重視されてきたものです。

たとえば、私たちは、日頃よく「呼吸」を止めることで「感情」を抑えようとします。抑制しようとします。
思わず「息を止める」「息をつめていた」などという行為です。
ある種の人々にとっては、これが子供の頃からの習い癖となっていて、そのために肉体自体(肺や横隔膜)が硬くなってしまっていて、深い呼吸ができないという人がいます。
しかし、これまでの人生の中では、呼吸を止めることで「その時、感じたくなかった生々しい感情(苦痛)」から自分を守ることができたのです。
「呼吸をコントロールする=感情をコントロールする」が方程式になってしまっているのです。

しかし一方で、だんだんと、浅い呼吸しかできないために、生き生きとした生命力が枯渇してしまっていること気づき、悩まされることにもなるのです。

そのため、からだをほぐし、呼吸をなめらかに滞りなく流すこと自体が、自分の感情をなめらかに流していくことに効果的なのです。
なめらかな深い呼吸には、なめらかな感情の流れが連動します。
各種のボディワーク・セラピーにおいては、身体の硬くなった(硬化した)ブロックを直接的にほぐしていくことで、このプロセスを促進していきます。

自分の感情を抑えたり、コントロールすることを習い癖にしている人は、呼吸を解放したり、感情を深く体験することにはじめは恐怖を感じます。
また、呼吸の解放によって、感情のコントロールを失うんじゃないかと恐れを抱きます。

しかし、心配は不要です。コントロールは「自然」のシステムとして働いています。
むしろ逆に、人為的・作為的な無理なコントロールこそが、抑圧によって感情の反発を招き、感情の暴走を招くのです。
(緊張しないようにすると、かえって緊張してしまうのと同じです。緊張を受け入れると緊張はなくなります
)

マインドフルネス瞑想の要領で、心静かに呼吸に注意を向け、自然に呼吸を流していくことで、感情の流れと呼吸の流れが同期している(つながっている)感覚を静かに実感できて、心身の新しいエネルギーの流れを体験していくことができるでしょう。

ブリージング・セラピー(ホロトロピック・ブレスワーク)は、このような呼吸の特質を使って、心の深層の次元にアクセスしていく力強い方法論なのです。

◆ホロトロピック・ブレスワーク

「ホロトロピック・ブレスワーク」とは、スタニスラフ・グロフ博士が開発したブリージング・セラピーです。グロフ・ブリージング、ホロトロピック・ブリージングとも呼ばれたりします。

グロフ博士は当初、合法の研究薬だったLSDを使った心理療法(サイケデリック・セラピー)を行なっていましたが、LSDに法的規制が加わった後、ブリージング(呼吸)・セラピーでも同様の内的プロセスを促進できることを発見し、その方法論を実践化しました。詳しくは、博士の『自己発見の冒険』(吉福伸逸他訳 春秋社)などに詳しい実践法の記述がありますで、そちらをご覧いただければと思います。ここでは、ポイントだけを記していきます。

①セッションの方法

1セッションで、1時間から数時間かけて行ないます。

セッションは二人一組になり、中心のクライアント(ブリーザー)とサポートする「シッター」と役割を決めて行ないます。

クライアント(ブリーザー)が行なうことは、セッションの間の数時間、大音響で音楽が流れる中、ただ「過呼吸」を行ない、生起して来る内的プロセスに気づきをもって身を委ねるだけです。プロセスは自然に生起していきます。その中で、起承転結が自然に起こるのです。

②内的プロセス セッションの経過

グロフ博士は言います。

「たいていの場合、ホロトロピックな体験は、オルガスム曲線を描き、感情のもの上がりとともに、身体的兆候が現れ、それが絶頂期を迎え、突如の解決に導くといった経路をたどる」(前掲書)

この内的・現象的・症状的な経過はとても自然な流れで起こり、私たちの内部の〈自然〉の圧倒的な自律性(知恵)を感じさせる類いのものです。

セッションの間は、主観的には、この体験がどこに向かうのか、何が起こるのか、まったく予測がつかない状態ですが、症状や体験過程がある程度進行してくると、そのプロセスに無理がなく、私たちの経験的な体感覚とマッチしていることもあり、とりあえずはその過程の行く末に任せてみようという気分になってきます。それは、その状態が既に変性意識状態(ASC)であり、通常では気づけない、微細な生体プロセスに気づけていることにも由来します。

◆出生外傷(バース・トラウマ)

▼「分娩前後マトリックス Basic Perinatal Matrix 」

「出生外傷(バース・トラウマ)」は、フロイトや弟子のオットー・ランクらが人間の深層にあるトラウマとして昔から指摘していたものです。しかし、その指摘はどこかアイディア的で、観念的なニュアンスがありました。
しかし、グロフ博士は、クライアントとの数千回にわたるLSDセッションを行なう中で、人間の深層に文字通りの物理的・体験的記憶として「出生外傷(バース・トラウマ)」が実際に存在することを発見していったのです(そう判断していったのです)。

クライアント自身の「胎児として、子宮から膣道を通って出産される」という物理的な体験の記憶です。
それはある種、「天国的」であると同時に「地獄的な」体験の記憶です。
これが人間の深層に横たわっており、さまざまな「天使的」または「悪魔的」な欲望の基盤となっていると考えたのです。

グロフ博士は、これを基本的分娩前後マトリックスBPM (Basic Perinatal Matrix)と名づけて、BPMⅠ~ BPMⅣまで4つのフェーズに分けて解説しています。
実際の「産道体験」である同時に、その(それぞれのフェーズに)特徴的な存在状態の解説となっており、そして、どのフェーズで、トラウマな固着をもった場合に、人生でどのような傾向の問題(妄想)を引き起こすかを体系化したのです。

そして、重要なことは、この深層記憶が「ホロトロピック・ブレスワーク」ではしばしば戻ってくるということなのでした。
そして、そのトラウマ的な記憶を解消していくということなのでした。

◆セッション体験例

ここでは、実際に筆者のセッション体験を引用しておきましょう。
ところで、ブリージング自体は、過去に何回も行なっていますが、ここでは、はじめて顕著な体験をした時の事例を拙著『砂絵Ⅰ: 現代的エクスタシィの技法 心理学的手法による意識変容』から引用しておきます。


