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2014年09月

〈真理〉は、途なき大地であり…

 〈真理〉は、途なき大地であり、いかなる方途、いかなる宗教、いかなる宗派によっても、近づくことのできないものなのです。それが私の見解であり、私はこの見解を絶対的に、かつ無条件に固守します。無限で、いかなる条件づ けも受けず、どんな途によっても接近することのできない〈真理〉は、組織化しえないものであり、また、特定の途をたどるように人を導いたり、強制したりするような、どんな組織体も形成されてはならないのです。もし、あなたがたが、最初にこのことを理解されるなら、ひとつの信念を組織化することが、いかに不 可能であるかがおわかりになるでしょう。信念というのは、純粋に個人的なことがらであって、組織化することはできず、また、してはならないものなのです。 もしそうするなら、それは生命のない結晶体になってしまいます。それは、他人に押しつけずにはすまない教義や宗派、宗教になるのです。

 これこそ、世界中の誰もがしようと試みていることなのです。〈真理〉は狭められ、おとしめられて、無力な者たち、かりそめに不満を感じる者たちの慰みものにされています。〈真理〉を引き下ろすことはできません。むしろ、ひとりひとりが、そこへ上る努力をしなければならないのです。あなたがたは、山頂を谷底へ運ぶことはできないのです。

 

クリシュナムルティ(高橋重敏訳)

 

 


※気づきや統合、変性意識状態(ASC)への

より総合的な方法論については、拙著↓
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ゲシュタルトは、地球の生成の歴史と同じくらい

私は、ゲシュタルト療法の創始者とよく言われます。それは戯言です。しかし、私をゲシュタルト療法の発見者、もしくは再発見者と呼ぶなら了承できます。ゲシュタルトは、地球の生成の歴史と同じくらい古代からある古いものです。
F・パールズ(倉戸ヨシヤ訳)



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【図解】心の構造モデルと変容のポイント 見取り図

自己実現を促進する、潜在意識と心理療法の活用について



【内容の目次】

  1. 心の構造モデル
  2. 氷山モデル
  3. 変性意識状態(ASC)の存在
  4. さまざまなアプローチ手法と心の対象領域
  5. 当スペースのアプローチ 流れる虹のマインドフルネス

 さて、ここでは、基本的な、心理学的な見方(心のモデル)をご説明することで、当スペースのアプローチが位置している文脈(コンテクスト)と、その方法論の特徴についての解説にしたいと思います。

①心の構造モデル

「心が、どのようなものであるか」についての究極的な理解(解答)は、今現在、人類は持っていません。

 さまざまな心の病(精神疾患)と言われるものがありますが、その適切な治療法を見出すことさえ人類はできていないからです。(心の構造とその働きがよくわかっていないということです。厚生労働省の統計において、日本では毎年約十万人の精神疾患をもった方が増え続けています。対処する方法論が分からないからです)

 そのため、ここで取り上げる仮説も、当然、究極的なものではありませんが、心理学学説全体の傾向と、筆者自身がさまざまな現場での検証(実践)を通じて、一定の実効性があると考えている構造モデルとなります。

➁氷山モデル

 心が「氷山」のようである、というような話を聞いたことがあるかもしれません。これは、S・フロイトが創始した「精神分析 psychoanalysis」などが広めた、心の構造のイメージです。
人間の心に、私たちがよく知る、この「意識」以外に、広大な「潜在意識」「無意識」が存在しているという考えによるものです。この一般に「潜在意識」「無意識」の内容(中身)についても各流派によって、考え方はバラバラで天と地ほどの違いがあります。

 さて、私たちのこの自覚的な意識は、「潜在意識」の上に少し出た「顕在意識」であるということです。これを「日常意識」と呼びます。

 氷山は、その巨大な大きさのほとんどを海面の下にひそめていて、ほんの一部分を海面の上に出しています。私たちの心も同じだというわけです。そして、私たちの本当に深い欲求、願望、欲望は、顕在意識の届かない深い領域に存在していて、私たちはそれらに衝き動かされながら、生きているというわけなのです。

