さて、
現代の心理学の領域で、
「フローflow」として知られる、
心理状態があります。
シカゴ大学のチクセントミハイ教授がまとめた、
心理状態の定義です。

スポーツ選手などが、
競技のプレー中、
最高のパフォーマンスを
展開している時などに、
しばしば入る心理状態などとして、
人口に膾炙されています。
そこでは、
意識が変性し、
「あたかも時間が止まっているかのように」

「ボールが止まっているかのように」
物事が鮮明に、
見られるとも、
言われたりします。

ZONE(ゾーン)などとも、
呼ばれたりしています。

私たちも、
普段の生活の中で、
最高にノッていて、
何か物事に、

集中・没頭している時に、
このような状態に入っています。

 

チクセントミハイ教授は、

語ります。


「…これらの条件が存在する時、
つまり目標が明確で、
迅速なフィートバックがあり、
そしてスキル〔技能〕と
チャレンジ〔挑戦〕のバランスが取れた
ぎりぎりのところで活動している時、
われわれの意識は変わり始める。
そこでは、
集中が焦点を結び、
散漫さは消滅し、
時の経過と自我の感覚を失う。
その代わり、
われわれは行動を
コントロールできているという感覚を得、
世界に全面的に一体化していると感じる。
われわれは、
この体験の特別な状態を
『フロー』と呼ぶことにした」
M.チクセントミハイ『フロー体験入門』大森弘監訳(世界思想社)

 

そして、


「目標が明確で、
フィートバックが適切で、
チャレンジとスキルのバランスがとれている時、
注意力は統制されていて、
十分に使われている。
心理的エネルギーに対する
全体的な要求によって、
フローにある人は完全に集中している。
意識には、
考えや不適切な感情をあちこちに散らす余裕はない。
自意識は消失するが、
いつもより自分が強くなったように感じる。
時間の感覚はゆがみ、
何時間もがたった一分に感じられる。
人の全存在が肉体と精神のすべての機能に伸ばし広げられる。
することはなんでも、
それ自体のためにする価値があるようになる。
生きていることはそれ自体を正当化するものになる。
肉体的、心理的エネルギーの調和した集中の中で、
人生はついに非の打ち所のないものになる。」
(前掲書)

と言います。

 

さて、
この心理状態には、
私たちが、
充実した生の感覚、
充実した瞬間、
ひいては、
充実した人生を生きるための、
実践的なヒントが、
含まれています。

ここでは、それらを、

少し見ていきたいと思います。


ところで、

フロー状態についての知見が、
興味深いのは、
この状態を、僥倖のように、
偶然に生ずるものとしてではなく、
諸条件によって、
意図的に創り出せるものとして、
研究がなされている、

ということです。

これらの知見は、
私たちが、
実際に物事に取り組む際に、
最高の内的状態と、
最高のパフォーマンス(アウトプット)を、
生み出すのに、
どのように要件をそろえ、
意図をフォーカスすればよいのかについて、
さまざまに、

教えてくれることになります。

チクセントミハイ教授は、
これらの内的状態の属性を、
以下のように、数え上げています。
(『フロー体験とグッドビジネス』大森弘監訳(世界思想社)より)

 

 

①目標が明確

この目標は、
長期的な最終目標のことでは、
ありません。
今、目の前で、
直接かかわっている
この事態、この過程の中で、
何に達すべきか、
何がベストなのか、
その目標を、知悉しているということです。
この今やるべき、
瞬間的過程の、目標です。
そこに、パーフェクトなコミットメントがあり、
ブレが無いということです。


②迅速なフィートバック

これは、
この瞬間の、
自分の行為に対する、
直接的なフィートバックのことです。

この瞬間の一手が、
正鵠を得ているのか、
そうでないのか、
その瞬時の返答が、
こちらの感覚を、
鋭敏に目覚ましてくれるのです。

そのような、
直接のフィードバックがあることで、
私たちは、
瞬時に行為と戦術を、
修正します。
そして、
すぐに再アタックできます。

この瞬時の繰り返しの中で、
私たちの、
俊敏な感覚的スキルが、
高まっていくのです。


③機会と能力のバランス

教授は、
「フローは、
スキル〔技能〕が
ちょうど処理できる程度のチャレンジ〔挑戦〕を
克服することに没頭している時に
起こる傾向がある」
また、
「フローは
チャレンジとスキルがともに高くて
互いに釣り合っているときに起こる」
といいます。