さて、以下を体験する前の時点で、既に何回かブリージング自体は行なっていましたが、これといって特別な体験は何も起こっていなかったので、
この時も、さしたる期待もなく、セッションを始めたのでした。

「……………………………
………………………
…………………

いつものように、
音楽に気を紛らわし、
過換気呼吸に、
集中していく…

過換気自体は、
不快なだけ、
苦しいだけ、
といってもいい…

探索するよう、
手さぐりするよう、
感覚と手がかりを求め…
呼吸を続けていく…

…………
………………
熱気が高まってきて…
顔や皮膚に、
ちりちりと、
蟻が這うよう、
痒さが走る…

茫漠とした不安に、
さきの見えない、
不快感が、
つのっていく…

呼吸に集中し…
気づきを凝らし…
内側から、
深層のプロセスが、
生起して来るのを、
見つめている…

光の斑点が、
眼の裏に、
交錯し、
輪舞する…

どのくらい、
経ったのか…
汗ばむ熱気の中、
苦しさは薄まり…
痺れとともに、
遠いところから、
満ちて来る、
生理の、
深いざわめきに、
気づく…

呼吸を続け、
その波を、
増幅し、
持続させることに、
集中する…

いつものよう、
手足のさきが、
痺れはじめ…
熱気の中、
斑らに現れる、
奇妙な汗ばみ…
冷たさの感覚… 

とりとめのない、
記憶や映像が、
夢の破片ように、
去来する…

どこへ向かっているのか、
予想もつかない…
しかし、
何かが、
満ちて来る気配…

内側の遥かな底に、
荒れ騒ぐよう、
何かが高まり、
生起する感覚…

呼吸を続け…
意識が、
途切れがちになる…
呼吸を保ち…
意識をただし…
気づきを凝らし…

………………………
………………
…………

どのくらい、
時間が経ったのか…
明滅する意識の向こうに、
ふと気づくと、
そこに、

「胎児である自分」

がいたのである…

それは、
記憶の想起ではなく、 
今現在、
今ここで、
「胎児である自分」
なのであった… 

感じとられる、
肉体の形姿が、
からだの輪郭が、
いつもの自分とは、
完全に違っている…

巨大な頭部に、
石化したよう、
屈曲した姿勢…
激しく硬直する、
腕や指たち…

手足のさきが、
堅く曲がり、
樹木のよう、
奇妙な形に、
ねじくれている…

からだ全体が、
胎児の形姿、
姿勢である…

そして、
気づくのは、
今ここに、
自分と重なって、
「その存在がいる」
という、
圧倒的な、
臨在の感覚である…
その存在の、
息吹である…

それは、
自分自身である、
と同時に、
かつて、
そうあったであろう、
「胎児である自分」
との二重感覚、
だったのである…

「いつもの自分」
の意識と、
「胎児である自分」
の感覚(意識)とが、
二重化され、
同時に、
今ここに、
在ったのである…

分身のよう、
多重化された、
肉体の、
感覚の、
意識の、
圧倒的に、
奇妙な現前が、
在ったのである…

そして、
ふと気づくと、
手足は、
異様なまでの、
硬直の激しさである…

その筋肉の凝縮は、
普段の人生の中では、
決して経験しない類いの、
岩のような硬直と、
巨大な圧力である…

自分の内部から、
このように、
途方もないエネルギーが、
発現している事態に、
驚いたのである…

肉体の深い層から、
生物学的で、
火山的なエネルギーが、
顕れていたのである…

………………
…………

何の感覚か…
まとわり、
ぬめるよう密閉感… 
粘膜のよう、
煩わしい、
冷たい汗ばみ…
奇妙な匂い…

内奥に、
深く凝集し、
細胞的に遅延する、
時間の感覚…
生理的な、
生物的な、
渇き…

胚のよう、
種子のよう、
濃密に凝縮する、
発熱の、
震え…

暗闇に、
ぼうと浮かぶ、
輝くような、
始源の感覚…
宇宙的な、
未明の、
けはい…

肉と骨の奥処に、
岩のよう、
苛烈な硬直の、
軋み…

烈火のよう、
力のエネルギーが、
尽きることない、
火力が、
終わることなく、
滾々と、
放出されていたのである…

………………………………
………………………」

さて、このセッションは、「胎児のとしての自分を見出し、体験する」ということを体験の絶頂として、身体の猛烈な硬直もそれ以上には進まず終息に向かっていきました。

主観的には、この胎児との遭遇は、大きな感情的なインパクトを持ちました。生命の自律性に対する畏怖の感覚や、その原初の輝きを、目撃し、同一化する体験となったのです。


◆体験の後

さて、このセッションの目覚しい効果は、その翌日朝にすぐ現れました。
肉体の深層に埋め込まれていた、硬化した緊張感が忽然と無くなり、膨大な量のエネルギーが解放されていたのでした。
からだが、信じられないくらい、軽くなっていたのでした。
そして、羽毛のように軽く、フワッと身を起こしたのでした。
自分のからだの軽さに、驚いたのでした。

そして、あらためて(逆算的に)過去を振り返ってみて、昨日までそのような膨大なエネルギーの重圧感を抱えて生きていたことに気づいたのでした。

普段、そのような深層の抑圧(重圧)には気づきもしていませんでしたが、膨大な緊張感が無くなってみてはじめて、心身の深層にそのような苦しく圧迫的なプログラムが埋め込まれていたのにあらためて気づいたのでした。
そして、自分がすでに「解放された存在」になってしまったことに、その朝気づいたわけでした。

続き→ ブリージング・セラピー その2 BPM (Basic Perinatal Matrix)

※体験的心理療法や、変性意識状態(ASC)についての総合的な方法論は拙著↓
入門ガイド
『気づきと変性意識の技法:流れる虹のマインドフルネス』
および、よりディープな
『砂絵Ⅰ 現代的エクスタシィの技法 心理学的手法による意識変容』
をご覧下さい。

↓動画「ブリージング・セラピー(呼吸法)」

↓動画解説 「変性意識状態(ASC)とは何か その可能性と効果の実際」

※多様な変性意識状態についてはコチラ↓動画「ゲシュタルト療法 変性意識 『砂絵Ⅰ: 現代的エクスタシィの技法 心理学的手法による意識変容』」


体験的心理療法とは はじめに

当スペースで、

「体験的心理療法」と呼んでいるものは、

主に、1960年代に、

米国西海岸を中心に広まった

心理療法のタイプの一群です。

 

