フリー・ゲシュタルトな気づき

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2018年02月

『生物都市』と鉱物的な変性意識状態(ASC)

さて、諸星大二郎氏といえば、
昔はカルト作家?であり、いまや、
日本を代表する奇譚漫画家
ともいえる存在です。

その彼が、
1974年に手塚賞をとった短編、
『生物都市』は、
昭和の子どもたちの心に、
強烈な刻印を残したトラウマ漫画でした。

内容は、探査宇宙船が、
木星の衛星イオから運んできた、
謎の感染性の何かにより、
人間(生物)と金属類とが、次々と融解し、
融合していってしまうという物語です。

物語の舞台は、日本の地方都市ですが、
やがて、全世界が、抗しようもなく、
すべて溶けあってしまうだろうという事態を、
奇怪な造形と筆致で描いたものでした。

無機物質と生物が融合してしまう、
異形な映像の薄気味悪さもさることながら、
その意識や心までもが、
融解した集合体に、
飲まれていってしまうという事態が、
人間的で文化的な価値観の一切を、
洪水のように押し流してしまうかのようで、
怖ろしくも感じられたのでした。

一方、夢の世界への郷愁にも似た、
その鉱物的な世界に対する、反感と魅惑が、
両義的な感情として、心に残されたのでした。

ところで、このような、
世界が、鉱物化していってしまう物語や、
一見生物に見えない無機物質が、意識体であるという話、
惑星が、単一の意識体であるというような話は、
SF小説の世界では、
比較的、見受けられるテーマともなっています。
そこには何か、
私たちの「意識」や「文化」の曖昧さに対する、
問題提起があるようにも感じられます。

さて、一方、
シャーマニズムの伝統などに、目を向けると、
そこでは、鉱物や石などを、
私たちの同類と考え、
「長老」と見なすような世界観も、
たしかに存在しているのです。
石や鉱物たちは、
いにしえから大地に存在している、
大先輩というわけです。
 
そこには、
私たちの心の基層の空間に、
鉱物的なものとの親和性を生み出す、
何か元型のような傾向性が、
存在しているかもしれない可能性を
うかがわせるものでもあるのです。

ところで、
変性意識状態(ASC)にまつわる、
さまざまな意識の様態を見てみました。

実際、変性意識状態(ASC)における、各種の事例は、
この親和性の背後にあるものについても、
ヒントを与えてくれる場合があるのです、

スタニスラフ・グロフ博士は、
膨大かつ多様な変性意識状態(ASC)の体験を、
体系的に整理・研究していますが、
その『深層からの回帰』(青土社)には、
次のような体験報告も再録されています

これは、
あるLSD体験セッションの被験者の報告ですが、
変性意識を通して見た、
鉱物的状態についての、
大変興味深い洞察ともなっているものです。

ここで、被験者は、自分自身を、
琥珀や水晶、ダイヤモンドなどの鉱物と、
次々に、深く同一化していくという、
奇妙な体験を得ていったのでした。

「セッションのこの時点で、
時間は止まっているようだった。
突然自分が琥珀の本質と思われるものを
体験しているのだ、
という考えがひらめいた。

視界は均質な黄色っぽい明るさで輝き、
平安と静寂と永遠性を感じていた。
その超越的な性質にもかかわらず、
この状態は生命と関係しているようだった。
描写しがたいある種の有機的な性質を帯びていたのだ。
このことは、
一種の有機的なタイムカプセルである琥珀にも
同じく当てはまることに気づいた。

琥珀は、鉱物化した有機物質―
しばしば昆虫や植物といった有機体を含み、
何百万年もの間、
それらを変化しない形で保存している樹脂―なのだ。

それから体験は変化しはじめ、
私の視覚環境がどんどん透明になっていった。
自分自身を琥珀として体験するかわりに、
水晶に関連した意識状態につながっている
という感じがした。

それは大変力強い状態で、
なぜか自然のいくつかの根源的な力を
凝縮したような状態に思われた。

一瞬にして私は、
水晶がなぜシャーマニズムのパワー・オブジェクトとして
土着的な文化で重要な役割を果たすのか、
そしてシャーマンが
なぜ水晶を凝固した光と考えるのか、理解した」

やがて、この体験は、
水晶からダイヤモンドへと移っていきます。

「私の意識状態は別の浄化のプロセスを経、
完全に汚れのない光輝となった。
それがダイヤモンドの意識であることを
私は認識した。

ダイヤモンドは化学的に純粋な炭素であり、
われわれが知るすべての生命が
それに基づいている元素であることに気づいた。
ダイヤモンドがものすごい高温、高圧で作られることは、
意味深長で注目に値することだと思われた。

ダイヤモンドがどういうわけか
最高の宇宙コンピュータのように、
完全に純粋で、凝縮された、抽象的な形で、
自然と生命に関する全情報を含み込んでいるという
非常に抗しがたい感覚を覚えた。

ダイヤモンドの他のすべての物質的特性、
たとえば、美しさ、透明性、光沢、永遠性、不変性、
白光を驚くべき色彩のスペクトルに変える力などは、
その形而上的な意味を
指示しているように思われた。

チベット仏教が
ヴァジュラヤーナ(金剛乗)と呼ばれる理由が
分かったような気がした
(ヴァジュラは『金剛』ないし『雷光』を意味し、
ヤーナは『乗物』を意味する)。
この究極的な宇宙的エクスタシーの状態は、
『金剛の意識』としか表現しようがなかった。

時間と空間を超越した純粋意識としての
宇宙の創造的な知性とエネルギーのすべてが
ここに存在しているように思われた。

それは完全に抽象的であったが、
あらゆる創造の形態を包含していた」
グロフ『深層からの回帰』菅靖彦、吉田豊訳(青土社)

さて、とても興味深い体験報告ですが、
例えば、精神病圏といわれるものの背後などでも、
このような元型的な力(意識)の作用が、
どこかで働いているのではないかという、
疑問を持つことも可能なわけです。

統合失調症に見られる、ある種の特徴などは、
そのような鉱物的なものとの親和性、共振性を、
強く感じさせるものでもあるからです。
また、多種多様なアウトサイダー・アートの造形などからも、
そのような質性が、感じ取られるものとなっているです。
その硬質性、透明性、反復性、無限性などは、
しばしば、原質的で、鉱物的な風景に、
私たちを、誘うものでもあるのです。