 その深い欲求は、忘れ去られた過去の出来事に由来したり、私たちの知らない先天的な要素に由来を持っているものだったりしているわけです。

 いずれにせよ、私たちのよく知る「これが自分だ」と思っているこの顕在意識(日常意識)は、心の全体の中では、氷山の一角でしかないというわけなのです。そして、私たちは、私たち自身の真の本性については、自分でもあまりよく知らないということなのです。

 そのため、精神分析などの無意識(潜在意識)を重視する流派は、人間の主体性などあてにならないものであると考えているわけです。また、そのように考える深層心理学の流れでは、「夢」というものは私たちの潜在意識の表現であると考えられています。各流派によって、夢の解釈方法や位置づけは変わりますが、大まかにはそのように考えられています。つまり、私たちは、「夢」を通して、自分の潜在意識と出会っているのです。

③変性意識状態(ASC)の存在

 さて、他に「そもそも、意識とは何か」という問題があるのですが、これも大問題であり、一旦定義を保留しておきます。ただ、この場合の「意識」とは、この顕在意識だけを指すのではなく、潜在意識も含めた意識の本質的要素考えておいていただければと思います。日常意識のことではありません。

 というのも、ここで取り上げる変性意識状態(ASC)とは、意識の本質について、私たちに不可思議な謎を突きつけてくる興味深い意識状態であるからです。変性意識状態とは、(別に一章とっていますが)この「日常意識」状態以外のさまざまな意識状態を意味している言葉です。
変性意識状態(ASC)とは何か

 さて、変性意識状態(ASC)とは、私たちのこの日常意識以外の各種の意識状態を指しています。具体的には、瞑想状態、催眠状態、シャーマニズムにおけるトランス状態、夢、ドラッグによるサイケデリック(意識拡張)状態、宗教的な神秘体験などなどです。

 例えば、スポーツ選手(アスリート)などがその最高のプレイの中で入っていくといわれる、ゾーン ZONEという状態、言葉を聞いたことがないでしょうか? プレイ中に「ボールが止まって見える」というような、高度に覚醒した意識状態のことです。これは、心理学では、フロー体験(flow experience)呼ばれる現象であり、変性意識状態(ASC)の一種と考えてよいものです。
→フロー体験とは何か フロー状態 ZONEについて

 上の図で、「拡張された非日常的意識」としたものは、フロー体験トランスパーソナル(超人格/超個)的体験のように、比較的統合された超意識的な変性意識状態(ASC)を指しています。そのため、日常意識の上に割り付けました。しかし、一方、変性意識状態(ASC)そのものは、定義にもあるように、もっと漠然とした多様な形態を持つものです。
※トランスパーソナル(超人格/超個)的体験とは、(その名の通り)個人性や自我の感覚を超えてしまうような、一種、超越的な体験を指します。

 ところで、実は、私たちは普段から、さまざまな機会に(程度の強弱はありますが)変性意識状態入り込んでもいるのです。なんら特別なものではないのです。しかし、社会的にその状態の存在がきちんと認識されていないため、そのことをあまり真面目に考えようとしないだけなのです。しかし、一方、人によっては、強い変性意識状態(ASC)によって、人生が一変してしまう経験を持つ人も多く存在しているのです(自己実現で有名な心理学者、A.マズローが重視した「至高体験 peak-experience 」などもそのような変性意識状態の一種です)。
マズロー「至高体験 peak-experience 」の効能と自己実現

 さて、そんな変性意識状態(ASC)ですが、この変性意識状態(ASC)に自覚的に親しみ、慣れてくると、「日常意識」「顕在意識」以外の広大な潜在意識の世界に、少しずつ、知見と経験が深まっていくということが起こりはじめます。
 そこに、実は、人生の秘密を解き明かす(解放する)鍵も含まれているのです。心理療法、特に、ゲシュタルト療法のような体験的心理療法は、実践の中で深い変性意識状態(ASC)入っていくことも多いので、その感覚がだんだんと磨かれていくこととなるのです。
グロフ博士のLSD体験と時代背景 インタビュー動画↓
http://hive.ntticc.or.jp/contents/interview/grof