当スペースの中心技法である、

ゲシュタルト療法エンカウンター・グループ

ボディワーク・セラピーや、ブリージング・セラピーなどが

代表的なものです。

また、当時の普及のメッカとしては、

エサレン研究所 Esalen Instituteなどが

知られています。

 

エサレン研究所の所長、

マイケル・マーフィーは、

その活動初期に、

エンカウンター・グループを体験し、

これは、「サイケデリック物質と同じくらい、

人を恍惚とさせるものだ」と感じたようです。

そして、これを、

「新しい、アメリカのヨガであり、

個人と宇宙とを結合する道だ」

と思ったようです。

(W・T・アンダーソン 『エスリンとアメリカの覚醒』 誠信書房)

 

そして、実際、

この地から、

心理療法の新しい潮流も、

ひろまっていったのでした。

 

「私は、以前より、開かれ自発的になりました。

自分自身をいっそう自由に表明します。

私は、より同情的、共感的で、忍耐強くなったようです。

自信が強くなりました。

私独自の方向で、宗教的になったと言えます。

私は、家族・友人・同僚と、より誠実な関係になり、

好き嫌いや真実の気持ちを、

よりあからさまに表明します。

自分の無知を認めやすくなりました。

私は以前よりずっと快活です。

また、他人を援助したいと強く思います」

(ロジャーズ『エンカウンター・グループ』畠瀬稔他訳/創元社)

 

エンカウンター・グループ体験者の言葉です。

このような、心のしなやかさや感度の獲得は、

どのような体験的心理療法を体験したとしても、

それが、充分に深められた場合には、

おおよそ、共通している要素です。

 

ゲシュタルト療法エンカウンター・グループは、

実際に表現してみることや、

人間相互のやりとりを通して、

知的な解釈ではない、

深い感覚(感情)的体験を、

直接経験していきます。

 

ボディワーク・セラピーや、

ブリージング(呼吸法)・セラピーは、

身体に直接働きかけ、

そこから出発することで、

知的に乖離しているクライアントの、

存在の深部から、

直接に作用をさせます。

その分、効き方も、

強いもの(強度の体験)になります。

そのことにより、

深部の心理プログラミングを、

書き換えていきます。

 

知的なフィルターのせいで、

袋小路に陥ってしまっている、

現代人の多くにとっては、

めざましい自然治癒を活性化させる、

有効な療法でもあるのです。

 

また、体験的心理療法は、

深部からの心身一元的な領域で、

開放を促すため、

意識の多様な領域を、

開示することにもなります。

 

変性意識状態へのアクセスにおいて、

特に、実践的で、

有効なアプローチとなっています。 

 

筆者自身、実際に、

さまざまなセッションを体験してみて、

そのめざましい効果や、

体験世界のひろがりに、

圧倒されたのでした。

また、自分が自発的に持っていた、

変性意識状態を理解する、

方法論であることを、知ったのでした。

 

 

現代の日本では、

体験的心理療法は、

あまり一般の認知がなく、

場合によっては、

自己啓発セミナーなどと混同されてしまうという、

残念な結果となっています。

 

当スペースでは、

ゲシュタルト療法の他に、

周辺領域にある、

さまざまな体験的心理療法の、

知見や技法も活かして、

心の悩みの解決や、

潜在的力の開発に、

役立てています。

 


※気づきや統合、変性意識状態(ASC)への

より総合的な方法論については、拙著↓
入門ガイド
および、
『砂絵Ⅰ 現代的エクスタシィの技法 心理学的手法による意識変容』
をご覧下さい。


(スタニスラフ・グロフ博士のインタビュー

http://hive.ntticc.or.jp/contents/interview/grof 

「ワーク」とはⅠ 目的と効果

ゲシュタルト療法では、

クライアントとファシリテーターが行なう

セッションのことを、

ワーク work と呼びます。

そこで、

なんらかの悩みや課題を

解決することを目指します。

 

米国由来の体験的心理療法では、

クライアントとして、

セッションをすることを、

大体、「ワークする」と呼びます。

 

ゲシュタルト療法は、

基本的には、

グループ・セラピーなので、

ワークを希望するクライアントが手を挙げて、

ファシリテーターと、

皆の前で、ワークをします。

 

個人セッションの場合は、

二人で行ないます。

1回のワークは、

大概30分~90分位かけて行ないます。

 

※実際のワークのイメージをつかむには、

セッション(ワーク)の実際」をご覧ください。

 ここでは、より原理的、構造的な解説となります。 

 

それでは、

ワークの目的と、その効果について、
見てみましょう。
 

◆ワークの目的① 「未完了の体験」の完了

最初のところで、

ゲシュタルト療法の基本概念として、

「ゲシュタルトの形成と破壊のサイクル」

見ました

 

そして、人は、

その欲求充足の過程(サイクル)の中で、

強度の欲求不満を持つと、

「未完了の体験」

「未完了のゲシュタルト」が、

心の中に、

残ってしまうということについて、

触れました。

 

そして、そのことが、

私たちの中に、

苦痛を生み出し、

人生を生きていく上での、

欲求や行動の制限、

生きづらさを、

つくり出しているというわけです。

 

さて、

(少し単純化していうと)

ゲシュタルト療法のワークの、

第一の目的は、

この「未完了の体験」

「未完了のゲシュタルト」を、

ワークの中で、

「完了させる」ことにあります。

 

ワークを展開する中で発見した、

「やり残した仕事」

「未完了の体験」を、 

技法的な工夫により、

「その時やれなかったことをやる(行なう)」ことによって、

完了(充足)するのです。

 

そのことにより、

クライアントの方の中にあった、

強い感情の塊り(緊張し鬱積していたもの)が、

弛緩・解放され、

心理的なプログラミングが、

書き換えられるのです。

 

 

◆ワークの目的② 「葛藤状態」の解消

さて、別のところで、

私たちの内部にある「複数の自我」が、

葛藤・対立することによって生ずる、

「葛藤状態」についても見ました。

このことにより、

私たちの中に、

生きづらさの苦痛が、

生じているのです。

 