そのように考えると、
これらの傾向性は、
それほど奇異なものではなく、
私たちの精神の基層に根ざした、
何らかの表現形態であると、
考えることもできるわけです。

そして、
シャーマニズムの伝統の中にいる人たちも、
また、私たちの身近にいる、
鉱物嗜好者たちなども、
鉱物に心身を投影することを通して、
その中に、
何らかの意識の基層的な形態を、
感じ取っている可能性が、
考えられるわけです。

『生物都市』が、
私たちの中に引き起こした、
不思議なざわめきは、
そのような事柄を考えさせるのです。


※気づきや統合、変性意識状態(ASC)への
より総合的な方法論については、拙著↓
入門ガイド
および、
『砂絵Ⅰ 現代的エクスタシィの技法 心理学的手法による意識変容』
をご覧下さい。



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【PART1 Basic】ゲシュタルト療法
ゲシュタルト療法【基礎編】
ゲシュタルト療法【実践・技法編】
ゲシュタルト療法【応用編】
「セッション(ワーク)の実際」

【PART2 Standard】
気づきと変性意識の技法 基礎編
変性意識状態(ASC)とは
「英雄の旅」とは
体験的心理療法
NLP 普及・効果・課題
禅と日本的霊性
野生と自然

【PART3 Advanced】
気づきと変性意識の技法 上級編
変性意識状態(ASC)の活用
願望と創造性の技法
その他のエッセイ

【PART4 当スペース関係】
フリー・ゲシュタルトについて
セッションで得られる効果
なぜ、ゲシュタルトなのか
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サブモダリティの拡張 NLP(神経言語プログラミング)とビートルズ その2

◆サブモダリティの改変

さて、NLP(神経言語プログラミング)において、
サブモダリティの改変という技法が、
そのセッション(ワーク)で、
使われることがあります。

サブモダリティ(下位様相)とは、
モダリティ―視覚、聴覚、触覚などの、
各表出(表象)体系を構成する、
下位の構成要素ともいえます。
例えば、視覚においては、
その映像を構成する、
明度、鮮明度、カラーor白黒、サイズ、コントラスト、距離、位置、
などが、サブモダリティです。
喩えですが、テレビのツマミによって、
変化するかのような各属性、
調節が可能な要素たちです。

実際のNLPのセッション(ワーク)における使い方でいえば
クライアントの方の、
或るネガティブな体験には、
その体験内容と結びついた(フレーム化された)、
サブモダリティがあると考えます。

そのため、
フレーム化によって、
望ましくない体験と結びついた、
サブモダリティを改変することで、
望ましい状態に創り変えるのが、
サブモダリティに焦点化した技法となります。
(フレーム自体を改変するのは、
リフレーミングという技法になります)

そのように、
サブモダリティは、
私たちの経験内容を記憶し構成する、
基本的な素材となっていると、
考えられるのです。


◆ビートルズ『イン・マイ・ライフ』とサブモダリティ

さて、以前、
才能における相補性ということで、
NLPとビートルズを例に出したので、
今回も、ビートルズにまつわる個人的な事例を、
エピソードとして使ってみたいと思います。

ビートルズのアルバム、
『ラバー・ソウル Rubber Soul』の中に、
『イン・マイ・ライフ In My Life』という、
名曲があります。

ジョン・レノンが、
ヴォーカルがとっている曲で、
本人のコメントもあり、
ジョン・レノンの曲とされているものです。

筆者も、昔から、
好きな曲ではあるのですが、
どこか感覚的に、
違和感を覚えてもいたのです。

というのも、
筆者にとって、
ジョン・レノンの曲は、
曲の由来(根っこ)が、
「すみずみまで(水晶が澄みきったように)分かる」
という感覚があるからです。
しかし、
『イン・マイ・ライフ』だけは、
素晴らしい曲で、好きな曲ではあるものの、
「どこか、分からない感じ」
というのがあったからでした。

しかし、後年、
ポール・マッカートニーが、
『イン・マイ・ライフ』は、
自分が書いた曲だと、発言していることを知って、
長年の謎が氷解したのでした。
ポールは、曲の構造からしても、
自分の曲だと証明できる、
ジョンが忘れただけだ、と言っているようですが、
さもありなんという感じなのです。

さて、それでは、
筆者の中で、
何がジョンの曲で、何がポールの曲だと、
感じ分けていたのでしょうか。

それこそが、曲を聞いた時に、
筆者の中で、自然に組成される、
サブモダリティの質性(特徴)だったのです。

筆者個人にとって、    
ジョンとポールの曲は、
サブモダリティとしては、
決定的に違うものでした。
ジョンの曲の、密度や屈曲と、
ポールの曲の、のびやかさと明るさとは、
明確に違うサブモダリティなのでした。
無意識で感じ取られる、
微細な様相においてもそうなのでした。
そして、個人的には、ジョンの曲は、
感覚の近さからか「根から分かる」感じがしたのでした。
一方、ポールの曲には、
どこか、曲の由来(根っこ)が、
「分からない」感じがあったのでした。
そして、それがどこか神秘的な質性でもあったのでした。

『イン・マイ・ライフ』は、
ジョンの曲だと信じ込んでいたため、
実際に組成されるサブモダリティとの間に、
齟齬や違和感が生じていたのでした。

ところで、
音楽を聴くときには、
曲の中に、心身を投影して、
その内的体験として曲を感じ取るわけですが、
その風景として、
サブモダリティが組成されるわけです。

そして、
その曲によって組成されるサブモダリティと、
自分の元々の、内的な経験(趣味)を響き合わせて、
合う合わないとか、好き嫌いとかを、
判断している訳です。
また、「分かる」などという幻想を、
創り出しているわけなのです。

しかし、サブモダリティの、
この内的一貫性を把握しておくことは、
対象物を理解する上での、
トラッキング(追跡)・システムとしても、
重要な働きをしてくれるものなのです。
『イン・マイ・ライフ』の事例は、
そのような意味でも、
興味深い事例となったのでした。

ところで、
多くの人にとっても、
好きな趣味の中での、
各種の感覚情報の差異は、
大体、サブモダリティの一貫性として、
把握されているものなのです。


◆投影された身体と、サブモダリティの拡張

さて、
の中では、
自らの身体の投影を通して、
私たちが世界をとらえ、
構成していく様子を記しました。    

メルロ=ポンティのいう、
「画家は、
その身体を世界に貸すことによって、
世界を絵に変える」
『眼と精神』木田元他訳(みすず書房)
という言葉などを素材に、
そのことについて見ました。