さらには、
「よいフロー活動とは、
ある程度のレベルの複雑さに
チャレンジしようとする活動である」
とも指摘します。

自己の錬磨したスキルを前提に、
それをさらに、
チャレンジ的に働かす時に、
フロー状態は、生じて来るわけです。

チャレンジ的な物事を、

電光石火のように、
高速的に処理する中で、
私たちは、
緩やかな登り坂を上がりつつ、
飛躍的霊感に満たされるのです。


④集中の深化

フロー状態に入ると、
集中は、
通常の意識状態より、
一次元深い状態となります。
これは、
フロー状態の、
変性意識状態(ASC)的側面です。

注意力は、澄みきり、
雑念は、入り込む余地なく背景に消え去り、
意識は、眼前の、その行為体験自体に、
深く没入した状態となるのです。


⑤重要なのは現在

その中で、
行為に関わる、
この瞬間(過程、時間)のみに、
完全に没入していきます。

雑事に対して、
「脇に立つ」

「外に在る」
という意味での、
エクスタシィ状態に入るのです。

過去も未来もなくなり、

ただ、この「現在」のみが、
在ることになります。


⑥コントロールには問題がない

そして、
この心理状態の中で、
自分が、その状況を、
「完全にコントロールしている」
という感覚を持ちます。

 

すみずみまでに、
パーフェクトな統御感が
現れて来るのです。


⑦時間感覚の変化

その中で、
時間の感覚自体が、

変わっていきます。

 

時間は、歪み、
拡縮しています。

知覚力と意識が、
澄みきり、
何時間もが、
瞬く間に過ぎ去ったように、

感じられたり、
ほんの一瞬間が、
スローモーションのように、
ゆっくりと動いて見えたり、
止まって見えるように、

感じられます。

純化された、別種の時間を、
生きているように、感じられるのです。


⑧自我の喪失

その体験の中では、
私たちの日常の、ちっぽけな自我は、
背景に押しやられています。

体験の核にある、不思議な〈存在〉感の、
圧倒的な現前が、

その場のすべてを、占めているように、感じるのです。

自分ではないものとして、

その体験を体験しているように、感じるのです。

 

それは、ある種の、自己超越的な体験とも、
言えるかもしれません。


さて、以上が、
フロー(状態、体験)の、
諸属性の概略ですが、
このすべての要件が、

そろわなくとも、
私たちは、人生の中で、
このような、充実した状態を、

偶然のように、しばしば体験しています。

そして、

その充実の時を思い返してみると、

生活の中で、
このような意味深い体験の割合を、
意図的に増すようにすれば、
より深い創造的な人生が送れるだろうということは、
容易に想像がつくと思われます。

 

 

……………………………………………………………………………

 

ところで、

実際的な見地から、
しばしば、指摘される、

事柄があります。

 

上で見たように、
フロー状態を生み出すには、
スキル〔技能〕と、

チャレンジ〔挑戦〕のバランスを、
調整することが、

重要といわれます。

このことに、

関係した視点です。


通常、
私たちの日常生活は、
絶好調というよりかは、

多くの時間、

退屈(弛緩)しているか、

またはストレス(不安、圧迫)を、

感じているかです。


これは、

フロー状態を見る観点からすると、

取り組みの目標設定に、
問題があるのだということもいえます。

 
退屈(弛緩)している状態というのは、

自分のスキルに対して、
目標のチャレンジ度が低すぎる状態です。

 

一方、ストレス(不安、圧迫)を感じている時は、
目標や理想、対象が、
自分のスキル〔技能〕に対して高すぎるといえます。
だから、私たちの心は、圧迫を感じるのです。

私たちが、

ちょうどいい感じで、

充実して集中できるのは、
フローのゾーン、
「スキル〔技能〕が
ちょうど処理できる程度のチャレンジ〔挑戦〕を
克服することに没頭している時」
です。

そのため、
自分が、退屈していたり、
ストレスを感じている時は、
自分の手前の目標を調整して、
自分がよく機能するゾーン(状態)を、

適度なチャレンジを、

意図的に創り出し、

設定していくことが、
重要となります。

 
そのように、日々物事に、

適度なチャレンジをもって、

取り組むことで、

私たちの心は、

充実と、適度な緊張を持つとともに、

生きるスキル〔技能〕も、
確実に高まっていくのです。

 

そして、結果的には、
より「複雑で」「高度」な物事を、
処理できるようになり、
最終的には、

かなり満足度の高い、

フロー状態をも、

生み出しやすくなっていくのです。


ところで、
ゲシュタルト療法などを通じて、
心と体が解放され、
癒(統合)されてくると、
私たちの、
心身エネルギーの流れは、
非常に滑らかになり、
このようなフロー体験を、
かなり意識的に、
生み出しやすくなって来るのです。

そのような意味においても、
当スペースでは、
このようなフロー状態とその体験を、
人格的統合の達成度合いを見る、
重要な指標としても、
重視しているのです。

そして、当スペースの方法論を、
フリーで、フローflowなゲシュタルト療法と、
謳っているわけなのです。
 


※気づきや、変性意識状態(ASC)についての、
より総合的な方法論については、拙著↓
『砂絵Ⅰ 現代的エクスタシィの技法』
をご覧下さい。

 


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気づきと変性意識の技法 基礎編
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