さて、ワークの第二の目的は、

この「葛藤状態」を解消することです。

 

エンプティチェア(空の椅子)の技法などを使い、

「複数の自我」を、

複数の椅子に分けて配置し、

自我同士の対話・交流を、

行なっていきます。

 

そうすることで、

分裂・対立していた自我の間に、

情報とエネルギーの交流が起こり、

「葛藤状態」が、解消されていくのです。

葛藤解決の技法

 

 

◆ワークの効果

「未完了のゲシュタルト」が完了すると、

心の底に閉じ込められていた、

膨大なエネルギーが解放されます。

(未完了のエネルギーを、

閉じ込めるのにも、

また膨大なエネルギーが必要だからです。

ここにも、実は葛藤が存在していたのです)

 

そのため、

これらの葛藤がなくなると、

主観的には、

大きな高揚感や、

エネルギーが増大した感覚を得ます。
 

実際、心の葛藤の解消は、

同時に、肉体エネルギーの解放性を高めるので、

実際、物理的にも、

体力(エネルギー)は高まっていくのです。

 

また、葛藤状態(という内的分裂)が減った分、

「統一した自分自身」という、

より強い、主体的な力の獲得の感覚を得ます。

その結果、

生きていくこと全般に対して、

能動的で、肯定的になっていくのです。

 

また、

未完了の体験(ゲシュタルト)の完了は、

それによって生じていた、

認知の回避や歪み、

制限的信念(リミティング・ビリーフ)を壊すので、

物事を洞察する際の、

不要な囚われ(心理的投影)がなくなり、

創造力や能力においても

明らかな拡張を得るのです。

 

過去に較べて、

頭抜けたパフォーマンスを、

出しやすくなるのです。

 

そして、これらが、

プログラムの改変として、

恒久的な効果として、

現れて来るのです。 

 

次の、エンカウンター・グループ経験者の言葉が、

このあたりの消息を、よく伝えています。

 

「私は、以前より、開かれ自発的になりました。

自分自身をいっそう自由に表明します。

私は、より同情的、共感的で、忍耐強くなったようです。

自信が強くなりました。

私独自の方向で、宗教的になったと言えます。

私は、家族・友人・同僚と、より誠実な関係になり、

好き嫌いや真実の気持ちを、

よりあからさまに表明します。

自分の無知を認めやすくなりました。

私は以前よりずっと快活です。

また、他人を援助したいと強く思います」

(ロジャーズ『エンカウンター・グループ』畠瀬稔他訳/創元社)

 

ゲシュタルト療法においても、

これらと同様の成果が、

見られていくのです。

 



※気づきや統合、変性意識状態(ASC)への

より総合的な方法論については、拙著↓
入門ガイド
および、
『砂絵Ⅰ 現代的エクスタシィの技法 心理学的手法による意識変容』
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【PART1 Basic】ゲシュタルト療法
ゲシュタルト療法【基礎編】
ゲシュタルト療法【実践・技法編】
ゲシュタルト療法【応用編】
「セッション(ワーク)の実際」

【PART2 Standard】
気づきと変性意識の技法 基礎編
変性意識状態(ASC)とは
「英雄の旅」とは
体験的心理療法
NLP 普及・効果・課題
禅と日本的霊性
野生と自然

【PART3 Advanced】
気づきと変性意識の技法 上級編
変性意識状態(ASC)の活用
願望と創造性の技法
その他のエッセイ

【PART4 当スペース関係】
フリー・ゲシュタルトについて
セッションで得られる効果
なぜ、ゲシュタルトなのか
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心身一元論的なアプローチⅠ

①心身一元論 ―全体論

 

さて、思い起こしていただきたい。

 

私たちが、初めての人に会った時、

何をもって、

その人の人格や存在を感じとり、

「この人は、信用できる」とか、

「この人は、信用できない」とか、

評価したりしているのでしょうか?

 

私たちは、

その人の表情やしぐさ、声の調子、

全身から発散する雰囲気を感じとり、

その人を、評価しています。

 

さて、

人間の本質を見る時に重要なのは、

その人の「話している内容(コンテンツ)」では、

ありません。

 

その人の「話している状態(プロセス)」、 

その人の「話し方」と、

その調子・雰囲気に、

その人の本質が表れているのです。

 

このことを、

私たちは経験上、知っています。

 

 

◆自己一致と不一致

 

自己一致self-congruence

という言葉があります。

その人の、自己概念と実際の経験とが、

意識と無意識が、

一致している状態を示す言葉です。

 

よく自己一致している人は、

自然です。

私たちに、

心地良い波動を感じさせます。

自己一致とは、

自己の存在に、矛盾なく根ざすことによって、

可能となるものです。

 

一方、

私たちの多くは、

自己一致してところを色々持っていますが、

特に強く、自己一致していない人は、

その感じが態度に出ます。

 

その自己不一致、違和感、不協和音が、

からだの緊張、不自然さ、こわばりとして、

表に、雰囲気として、出ています。

どこか不調和な、

居心地の悪い波動を

感じさせます。

私たちが、

嘘をついている人を見破れるのは、

そのためです。

 

では、

この自己不一致は、

どこから来るのでしょう?

 

 

◆身体という表現の経路

 

この自己不一致は、

別に記した複数の自我(私)の、

葛藤状態から来ているのです。

 

内的葛藤は、

言葉(話している内容)と、

身体との不一致。

声の調子(言葉と音声の不一致)。

身体の雰囲気として表れるのです。

 

大概、人は、

自分が同一化している

自我を主体として、

その他の自我たちを抑圧しています。

 

しかし、抑圧された自我たちは、

身体という回路(チャンネル)を通して、

自己を表現して来るのです。

 

他人は

身体に現れた別の自我に、

分裂しているその人や作為に気づき、

違和感を感じるのです。

 

そのため、

自己不一致している、

その裂け目に、

その人の本質が、

見え隠れしているともいえます。

 

ところで、ゲシュタルト療法では、

このような心身一元的な人間理解を、

そのまま、具体的なセラピー技法としても、

活かしていきす。

 

クライアントの方が、

心身の統合進めていくための、

有効な介入の糸口として、

利用していくのです。

「ボディシグナルへの介入」

 







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複数の自我(私)について―心のグループ活動

 