そのような身体の投影の結果として、
私たちは、自己の世界の表象を、
作っているのです。

ところで、
このような身体投影の結果として、
内的表象を作る際にも、
強度の差異は各種あるものの、
サブモダリティも、
同時に、生成・組成されているのです。

生活の中で、さまざまな事柄を、
身体の投影を通し、
物事を経験・学習する中で、
体験内容のコンテクスト化やフレーム化も生まれれば、
基礎素材としての、
サブモダリティの生成と編成も、
行なわれているわけです。

そのため、生活史の中で、
何らかの問題的なフレームが発生した場合に、
問題あるサブモダリティも生まれてしまうのです。
それが、前段で見た、
NLPのセッション(ワーク)による
サブモダリティ改変のアプローチにも、
つながるわけです。

ところで、実際のところ、
サブモダリティの質性自体は
価値中立的であり、
それ自体は、良いものでも悪いものでも、
ありません。
強烈なサブモダリティが、
問題であるということではないのです。

問題なのは、
サブモダリティと、
否定的(悪しき)体験との、
フレーム化・コンテクスト化なのです。
この関係づけを改変するのが、
リフレーミングといわれる技法です。

また逆に、芸術などでは、
強烈なサブモダリティの方が
効果としては、
有効だったりもするのです。

さて、ところで、
私たちの普段の生活における
創造的な側面に目を向けてみると、
例えば、
何か貴重で冒険的な体験をした場合などには、
私たちの身体感覚に深い刻印が刻まれ、
身体感覚が拡張したかのような実感を、
得ることになります。
また同時に、
その経験内容(領域)を表象するサブモダリティも
改変(拡張)された感じがします。
これは、サブモダリティの「創造的な側面」です。

そのため、
新しい未知の体験を得て、
身体感覚が拡張したときには、
そのサブモダリティをしっかりと
感覚と脳に定着させていくと、
その経験が、学習として深まり、
自分の中でより、再コンテクスト化、
再フレーム化がはかどります。
高次階層の学習も進みます。

一方、
積極的で能動的な身体の投影を通して、
サブモダリティが、
わずかに拡張されるような
経験を持つこともあります。

芸術における体験などが、
それです。

その際、私たちの内側では、
実際に、
身体やサブモダリティが拡張され、
改変される体験とも、
なっているのです。

実際、
芸術におけるエネルギッシュで、
積極的な取り組みの中では、
(創作ばかりでなくとも)
自分自身の既存の身体感覚や、
固定化したサブモダリティを、
流動化させ、解放させていく効果があります。

慣れていないジャンルの芸術に、
積極的、意欲的に身体を投影して、
内的に把握しようとする努力は、
私たちの持っていた、
既存のサブモダリティや内的な表象を、
柔軟にして、
解放・拡張していく訓練にもなるのです。
それは、
多くの身体訓練と、
同様の働き方をするのです。

そのように、
私たちの身体感覚とサブモダリティは、
深く同期しているというわけなのです。

それがために、
スポーツ・トレーニングにおいても、
コーチングにおいても、
ヴィジュアライゼーションや、
イメージ・トレーニングが、
実際的・実利的な効果を、
発揮するというわけなのです。
ここには、
興味深い心身の領域が、
大きくひろがっているのです。


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階層を超える創造の飛躍 パブロフの犬か、ベイトソンのイルカか


さて、前回、
映画『攻殻機動隊』ゴーストGhostの変性意識
を語る中で、
ベイトソンの学習理論について、
触れました。

そこでは、
学習次元の階層を超えるような、
創造的な飛躍が起こる場合があることについて、
少し記しました。

このような階層を超える学習(創造性)について、
ベイトソンは、
『精神と自然』(新思索社)の中で、
興味深い事例を挙げているので、
今回は、そのことについて、
見てみたいと思います。

イルカの事例です。

或るイルカショーでは、
「毎回、イルカに『新しい芸』を教えることができる」
ということを売り物にすることを考えたそうです。

つまり、毎回、そのステージ(セクション)で、
イルカが、或る「新しい芸」をやり、
「そのことを覚えた」とイルカが再現する、
という高度な芸です。
イルカ的には、一日の中で、そのステージごとに、
毎回、新しいしぐさなりを表現し、
そのことを覚えた(学習した)ことを、
人に示すということです。

イルカには、
「或る特定のことことを覚えれば、エサがもらえる」
というコンテクスト(二次学習)より、
高度なことが、課せられたのです。

或る時は、芸Aをやったら、
エサがもらえた。
しかし、次に、芸Aをやっても、
エサはもらえない。
偶然、芸Bをやったら、
エサがもらえた。
しかし、それをもう一度やっても、
エサはもらえない。
最初、イルカは、混乱したようです。

しかし、試行錯誤を繰り返す中で、
イルカは、ついに、
「わかった」ことを示すかのように、
嬉しそうな反応をしたそうです。

そして、次々に、
新しい芸を見せ出したそうです。

つまり、イルカは、
より高い階層から、
自分の置かれた「コンテクスト(文脈)」を、
理解することをできたのです。

「芸A、芸B、芸C」と、
既存の芸を、ひとつのクラス(類)と見なし、
それとは別の「新しい芸」のクラス(類)が、
求められているものだと、理解したのです。

このゲーム全体のコンテクストを理解したのです。
それは、
今までの自分が置かれた階層を、
超えた視点からの理解です。
そこに、
イルカは、飛躍することができたのです。

一方、対照的に、
ノイローゼに陥ったパブロフの犬の、
事例が挙げられています。

その犬は、
丸と、楕円形を識別する訓練を受けたようです。
丸の時は、反応Aを行なう、
楕円形の時は、反応Bを行なう、
というようなことでしょう。

その上で、
丸か楕円形か、識別できない形態が、
提示されたようです。
すると、
犬は、明らかに混乱し、
神経症的な症状を示し出したようです。
つまり、選択肢「丸か楕円形か」の間で、
「識別できない」という、
ダブルバインド(二重拘束)に入ってしまったのです。

つまり、パブロフの犬は、
選択肢「丸か楕円形か」が、
ひとつのクラス(類)であり、
その他のクラス(類)が、
他の選択肢としてあるかもしれない、
という可能性を、
見出せなかったのです。
そのため、既存の学習の中で、
袋小路に入って(詰んで)しまったのです。