さて、

ゲシュタルト療法のワーク、

実践経験を積んでいくと、

ある奇妙な事柄を

理解(実感)していきます。

 

ゲシュタルト療法の技法では、

有名な、

エンプティ・チェア(空の椅子)の技法

というものがあります。

 

さまざまな使用場面がありますが、

代表的な使い方に、

セッション(ワーク)の中で、

クライアントの中から出てきた(見出した)

複数の感情や思考を、

それぞれ切り分け、取り出して、

それぞれの、エンプティ・チェア(空の椅子)に、

置いていくというものがあります。

 

そして、

クライアントに、

実際に、その各椅子に座ってもらい、

それぞれの感情そのものに

成りきってもらいもらい、

それを表現してもらうものです。

 

さて、

筆者も最初、

実際にそれらを経験をしてみるまでは、

はたで見ていて、

そんなことをやって、

本当に効果があるのかと疑問に思いましたが、

実際にやってみると、

驚いたことに、

それぞれの空の椅子に座るごとに

それぞれの、

「生きた感情・感覚・意欲・記憶の有機的なセット」、

つまりは、

「自我状態 ego stateそのものが、

自分の内側から忽然と、

出現してくるのでした。

 

そのような、実体験を、

数多く繰り返して、

理解(痛感)できたのは、

私たちの自我とは、

「複数の存在である」

という事実でした。

 

私たちの自我の単一性とは、

意識面での表象機能であり、

その内実をつくる、

「自我そのもの」は、

その下方で、

次々と、入れ替わっているということでした。

 

精神分析や交流分析(TA)などでも、

心の機能の分化や、

自我状態 ego stateといって、

私たちの内部にある自我状態を区別しますが、

これは、単なる機能ではなく、

本当に、そのような自我状態が、

「人格的として」存在し、生きられている、

ということなのでした。

 

そしてまた、実際のところ、

この複数の自我は、

三つ(三区分)に留まるものではなく、

さまざまな状況や経緯により、

数限りない自我を創り出している、

ということなのでした。

 

つまり、心は、

「グループ活動」

をしている存在であるのです

 

………

 

さて実は、

私たちは、日常生活でも、

普段からこの事態に遭遇しています。

 

ある時、何かを決断して、

「これからは、絶対○をやるぞ!

「もう、こんなは絶対にしない!

などと、あれほど強く決断したのに、

翌日には、ケロッと忘れてしまいます。

 

しかし、

それは、忘れたのではなく、

違う自我()だから、

自分の経験(決意)ではないのです。

記憶はあっても、

その自我にとっては、

自分の経験ではないため、

感情的な動機付けがないのです。

 

上に図にしましたが、

「自我A」があることを、強く決めても、

いざ実行するときは、

別の「自我C」になっており、

なんとも、気持ちが乗らないということに

なっているというのは、

よくあることです。

 

図にあるように、

「自我は複数」の存在です。

「意識」が、都度都度、

各自我に同一化することで、

「私」の、

見せかけの同一性や連続性が、

保たれているのです。

 

そして、「自我」とは、

一般のイメージと違って、

必ずしも「意識」ではなく、

大部分が、

「無意識」の領域にある、

ということです。 

「意識」に同一化されて、

各自我は、

はじめて「私」となりますが、

大部分を無意識の状態として、

棲息しているということです。

 

ゲシュタルト療法では、

技法的には、

エンプティ・チェア(空の椅子)の技法などを使い、

無意識にある各自我を、

意識の下に取り出し、

自我間の対話や、

情報の交流を促していきます。

そのことにより、、

各自我間の葛藤や分裂を、

統合していくこととなります。

 

(※1)

ちなみに、原理面を、

補足説明しますと、

上記のエンプティ・チェア(空の椅子)の技法で、

それぞれの椅子に座ることによって、

それぞれの自我状態が、出現してくるというのは、

各椅子と、各自我状態との間に、

催眠療法でいう、

「アンカリング」が施されていて、

ヒモづけられているためです。

(→「用語集」)

 

(※2)

「複数の自我」という用語は、

当スペースが便宜的に使っている言葉で、

ゲシュタルト療法の、

教科書的用語ではないので、

その点、ご留意ください。




※気づきや統合、変性意識状態(ASC)への

より総合的な方法論については、拙著↓
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および、
『砂絵Ⅰ 現代的エクスタシィの技法 心理学的手法による意識変容』
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やり残した仕事 未完了のゲシュタルト

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◆「やり残した仕事」 Unfinished Business

ゲシュタルト療法には、「Unfinished Business やり残した仕事」という言葉があります。私たちが人生の中で、やり残した事柄のことです。同様の概念で「未完了の体験」「未完了のゲシュタルト」というものがあります。フリッツ・パールズという人は、くだけたフザケた表現が好きな人なので、そのような言い方をしたのです。

「ゲシュタルトの形成と破壊のサイクル」のところで見たように、ゲシュタルト療法では、欲求の単位としてのゲシュタルト(かたち)の充足をとても重視します。
欲しい欲求の単位ごとに、私たちの欲求は充たされ、満足し、完了していくのです。
(或る大きな欲求の中に、小さな欲求の単位が沢山あるということもあります)

例えば、振り返って思い出してみてください。
生活の中で、ふと気がつくと、理由はわからないけど、「なんか気持ちがモヤモヤしてるなぁ」というような状況があると思います。
それをそのままにしておくと、長時間、モヤモヤは残っています。
しかし、「なんでモヤモヤしているのかな?」と、そのモヤモヤに注意を向けて、じっくり感じていると理由がわかってきます。
「少し前に、或る人に言われた一言が気になって、モヤモヤしてたんだ!」
「少し前に、見かけたネット記事が、不愉快でモヤモヤしてたんだ!」と。
そして、そのことに気づくと、モヤモヤは無くなります。もしくは弱まります。
原因となった欲求不満のゲシュタルト(かたち)に気づくと、そのゲシュタルト(かたち)に閉じ込められていた感情エネルギーが解放されるので、スッキリするのです。
そのゲシュタルト(かたち)と欲求不満との結合が、問題の核心なのです。

満足していない欲求(感情)、欲求不満というものは、そのゲシュタルト(かたち)とともに、身を隠して残っているということです。
そして、「完了していない incomplete」「充足していない」ゲシュタルトは、とても重大な意味を持つと考えられるのです。

ところで、この関連で、フリッツ・パールズは、「通俗的な」トラウマ(心的外傷)の理解に疑問を持ちました。
もし過去において、たとえ、強い苦しみの
体験があったとしても、もし本人が、その体験を充分に受け入れて、ゲシュタルトとして消化(完結・完了)できているのであれば、それはトラウマ的にはならないと考えたのでした。

「セラピーで大切なことは、今までに何をしてきたかということではなく、何をしてこなかったかということである。何をしてきたかは完結してしまったことであり、充足と統合を通じて自己形成に取り入れられたものである。きちんと完了していない未完結状況というのは環境から自己への取り入れに失敗したものであり、現在まで残っている過去の遺産とも言えるものである。」
(パールズ『ゲシュタルト療法』倉戸ヨシヤ訳、ナカニシヤ出版)

トラウマ的になるというのは、出来事の体験ではなく、その体験がゲシュタルトとして完結(完了)できなかった場合に、過度の欲求不満とともにゲシュタルト(かたち)が残ってしまい、トラウマ的になると考えたのでした。つまり、未完了の体験、未完了のゲシュタルトこそがトラウマ的になると考えたのでした。

そして、未完了の体験や未完了のゲシュタルトというものは、欲求不満の感情的な強さを、今も当時のままの強さで持ち続けているものなのです。

人生のその時に、
「伝えられなかった言葉」
「表現できなかった感情」
「とれなかった行動」
が、
強い感情、欲求不満の塊として、今もここに存在しているのです。

「やり残した仕事」「未完了の体験」とは、喉に刺さった魚の骨のように、心の中にありつづけ、似たような人生の場面(ゲシュタルト)で、私たちの激しく苦しめ、刺激し、行動を妨げる煩わしいものであるのです。

また、私たちの生体(魂)にとって、「やり残した仕事」「未完了の体験」は、肉中に刺さった棘のようなものです。
そのため、私たちの潜在意識は、(棘を抜くために)人生のあらゆる機会や似たような場面をとらえて、この「未完了の体験」を完了しようと企んでいます。
似たような場面の中で、「あの時、満たされなかった欲求(感情)」を今回は満たしてやろうと、リベンジ(復讐)してやろうと目論んでいるのです。
また、むしろ、わざわざ似たような場面を再現して、そのリベンジ(復讐)を果たそうとしているのです。

例えば、父親に愛されなかった女性が、大人になって、わさわざ自分を愛してくれない(父に似た)男を探してきて、その男に愛してもらおうとしている(復讐を果たそうとしている/未完了の体験を完了しようとしている)ケースなどは、とてもよくあるケースといえます。残念ながら、そのリベンジ(復讐)は必ず失敗するのですが…。
このように、私たちの潜在意識は、自分の「やり残した仕事」をリベンジするためのさまざまな場面を創り出そうとしているのです。引き寄せようとしているのです。
そのため、私たちは、自分が「嫌だなぁ」と思うパターン(人間関係、出来事)にかぎって、繰り返し遭遇するという事態になっているのです。
これが、本当のところの「引き寄せの法則」なのです。
その結果として、私たちの人生の苦痛や生きづらさが、つくり出されているのです。

◆「やり残した仕事」「未完了」を完了させるセッション

パールズは、指摘します。

「神経症の人は、過去の未完結なことが邪魔をするので、現在に十分に関わることができない人たちである。問題は『今―ここ』にあるのに、気持ちが他のところに行っているので、目の前の問題に集中できないのである。セラピーを通じて、クライエントは現在に生きることを学ばねばならないわけで、セラピーでは、クライエントが今までやったことのないことの練習をすることとなる。」(パールズ、前掲書)

さて、ゲシュタルト療法のセッション(ワーク)の中では、私たちを苦しめるこの「やり残した仕事」「未完了のゲシュタルト」「未完了の体験」を完結・完了させるということを行なっていきます。

「ゲシュタルト療法は、言葉や解釈のセラピーではなく、経験的なセラピーである。我々はクライアントに過去の記憶の中にある問題やトラウマを再体験するように勧める。もしもクライアントが過去の問題のノートを閉じたいのなら現時点において閉じなければならない」(パールズ、前掲書)

セッションにおいては、さまざまな技法を使って、その欲求不満のゲシュタルトを解放する作業を行なっていきます。
丁寧に心身感覚などを再現していき、問題の芯にある感情(欲求)を解いていきます。その結果、未完了の体験/ゲシュタルトが無くなっていくということが起こってくるのです。
その結果として、私たちは、妨害や制限を感じることのない、十全な自己というものを感じることができるようになっていきます。自由自在な自分を、生きられるようになっていくのです。
そのようこと体験した人たちは、皆「自分の人生が一変した」と言います。
セッション(ワーク)においては、実際にそのようなことが起こってくるのです。

 

【ブックガイド】
ゲシュタルト療法については、基礎から実践までをまとめた拙著
『ゲシュタルト療法 自由と創造のための変容技法』
をご覧下さい。

気づきや統合、変性意識状態(ASC)へのより総合的な方法論は拙著↓
入門ガイド
『気づきと変性意識の技法:流れる虹のマインドフルネス』

および、
『砂絵Ⅰ 現代的エクスタシィの技法 心理学的手法による意識変容』
をご覧下さい。




 

 

気づきの3つの領域 エクササイズ

◆気づき awarenessとは

 

ゲシュタルト療法では、

〈気づき〉 awareness

の持つ機能(力)を、

とても重視しています。

 

この点が、

ゲシュタルト療法を、

単なる心理療法を超えて、

禅や各種の瞑想流派に

近づける要素でもあります。

 

これは、

〈気づき〉という機能が、

通常の注意力や意識に対して、

メタ(上位)的な働きを含め持ち、

それらを統合していく力を、

持っているからです。

 

「『気づく』ことは、

クライエントに自分は感じることができるのだ、

動くことができるのだ、

考えることができるのだということを

自覚させることになる。

『気づく』ということは、

知的で意識的なことではない。

言葉や記憶による『~であった』という状態から、

まさに今しつつある経験へのシフトである。

『気づく』ことは意識に何かを投じてくれる。」
(パールズ『ゲシュタルト療法』倉戸ヨシヤ訳、ナカニシヤ出版)