さて、見るところ、
人間の場合も、
個人の行動や、企業の戦略においても、
多くの場合、
パブロフの犬のようにしか振る舞えない、
というのが実情ではないかと思われます。
既存の二次学習の中で、
ダブルバインドに陥ってしまうのです。

つまり、
自分が慣れ親しみ、
身についた既存の二次学習、
既存の視野(選択肢)の階層を、
超える飛躍とは、
なかなかに難しいのです。

習慣的学習ではない超習熟と、
覚醒的な気づき、
プラスアルファの要素が、
必要となります。

そしてまた、
頭で考えるだけの方法論(aboutism)では、
自分自身を構成している
二次学習のプログラムを超える(相対化する)ことは
これも大変難しいからです。
考えることは、解離的なプロセスであり、
それ自体に、物質的に働きかける方法には、
ならないからです。

当スペースが、
ゲシュタルト療法(心理療法)を、
方法論に置いている理由は、
ここにあります。

それは、
ゲシュタルト療法のセッションは、
変性意識状態(ASC)に入り込む中で、
しみついた二次学習のプログラムに、
背後から直接、
コンタクト(接触)できる方法論となっているからです。

そして、
それを、気づきawarenessのうちに、
修正することができるからです。

これが、
当スペースの、
方法論的な狙いとその特徴と、
なっているのです。


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映画『攻殻機動隊』ゴーストGhostの変性意識

さて、
以前、映画『マトリックス』を素材に、
私たちの日常意識と、
変性意識状態(ASC)に関して書きました。
映画『マトリックス』のメタファー(暗喩) 残像としての世界

今回は、『マトリックス』の、
元ネタのひとつである、
アニメ映画『攻殻機動隊』を取り上げ、
変性意識状態(ASC)や、
心の構造について、考えてみたいと思います。

さて、原作漫画でもそうですが、
副題は、Ghost in the Shellとなっています。
このゴーストGhostが、今回のテーマです。

映画の中では、Ghostは、
私たちの「心」を意味するものとして、
使われていますが、
そこに幾重もの意味が重ねられているようです。

Ghostは、そもそも、
霊、幽霊を意味しています。
含意としては、
ポリスのアルバム・タイトルにもなった、
ケストラーの『機械の中の幽霊Ghost in the machine』あたりが、
その由来かもしれません。

また、映画の中で、重要な意味をもって引用される、
新約聖書の流れでいえば、
三位一体のひとつの位格である、
聖霊Holy Ghostとの関連も類推されます。

そして、
映画のストーリーに即していえば、
Ghostをハッキングされることによって、
他者により、疑似体験の記憶さえ、
ねつ造されてしまう未来社会にあっては、
身体(義体)の中にある、自分の「心」の、
「自分らしき」クオリアさえ、
もはや自分自身の確証にならないということが、
Ghostという言葉に、込められているのかもしれません。

ところで、映画の中では、
新約聖書のパウロ書簡、
コリント人への手紙の一節が、
重要な意味をもって使われています。

「今われらは鏡をもて見るごとく
見るところ朧(おぼろ)なり」

草薙素子とバトーが、
非番の日に、船の上で、
謎のハッカー「人形使い」のメッセージを聞くのです。

そして、この節は、
映画のラストシーン、
草薙素子が、バトーとの別れ際に、
さきの節の前にある言葉を引いて、
現在の自分の心境(状態)を表すものともなっています。

「われ童子の時は語ることも童子のごとく、
思ふことも童子の如く、
論ずることも童子の如くなりしが、
人と成りては童子のことを棄てたり」

さて、映画の中では引かれていませんが、
人形使いのメッセージは、
実は、文章の前半節であり、
この節の後には、次のような言葉が続いていました。

「然れど、かの時には顔を対せて相見ん。
今わが知るところ全からず、
然れど、かの時には我が知られたる如く全く知るべし」

今は、鏡を通して見るようにぼやけて見ているが、
その時が来たら、直接、顔をあわせて見ることになるだろう。
今は、不完全にしか知ることができないが、
その時が来たら、神が知るように、
すべてをあきらかに知るようになるであろう、ということです。

この言葉は、
草薙素子の「自分らしき」Ghostをめぐる焦燥感と、
謎のハッカー「人形使い」との邂逅にまつわる、
追跡的なテーマ(けはい)として流れているものです。

そして、物語は、終盤、
草薙素子が、人形使いのGhostを探るために、
きわどい状況下で、人形使いの義体にダイブして、
図らずも、人形使いのGhostと相見え、
ネットに遍在するかのような、彼のGhostとの、
「融合」に導かれ、
「さらなる上部構造にシフトする」ところで、
クライマックスを迎える形となるのです。


◆変性意識状態(ASC)と心理療法

さて、この話のような、
Ghost (心)の「上部構造」などは、
一般には、フィクションの中でしか、
あり得ないように見えるかもしれません。
ところが、実は、そうでもないのです。
それが、今回の話の眼目です。

の中では、
各種の変性意識状態(ASC)の事例を取り上げました。
例えば、その周辺領域では、
特に、強度なタイプの変性意識などにおいては、
しばしば、私たちの「日常意識」が、
下位(下部)意識として、稼働しているかのように感じられる、
上部(上位)意識らしきものの存在を予感する報告が、
多種多様に存在しています。

変性意識状態の中でも、
LSD等によるサイケデリック(意識拡張的)体験や、
臨死体験などの、強度なタイプの体験においては、
そのような事柄も語られがちになっているのです。

そのような強度な状態においては、
私たちの意識や知覚の一部は、
別種のもののように澄みきり拡張し、
あたかも「かの時」に、「全く知る」かのようになって、  
日常意識の、限定された情報を、
下部構造のように透視していくこととなります。
そして、私たちは、
「かの時」でしか知りえないかのような、
隠された情報にアクセスすることも、
できるように感じたりするのです。

ところで、
このような心の上下部分を感じさせる階層構造は、
心の構造的側面だけで見れば、
(強度な変性意識ほど劇的な形ではなくとも)
心理療法のセッションの中では、
つねに起こっているものともいえるのです。

例えば
心の葛藤状態を扱う、ゲシュタルト療法の、
エンプティ・チェアの技法を使ったセッションを、
例に取り上げてみましょう。

このタイプのセッションにおいては、
軽度な変性意識状態の中、
アンカリングの作用によって、
葛藤し相反する欲求(感情)をもった、
自分の中の「複数の自我」が、
それぞれの椅子に、
取り出されていくということが起こります。