 

気づきの力は、

自分が意識している体験自体に、

気づくことができるのです。

 

ゲシュタルト療法では、

この気づく能力を高めることで、

統合的なプロセスを進め、

治癒過程を深めていくのです。

 

「『気づき』は常に、現在に起こるものであり、

行動への可能性をひらくものである。

決まりきったことや習慣は学習された機能であり、

それを変えるには

常に新しい気づきが与えられることが必要である。

何かを変えるには別の方法や考え、

ふるまいの可能性がなければ変えようということすら考えられない。

『気づき』がなければ新しい選択の可能性すら思い付かない。

『気づき』と『コンタクト』と『現在』は、

一つのことの違った側面であり、

自己を現実視するプロセスの違った側面である。」
(パールズ『ゲシュタルト療法』倉戸ヨシヤ訳、ナカニシヤ出版)

 

パールズは、

「自覚の連続体 awareness continuum」

とも呼びましたが、

意図的な気づきの力は、

それだけでも、

心の治癒を促進する、

大きな効力を持つものです。


 

気づきの3つの領域

 

さて、

ゲシュタルト療法では、

気づきがとらえる3つの領域を、

区分しています。

 

通常、人は、

無自覚(無意識)のうちに

注意力を、

これらの各領域に、

さまよわせています。

 

ゲシュタルト療法では、

自分の注意力が、

どの領域にあるのかに、

瞬間瞬間、

気づくことによって、

また、

各領域にバランスよく注意を向け、

気づけるようになることを通して、

統合のプロセスを、

促進していきます。

 

3つの領域とは、

上に図にしたように、

外部領域、内部領域、中間領域と呼ばれます。

それぞれは、以下を意味しています。

 

外部領域

 →目の前や周りの環境、外部に実在している物質世界、

  自分の皮膚の外の世界を、直接知覚する五感の領域です。

 

内部領域

 →自分の皮膚の内側の領域です。

心臓の鼓動、動悸、胃の痛み、血流、体温、興奮等々、

内的な感覚です。情動が働く領域でもあります。

 

中間領域

 →思考と空想の領域です。

  外部でも内部でもない世界です。

諸々の想念(心配、不安、希望、意欲、妄想)の

るつぼです。

 

ゲシュタルト療法では、

「ゲシュタルトの形成と破壊のサイクル」で見たように、

環境に生きる生き物として、

内部への「引きこもり」から、

外部への「接触(コンタクト)」までの、

欲求行動を、

速やかに、とらわれなく、

自由に実行できることを、

健全な能力と見ます。

 

しかし、人は、

さまざまな要因(トラウマや癖)により、

偏った領域に、

「注意力」を、

集めがちです。

 

たとえば、外部領域の経験で、

傷つきやトラウマの体験を持った人が、

中間領域(空想や思考の領域)に、

引きこもりがちになってしまうというのは、

常識的な感覚からいっても、

納得されることでしょう。

 

そして、

自分が、無自覚に、

どの領域に、

「意識」や「注意力」を、

向けているかに、

〈気づき〉を持てるだけでも、

その偏差に対する、

統合(修正)効果となるのです。

 

 

気づきのエクササイズ Exercise

 

さて、そのため、

ゲシュタルト療法では、

以下のような、

「気づきのエクササイズ」を、

行なっていきます。

 

このことを通して、

自分の「意識」や「注意力」の、

偏りの持ち方に

気づいていくのです。

 

ABの二人が、

一組になって行なう、

エクササイズです。

 

1人が、

相手の人に、

問いかけを続けます。

(数分間つづけます)

問いかける側が、

応える人の答えを、

メモしていきます。 

 

A: 「あなたは、今、何に、気づいていますか?

B: 「私は、今、○○に気づいています」

 

Bの答えの例としては、

 

「私は今、

 あなたの声のかすれに、気づいています」 

 →外部領域

私は今、

 首の痛みに気づいています」 

 →内部領域

私は今、

 明日の会社の仕事を考えているのに気づいています」 

 →中間領域

等々がありえます。

 

これを、

数分続けます。

 

エクササイズ終了後、

振り返りの中で、

それらの回答(気づき)が、

3つの中の、

どの領域に、分布しているかを、

お互いに見ていきます。

 

人によって、

ある領域が、多かったり、

ある種の傾向性があったりと、

自分の癖やパターンが、見えてきます。

 

ゲシュタルト療法では、

このパターンの偏りが、

心の可動域をせばめたり、

充分な体験を阻害したりと、

能力の制限にもなっていると考えます。

 

この部分を、

ゲシュタルト療法では、

ワーク(セッション)などを通して、

心の可動域が広がるようにします。

 

この能力は、

頭(中間領域)で理解しただけでは、

なんの解決にもなりません。

 

日々の気づきと、

ゲシュタルト療法的な実践の中で、

3つの領域に、

自在に〈気づき〉をめぐらせる訓練の中で、

開放されていくものなのです。

 

現代人の場合、特に、

「中間領域」(空想領域/心配/妄想)への耽溺が、

大きな特徴として上げられます。

思考過多(中毒)なのです。

 

ゲシュタルト療法のアプローチは、

この現代人の中間領域志向についても、

強い解毒作用を発揮します。

この点などが、などとの共通点ともなっているのです。

 

ゲシュタルト療法普及の初期に、

その実存主義と禅の風味を強調した時代に、

クラウディオ・ナランホが示した、

ゲシュタルト療法の基本姿勢は、

このあたりの感覚を、よく表現しています。

ゲシュタルト療法の基本姿勢


関連記事

→気づきawarenessと自己想起self-remembering


 


※気づきや統合、変性意識状態(ASC)への

より総合的な方法論については、拙著↓
入門ガイド
および、
『砂絵Ⅰ 現代的エクスタシィの技法 心理学的手法による意識変容』
をご覧下さい。




 

ゲシュタルト形成と破壊のサイクル

ゲシュタルト療法では、「人間」のとらえ方において、生体(生物)としての有機的「全体性」に注目します。
人間の活動は、全体として生物的な首尾一貫性を持っているということです。
そして、そこには生体の統合機能や、統合的な感覚、
生き生きとしたダイナミズムが存在しているということです。
ここでは、そのポイントのひとつとなる欲求のゲシュタルト指向をとりあげてみたいと思います。

別のセクションで見ましたが、「ゲシュタルト」とは、ドイツ語で「形」を意味し、それは「分割できない固有の形」「ひとまとまりの形」を指しています。
ゲシュタルト gestalt とは何か

ところで、私たちの欲求とは、或る「ゲシュタルト(図)」への欲求として存在しています。
欲求とは、対象への欲求だからです。
私たち
は、このゲシュタルトの単位で欲求というものを持っているのです。
そして、いつも、さまざまなゲシュタルトへの欲求を充たそうとしているのです。
ゲシュタルト療法では、人間が持つこのゲシュタルトへの欲求(感情、欲望)のあり様や、その欲求不満に注目します。下に、サイクルの図表をあげました。これはゲシュタルト療法の世界では「ゲシュタルトの形成と破壊(解消)のサイクル」「気づきのサイクル」「体験のゲシュタルトサイクル」として知られているものです。

この図は、人間(生物)に生ずる欲求とそれを充たすための一連の行動を、循環(サイクル)として表現したものです。たとえば、肉食動物の捕食行動をイメージすると分かりやすいでしょう。肉食動物が獲物を見つけて捕らえるプロセスです。この図は一番下の「引きこもり」を起点に、時計回りに回っていきます。

(1)引きこもり →引きこもりは、生物になんの欲求衝動も生まれていないニュートラルな状態です。たとえば、眠っている状態です。

(2)感覚 →生物が何か気配(情報)をとらえようとしている感覚的段階です。生物は、危険や獲物を感覚を澄まして、世界から情報を感覚的にとらえています。

(3)気づき・図になる →獲物を発見する。獲物に気づく段階です。この時、獲物が「対象=図」となり、風景が「背景(地)」となり背後に消えます。この段階で「ゲシュタルト」の形成されるのです。獲物を明確にゲシュタルトとして気づきます。

(4)興奮・衝動 →動化と訳されます。ゲシュタルトが生まれると同時に、図(獲物)への強い衝動が生じます。興奮が高まり、行動へつながる内的な動きが高まります。

(5)行動 →実際に、衝動を行動に移します。実際に獲物に近づきます。

(6)接触 →獲物(相手)に、実際に攻撃することで、物理的な接触(コンタクト contact)が生じます。

(7)充足/統合(integration) →獲物を捕らえたこと、食することで欲求が満たされます。充足します。獲物が吸収され体内化されます(異物が統合されます)。目的を達成し役目が終わった「ゲシュタルト(図)」は解消(破壊)されて無くなります。

(1)引きこもり →捕食に満足した動物は、静かに引きこもります。元のニュートラルな状態に戻ります。サイクルは完了します。待機の状態に戻ります。次のサイクルを待ちます。

このように、(3)で形成されたゲシュタルトが、(7)の欲求の満足により、解消(破壊)されるため、この図が「ゲシュタルトの形成と破壊のサイクル」と呼ばれているのです。

さて、ここでは外部世界に対する獲物の捕食行動を例に取りましたが、環境の中で生きる生物は、このようにして欲求の外部への働きかけと充足(統合)をサイクルとして回しています。
生物のプロセスとしては生きるために、外部から栄養を摂り込み吸収して、自己を成長させるシステムです。その過程でゲシュタルトの形成と破壊のサイクルを回しているのです。

ところで、パールズたちは、このように生物が欲求をもって世界と関わるシステムを、人間の「心理面」「心の体験」でも同様のものであると考えたのでした。
心も、外部世界のもの(新しいもの・新しい体験・異物)をとらえて吸収し、体内化(統合)しているというわけです。
そして、環境との格闘体験を通して「自己」をダイナミックに生成させていくモデルを組み立てていったのです。
ゲシュタルト療法が、自己と環境の間にある「境界 boundary 」を重視する理由です。

パールズも影響を受けた、実存的な哲学者として知られるハイデガーは、人間の存在(「現存在」)を「世界内存在」と一語で定義しましたが、そのように環境と一体化した存在として人間を、ゲシュタルト療法でも考えているのです。

そして、ゲシュタルト療法では、このような欲求対象とその吸収統合を、「図」の形成と欲求充足の完了行為として、「ゲシュタルトの完了 complete」という概念としてとても重要視しているのです。

未完了のゲシュタルト(未完了の体験)

さて、上記の「ゲシュタルト形成と破壊のサイクル」ですが、普通に考えてみても、私たちが人生でいつも欲しいものが手に入ったり、欲求を充足できるとはかぎりません。ゲシュタルトへの欲求が完了するとはかぎらないわけです。欲求を充足できないと、欲求不満に陥ります。
上記の動物の捕食行動も、獲物として形成されたゲシュタルトが「得られなかった」とすると、生体は欲求不満に陥ります。しかし、おそらく動物の場合は、それが後を引くケースは少ないと類推されます。
当然、未完了の体験や未完了のゲシュタルトは、経験内容や欲求(感情)の強さから、軽度から重度までの幅を持ちます。多くの場合は、欲求充足が充分でなくとも、ゲシュタルトは諦められて解消されていくことになります。

しかし、ゲシュタルトへの強い欲求が解消されずに、そのまま残ってしまう場合もあります。
ゲシュタルト療法では、このようなゲシュタルトへの強い欲求が完了していない状態を「未完了 incomplete の体験」として重視します。欲求が完了していないゲシュタルトという意味で「未完了のゲシュタルト」と呼びます。
そして、人生の経験の中において、とりわけ強い欲求(感情)が充足されないで残ると「とりわけ強い」未完了の体験」になると考えました。それがトラウマ的になると考えました。
そして、それが人を苦しめ、人が自分の人生を充分体験したり、活動するのを妨げるものだと考えました。また、神経症的症状を現すようになると考えたのでした。
「Unfinished Business やり残した仕事 未完了の体験」

そのため、セッション(ワーク)の中では、まず第一に、クライアントの方の中に生き続けている「未完了のゲシュタルト」「未完了の体験」を完了(充足)/解消させていくことを狙いとします。

そのことを通して、クライアントの方は、葛藤に煩わされる(妨げられる)ことなく、より十全に人生を感じとり、味わっていくことができるようになると考えるのです。

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