そして、セッションで、
各欲求(自我)の中身を、丁寧に表現したり、
対話させていくことにより、
各欲求(自我)の間に、
感情的・情報的な交流が発生し、
だんだんと、二つの欲求(感情)が、
融合していくということが起こって来ます。

また、その融合に従い、
二つを合わせた、
より「統合的な自我」が、
自然に生成して来ることにもなるのです。

クライアントの方の、
主観的な感覚としては、
最初の個々の欲求(自我)に対して、
統合的な自我は、
より「上位的な自我」として、
立ち現われて来る実感があります。

実際、統合的な自我は、
最初の欲求(自我)を、その部分(下部)として、
内に持っているのです。
しかし、
各欲求(自我)は、葛藤状態ではなく、
個性や能力として、
そこに働いているという変化を、
持つようになるのです。
機構が、整列されて、
正しく稼働するようになるのです。

ここには、
葛藤する自我と、
統合的な自我との間に、
ある種の上下階層的な構造が、
存在しているのです。

また、実際、
このようなセッションを、
数多く繰り返していくと、
クライアントの方の中に、
心の「余裕」が生まれて来て、
以前より、「泰然としている自分」を、
発見することになります。
昔は、葛藤したり、悩んでいた同じ事柄を、
今では、以前ほどは気にしていない自分を、
発見するわけです。
これなども、より上位的なレベルの、
「統合的な自我」が、
自分の中に育ったためと言えます。
これは、後述しますが、
階層の高い心の機能が、
学習された結果ともいえるのです。

このように、身近な事例からも、
心の階層構造というものを、
想定することができるのです。


◆聖霊Ghostの働きについて

さて、映画の中では、
新約聖書の言葉が、
重要な意味合いを持って引用されます。

ところで、
宗教的・教義的な文脈とは関係ないところで、
初期のキリスト教徒たちに起こった、
変性意識状態(神秘的な体験)がいかなるものであったか、
というのは、興味深いテーマです。

特に、聖霊Ghost関する記述は、
キリスト教や宗教に限定されない、
心の普遍的な働きを感じさせるものでもあります。

ロシアの思想家ベルジャーエフは、
精神の自由に関する興味深い論考の中で、
聖霊Ghostにまつわる、さまざまな指摘を行なっています。

「四福音書、ならびに使徒の書簡を読むと、
パン・プノイマティズムの印象を受ける。
いたるところ、霊である、という感銘を強く受けるのである。
そこでは、いわゆる聖霊という教義は、
まだ出来上がっていないといっていい。
そういう教義は、使徒にもまた護教者にも見出すことはできない。
(中略)聖霊とは人間にとくに近いものである。
それは、人間に内在している。
その働きはひろく万人に及ぶものの、
それ自体は不可解な深秘に充ちている。
いったい、聖霊について教義を立てることができるであろうか。
私の考えによれば、それは不可能といっていい」
ベルジャーエフ『精神と現実』南原實訳(白水社)

「S・ブルガーコフはいみじくも言った。
聖霊がある特定の人間に受肉することはない。
聖霊の受肉は、いつも全世界にあまねく及ぶ、と。
精神―ひいては霊と聖霊との関係をくわしく規定するのが困難なのは、
まさにこのためである。
聖霊は霊のなか、心のなか、精神のなかに業を行なう」(前掲書)

「聖霊の働きは、どういう現実となってあらわれるだろうか。
抑圧され卑しめられた人間の実存が終わりをつげて、
心が生命にみちあふれ、高揚し、エクスタスにおちいることこそ、
聖霊の業のしるしである。
これは、聖書に記されている聖霊の特徴でもあれば、
また文化・社会生活における精神の特徴でもある。
新神学者聖シメオンの言葉がある。
聖霊にみたされた人間は、
文字に書き記された掟を必要とせず、と」(前掲書)

聖霊の働きは、
人形使いのGhostのように、
世界や、私たちの内外に、
あまねく、いきわたっているかのようです。


◆学習理論と心の階層

さて、ここから、
Ghostにまつわる、階層構造について、
学習理論を参考に考えてみたいと思います。

ところで、学習理論においては、
グレゴリー・ベイトソンの学習理論が、
有名なものとして、知られているところです。

一次学習、二次学習、三次学習と、
何かを学習する取り組みの中で、
直接的な学習(一次学習)に対して、
そのコンテクスト(文脈)についての学習も、
上位階層の学習として、
発達していくという理論です。
学習すること自体が、学習されるのです。

例えば、ひとつの外国語をマスターすると、
通常、第二外国語をマスターすることは容易くなります。
「外国語を学習する」こと自体(そのコンテクスト)が、
コツとして学習されたからです。
ある乗り物の運転を覚えると、
他のジャンルの乗り物の操縦も容易くなるのです。
整理すると、以下のような階層構造になります。

・0次(0) 学習がない
・一次(Ⅰ) 学習する
・二次(Ⅱ) 「学習する」ことを学習する
     「学習すること」についてのコンテクストを学習する
     →「行為と経験の流れが区切られ、
      独立したコンテクストとして括りとられる、
      そのくくられ方の変化。
      そのさいに使われるコンテクスト・マーカーの変化を伴う」
      ベイトソン『精神の生態学』佐藤良明訳(新思索社)
・三次(Ⅲ) 「『学習する』ことを学習する」ことを学習する
     →「学習すること」についてのコンテクスト化を
      再編集(再コンテクスト化)する。

 

二次、三次の学習は、その生体の任意の組織化(コンテクスト化)といえます。

通常、芸事や技芸に上達することは、
大体、このように推移します。
二次学習のレベルが上がると、
技は、グッと次元を超えてよくなります。
上位の学習能力が育っていくと、
下位の学習力自体も、的を得たものになり、
下位の能力を、ハンドリングする能力自体も高まるようです。

さて、ところで、興味深いことに、
ベイトソンは、精神医学的な研究から、
私たちの普段の心も、
習慣による、そのような二次学習の結果であると、
洞察している点です。
そして、それを変化させるのが、
より上位レベルの三次学習(学習Ⅲ)であるという点です。

二次学習発生の由来が、おそらく、
問題解決に費やされる思考プロセスの経済性である、
と指摘したうえで、以下のように記します。

「『性格』と呼ばれる、その人にしみ込んださまざまの前提は、
何の役に立つのかという問いに、
『それによって生のシークェンスの多くを、
いちいち抽象的・哲学的・美的・倫理的に分析する手間が省ける』
という答えを用意したわけである。
『これが優れた音楽がどうか知らないが、しかし私は好きだ』
という対処のしかたが、性格の獲得によって可能になる、という考え方である。
これらの『身にしみついた』前提を引き出して問い直し、
変革を迫るのが学習Ⅲだといってよい」(前掲書)

「習慣の束縛から解放されるということが、
『自己』の根本的な組み変えを伴うのは確実である。
『私』とは、『性格』と呼ばれる諸特性の集体である。
『私』とは、コンテクストのなかでの行動のしかた、
また自分がそのなかで行動するコンテクストの捉え方、
形づけ方の『型』である。
要するに、『私』とは、学習Ⅱの産物の寄せ集めである。
とすれば、Ⅲのレベルに到達し、
自分の行動のコンテクストが置かれた
より大きなコンテクストに対応しながら行動する術を習得していくにつれて、
『自己』そのものに一種の虚しさirrelevanceが漂い始めるのは必然だろう。
経験が括られる型を当てがう存在としての『自己』が、
そのようなものとしてはもはや『用』がなくなってくるのである」
(前掲書)

さきほど、
エンプティ・チェアの技法のセッションで、
何が起こるのかについて記しましたが、
その事態が、この引用した文章と、
響きあっていることが分かると思います。

その事態が、
心の二次学習のコンテクストを、
三次学習的に書き換える作業だということが、
見て取れるかと思います。
セッションの中では、
そのような階層構造が現れているわけです。


◆Ghostの変性意識状態(ASC)

このような学習の階層的構造が、
変性意識状態(ASC)下における、
Ghost(心)の、
気づくawarenessことを学習する中でも、
どうやら、育っていく可能性があるということが、
各種の観察からも、うかがえるのです。

特殊な状態下での、
気づくawarenessことが、
その二次学習的な能力も、
育てていくという可能性です。

実際のところ、
心理療法のセッションや、
瞑想における気づきの訓練、
明晰夢lucid dreamの中での気づきの取り組みは、
私たちの気づく能力を、
間違いなく高めていくものです。
その背後では、おそらく、
なんらかの高次元の学習も育っていると思われるのです。

実際、日常意識と変性意識状態を、
数多く行き来(往還)することで、
学習された「気づきの力」は、
非常に奥行きのある力を持ちはじめるのです。
その結果、
私たちの心における自由の実感を、
より高めていくこととなるのです。

また、関連でいうと、
しばしば、強度な変性意識状態の中では、
心理的に強烈な、治癒(癒し)の効果が現れることがあります。
聖書にある「聖霊Ghostにみたされる」などの、
宗教的な神秘体験などもそうです。

これなども、システム的に考えてみると、
潜在的な因子としてあった何らかの上部階層の働きが、
下部階層の情報プログラムの混乱状態(感情や思考の混乱)に対して、
それらの情報を整理・整列させるように働いた結果である、
と考えることもできるわけです。

私たちの中で、
「さらなる上部構造にシフトし」、連なる能力を、
育てて(学習して)いくことにより、
そのような治癒や、能力の拡張を、
期待することもできるわけなのです。


◆Ghostの囁き


さて、以上、
映画『攻殻機動隊』の設定を素材に、
心理療法から、変性意識状態(ASC)、
聖霊の働きから、学習理論と、
Ghost(心)の持つ可能性について、
さまざまに取り上げてみました。

これらは、
可能性としての仮説に過ぎません。
もし、何か響く点がありましたら、
ぜひ、ご自分の「Ghostの囁き」にしたがって、
その道の行方を、実際に、
探索・確認してみていただければと思います。



※気づきや統合、変性意識状態(ASC)への

より総合的な方法論については、拙著↓
入門ガイド
および、
『砂絵Ⅰ 現代的エクスタシィの技法 心理学的手法による意識変容』
をご覧下さい。



 





【PART1 Basic】ゲシュタルト療法
ゲシュタルト療法【基礎編】
ゲシュタルト療法【実践・技法編】
ゲシュタルト療法【応用編】
「セッション(ワーク)の実際」

【PART2 Standard】
気づきと変性意識の技法 基礎編
変性意識状態(ASC)とは
「英雄の旅」とは
体験的心理療法
NLP 普及・効果・課題
禅と日本的霊性
野生と自然

【PART3 Advanced】
気づきと変性意識の技法 上級編
変性意識状態(ASC)の活用
願望と創造性の技法
その他のエッセイ

【PART4 当スペース関係】
フリー・ゲシュタルトについて
セッションで得られる効果
なぜ、ゲシュタルトなのか
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底打ち体験と白い夜明け デイヴ・ビクスビー

さて、俗に、
底打ち体験、底つき体験などと、
言われている体験があります。

人が、長い期間に渡り、
心の落ち込みや、
鬱から逃れられずに、
先の見えない魂の暗夜を、
悶々と過ごした果てに、
ふと、なぜか、
下降の底に、
行き当たってしまうという体験です。

底なしだと思っていた状態に、
底があったわけです。

明けない夜が、
明けたわけです。

心の下降を行ききった果てに、
底を打ち、
魂の奥底から、
何かが浮上していたことに、
気づくわけです…

さて、そのような経験は、
このような言葉が、
一般の言葉にあることから考えても、
人々の人生経験の中で、
類型的に存在していることが、
うかがえるものです。

ところで、
の中では、
心理療法などに見られる、
人の心の変容過程について、
3つのフェーズに分けて解説しました。

また、それらの変容形態が、
神話その他の、文化的な事象にも、
普遍的に見られることについて、
触れました。

このモデルの中では、
底打ち体験、底つき体験は、
魂の暗夜であるフェーズ2を抜けた後の、
フェーズ3のはじまりに、
位置しています。
その転回点が、
底打ち体験なのです。

そこで、私たちは、
旅路の果てに、
自らの心の底の、
ひそかな重層性に、
気づくことになります。
 
心を熔かすような、
暗いプロセスの果てに、
厚みのある力や、
精神の内実が、
自分の心の底に、
育っていたことに気づくのです。

運命が、その労苦の意味を、
明かして来るのです。
これまでの長い間の苦労が、
救われるのです…

さて、
ここに一枚のレコードがあります。
昔は、アシッド・フォークなどに分類されていたものですが、
デイヴ・ビクスビー Dave Bixbyが、
1969年に録音し、1000枚ばかりプレスしたものです。
アシッド・フォークの作品の多くがそうであるように、
その後、一部の人々の間で話題となり、
徐々に知られるところとなったものです。

その歌の数々は、
ビクスビーが、
ドラッグ中毒から、
抜け出ることを通して感じた恩寵が、
赤裸々かつ清冽に、
刻まれたものとなっています。

そして、
実際のところ、
この作品におけるほど、
暗黒の中から抜け出た時の、
黎明の感覚を、
見事に造形した作品も、
他にないといっていいのです。

その白い夜明けを、
「はじめての朝」の感覚を、
奇蹟的に描けた作品となっているのです。

それは才能ばかりでなく、
ビクスビー自身が、
心の切実さ(切迫)から、
その経験の意味を、
結晶させることを強く願ったからでしょう。

ところで、私たちは、
さまざまな心の変容過程をくぐり抜けても、
時と共に、雑事にまみれる中で、
その心の決定的光景を、
しばしば風化させてしまいます。

ビクスビーの歌には、
そのような私たちの心の鈍麻を、
鉱石のように磨き、
白い夜明けを思い出させる、
どこか凛冽で、不思議な力があるのです。


※気づきや統合、変性意識状態(ASC)への

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モビルスーツと拡張された未来的身体

さて、拙著
の中では、
意識拡張の実践である「夢見の技法」を語る際に、
私たちの心理的投影と、身体性が、
どうかかわるのかについて、
紙数を割きました。

メルロ=ポンティのいう、
「画家は、
その身体を世界に貸すことによって、
世界を絵に変える」
『眼と精神』木田元他訳(みすず書房)
という言葉などを素材に、
私たちが、世界を、
投影した身体性を通して、
理解するその仕方について、
分析をしてみました。

そして、そのことが、
夢見の技法として、
どのように利用可能なのかについて、
考察してみました。

さて、ここでは、
そのような文脈で、
拡張された(投影的な)身体性と、
意識拡張との関係について、
考えてみたいと思います。


◆モビルスーツの身体領域

「モビルスーツ」とは、
一時代を画したアニメ作品、
『機動戦士ガンダム』の中に登場する、
戦闘用の機体(ロボット)のことです。

アニメ作品『機動戦士ガンダム』は、
初回作品と、その玩具(プラモデル)が、
一世代の熱狂を引き起こし、
シリーズ化されていったものです。

また、その作品の物語設定についても、
独特の仕掛けが、さまざまあり、
セカイ観を売り物にする、
その後のアニメ作品群の先駆けになったとも、
いえるかもしれません。

しかし、筆者が、
ここで、特にテーマとしたいのは、
「モビルスーツ」というロボット(機体)の、
拡張された身体性としての意味合いなのです。

ところで、
モビルスーツは、
それまであったアニメ作品、
『マジンガーZ』のような、
偶発的なロボットとは、趣を異にし、
未来国家の量産型の軍事兵器として登場します。

元々は、番組から玩具をつくり出す、
マーケティング上の必要性があったわけですが、
物語の設定上でも、
高度に発達した未来社会の戦争においても、
なぜ、ロボット同士の白兵戦が必要であるのかという、
納得性(設定)を形成することで、
高機能化し、進化していくモビルスーツの、
必然性をつくり出すことになったわけでした。

ところで、一方、
実際、後に、玩具としてヒットするわけですが、
モビルスーツの、
あの美的で、不思議なデザインがなければ、
時代の(その後の)熱狂を、
つくり出すこともなかったとも思われるのです。

特に、玩具商品のラインナップの大部分であった、
ジオン軍のモビルスーツの持つ異形性・新奇性、
ガウディの作品のような、曲線を多用した、
あの有機的なデザインが無ければ、
そこまでの支持は得られなかったとも類推されるわけです。

また、玩具自体について言えば、
それまでのプラモデルにあまりなかった、
関節の「可動性」を高めた点も、重要なポイントでしょう。
子どもたちは、自らの身体性を、人形に投影するので、
人形の可動性の高さは、
そのまま、子どもたちの感覚の自由度を、
高めることにもなるからです。

現在でも、フィギュア商品の、
可動域の広さが商品の売りとなるのは、
そのような意味合いだとも考えられるのです。


◆拡張する未来的身体と、意識の拡大

さて、物語の展開にしたがって、
軍事兵器としてのモビルスーツは、
次々と高機能化し、
進化していくわけですが、
興味深いことは、
その進化にともなって、
物語の終盤には、
進化したパイロット(ニュータイプ/超能力者)も、
現れて来るということです。

ストーリー的には、
偶然、特殊進化(超能力化)したパイロットに合わせて、
進化させたモビルスーツが、
作られたようにも見えます。
物語的には、
宇宙空間に出た人類が、
自然に進化していくというイメージです。

しかし、通常、
このような生物の能力進化とは、
環境と生体との相互作用の結果であり、
どちらかが原因であるとは、
一概に特定できないものなのです。

フロー体験に見られるように、
環境と、表出(表現)と、内容(生体)との、
ギリギリの極限的な相互フィードバックの中で、
生成して来るものなのです。

つまり、
物語の設定でいえば、
宇宙における戦争・戦闘という極限状態の中での、
拡張された表出身体(モビルスーツ)と、
内容(パイロットの知覚力・意識)との、
高度的な相互フィードバックの中で、
生成して来るものなのです。

モビルスーツがなければ、
ニュータイプも生まれなかった。
こう考える方が、
面白いと思います。

宇宙空間を、高速で稼働する、
機械の身体があったからこそ、
知覚能力の進化が、
加速されたというわけです。

フロー体験について分析されるように、
通常、私たちは、
挑戦的な、困難な状況の中での、
的確な(拡張された)身体活動によって、
知覚力や意識が拡張されていくわけです。

そのような事柄が、
この物語作品の中では、
一定の納得性をもって描かれたために、
一見無理やりで荒唐無稽にも見える、
ニュータイプの設定が、
表現としての強度を持ちえたのでした。
事実は、
そんなにニュータイプな事柄ではなかったのです。
むしろ、古典的(神話的)ともいえる事象だったわけです。


◆日常生活におけるモビルスーツ(拡張する先導的身体)

さて、ここで、
焦点化したい事柄は、
モビルスーツのような、
宇宙空間において、高速で稼働する、
疑似身体(拡張された)が、
ニュータイプ的能力を覚醒させ、
拡張させていったという事柄です。

新奇で、一歩先を行く表現活動(形態)が、
私たちの拡張された知覚力や意識形態を
引き出していくという点です。

そして、
この能力の特性は、決して、
SF的な事柄に限定されるものでは、
ないのです。
この日常的現実で、
普通に起こっている事柄なのです。

さて、私たちは、
身体という場で、
世界と出遭っています。

そして、この身体は、
肉体に限定されるだけでなく、
モビルスーツにように、
投影的で、創造的な活動領域全般に、
延長されているものなのです。

そのため、
私たちが、
自分の知覚力や意識を、より拡張し、
能力をより高めていきたいと考える場合には、
活動しているフィールド(場)を、
私たちの能力が、
引き出され(拡張され)やすいように、
焦点化して、
設定してしなければならないのです。

宇宙(人生)を高速で横切るかのように、
自分に課す日々の活動内容や、
人生の目標など、
自分の限界を超えるかのように、
全身全霊で取り組まざるを得ないように、
場や標的を創り、
急襲していく必要があるのです。

それには、
戦闘のような、
つねに、気づきawarenessが求められる、
強度をはらんだ持続性が必要です。

徹底的に追い求めることにより、
能力というのは、
一線を超えた力を、
発揮はじめるのです。

そして、
そのような強度の果てに、
困難や既知の自己を、
超えはじめた時に、
私たちは、
人生の新しい次元(宇宙)を、
見出しはじめることができるのです。


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【PART1 Basic】ゲシュタルト療法

ゲシュタルト療法【基礎編】

ゲシュタルト療法【実践・技法編】

ゲシュタルト療法【応用編】

「セッション(ワーク)の実際」

 

【PART2 Standard】

気づきと変性意識の技法 基礎編

変性意識状態(ASC)とは

「英雄の旅」とは

体験的心理療法

NLP 普及・効果・課題

禅と日本的霊性

野生と自然

 

【PART3 Advanced】

気づきと変性意識の技法 上級編

変性意識状態(ASC)の活用

願望と創造性の技法

その他のエッセイ

 

【PART4 当スペース関係】

フリー・ゲシュタルトについて

セッションで得られる効果

 なぜ、ゲシュタルトなのか

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人生のロロ・トマシ

ロロ・トマシとは、
映画『L.A.コンフィデンシャル』の中で、
決定的な意味を持つ名前です。
(以下ネタバレあり)
 
その名は、
登場人物のエクスリー警部補が、
自分がなぜ刑事になったのかを語る、
わずかな昔語りの中で触れられます。
 
彼の刑事だった父親は、
殺されたのです。
しかし、犯人はわからず、
彼は、その犯人を、
ロロ・トマシと名付け、
罪を逃れて、ほくそ笑むやつらの、
代名詞としたのです。
 
そのような挿話が、
出世の亡者のような嫌われ者として描かれていた、
エクスリー警部補の、
人生の背景として語られるのです。
 
映画の中では、
それまでの出世をフイにしてでも、
事件の真犯人、
ロロ・トマシをとらえたいという、
渇望に駆られ出した、
(心を蘇らせはじめた)
エクスリーの姿を映し出す、
象徴的な名前となっているのです。
 
そして、彼が、
ゆくりなくも語った、
この秘密の名前が、
思いがけず、事件を解決する、
導きの糸となっていくのです。
 
というのも、
その挿話を聞かされたヴィンセンス刑事が、
意外な真犯人に殺される際に、
その名を、
ダイイング・メッセージとして呟いたことが、
(この場面のスペイシーのかすかな微笑が素晴らしい)
その後、
真犯人が誰であるかを、
エクスリーに告げる、
決定的な鍵となったからです。
 
 
さて、
私たちの人生の中には、
映画におけるような、
現実の悪党ではありませんが、
心の中に、
影のようにつきまとう、
ロロ・トマシがいます。
 
それは、
私たちを駆り立て、
苦しめ、
また、渇かせ、
まるで運命のように、
打算を超えた、
非合理的な行動をとらせていきます。
 
私たちは、
その本当の姿を、
よく知りません。
 
若い頃は、
私たちは、
おおむね誰もが多感なため、
ロロ・トマシを、
身近に感じています。
 
しかし、歳をとっていくと
俗世間の雑務にまみれて鈍麻し、
物語のはじめにあったエクスリーのように、
ロロ・トマシのことを、
忘れがちになっていきます。
また、見ないようにしていきます。
 
しかし、
それを思い出し、
その気配を感じ、
それを探しつづけることは、
実は、とても大切なことなのです。
 
ロロ・トマシの背後(向こう)にこそ、
私たちの真の人生が、
待っているからです
 
ロロ・トマシの、
黒点のような存在を感じていくことが、
事件を解決するように、
真の人生を見つける、
導きの糸となるのです。
 
そして、
ロロ・トマシを追い、
紆余曲折しながらも、
扉の向こうに
ついに、彼を追い詰めた時に、
捕らえた時に、
私たちの人生は、
あたかも何かがほどけたかのように、
明るいものに、
変わっていくのです。
 
人生の、
違う白日の中に、
入り込んだことに気づくのです。
 
人生の次の次元に、
移っていくのです。
 
そのように、
私たちの心の秘められた智慧は、
ロロ・トマシを、
正体不明の真犯人を、
登場人物として、
人生の中に、
ひそませているのです。

影の中にこそ、
苦痛の中にこそ、
悪の向こうにこそ、
人生を解く、
秘密の鍵があるのです。
 
そのため、
私たちは、
その暗いけはいを感じとり、
それが、どこから来て、
今どこにいるのかを、
問いつづけることが、
とても大切なことなのです。



※気づきや統合、変性意識状態(ASC)への

より総合的な方法論については、拙著↓
入門ガイド
および、
『砂絵Ⅰ 現代的エクスタシィの技法 心理学的手法による意識変容』
をご覧下さい。


 


 

 

【PART1 Basic】ゲシュタルト療法
ゲシュタルト療法【基礎編】
ゲシュタルト療法【実践・技法編】
ゲシュタルト療法【応用編】
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【PART2 Standard】
気づきと変性意識の技法 基礎編
変性意識状態(ASC)とは
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気づきと変性意識の技法 上級編
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