④さまざまなアプローチ手法と心の対象領域

さて、顕在意識、日常意識、潜在意識と、私たちの心の構造モデルの仮説について見てきました。

ところで、普段、私たちが体験したり学んだりしている、さまざまな心を扱う技法、(つまり、セラピー、カウンセリング、コーチングなど)のことですが、この心のモデルに即して言うと、各手法はそれぞれ、心の或る特定領域に関わる(アプローチする)方法論だと区分けすることができるのです。

つまり、コーチングや、カウンセリング(ロジャーズ系)は、基本的にクライアントの方の顕在意識や日常意識に働きかけていく技法だといえます。心理療法の中でも、行動主義的なアプローチは、(クライアントの方の無意識を元々想定していないのでこういう定義は不本意でしょうが)顕在意識や日常意識に、働きかけていく技法だといえます。

一方、深層心理学系の心理療法や催眠療法などは、クライアントの方の顕在意識に働きかけると同時に、潜在意識にも働きかけていく技法だといえます。そして、そこに力動的なダイナミックな働きを想定しているのです。

下部の方に、精神医学の領域をプロットしました。この領域は、投薬などの症状の抑制が主なアプローチとなっています。積極的な技法的介入で、クライアントの方に働きかけるということは行ないません。

上の図で、「拡張された、非日常的(超)意識」とした、比較的統合された変性意識状態(ASC)は、伝統的には宗教的な領域受け持ってきました。少なくとも、近代社会では、その存在について無知であったり、懐疑的であるため、それらを直接扱う技法も存在していません。

しかし、60年代のサイケデリック(意識拡張)研究や運動以来、その点の理解も少しずつ進んできました。人格の個人性を超えた領域をあつかうトランスパーソナル(超個的)心理学などは、近代の心理学モデルと伝統的な宗教モデルとを統合しようとした試みだったといえます。

たとえば、下の図「ウィルバーのモデル」とは、心理学的にはやや非正統的なトランスパーソナル心理学の有名な理論家ウィルバーが唱えた「意識のスペクトル」モデルです。

ウィルバーは、世界のさまざまな心理療法や宗教をタイプ分けするにあたって、各流派が「何を、自己の真の主体として、見なし、同一化しているか」「何を、真の主体(実在)と見なしているのか」という「主体の範囲・要素」の違いによって、各心理療法をマッピング(位置づけ)していきました。

精神分析系の多くの心理療法は、「影」という潜在意識を、「自我」の内に統合するという理論を持っています。ゲシュタルト療法は、実存的・ケンタウロス的領域位置づけられています。「肉体」という潜在意識も統合していくことを目指している流派だからです。そこでは、自我と肉体を統合した「心身一元論的な自己」が、真の主体だと考えられているというわけです。

⑤当スペースの統合的アプローチ 流れる虹のマインドフルネス

さて、当スペースは、精神分析由来のゲシュタルト療法という心身一元論的アプローチを使う面からも、また気づき awareness 」を重視する点からも、クライアントの方の顕在意識と潜在意識に同時に働きかけるアプローチとなっています。また、セッションの中で現れる変性意識状態(ASC)を利用する視点からも、クライアントの方の無尽蔵な潜在意識を活かすアプローチとなっているのです。特に「拡張された非日常的意識」「トランスパーソナル(超個的)な意識」などの変性意識状態(ASC)を統合的に扱えるという点については、当スペースの他にない特徴となっています。これは、筆者自身の個人的経験からもたらされた重要なポイントです。

 というのも、ゲシュタルト療法を実践していたケン・ウィルバーなども指摘するように、心身一元論的なゲシュタルト療法的な「統合」を深く進めていくと、私たちの中にごく自然に、(個人性を超えた)トランスパーソナルな体験領域が開いていくことになるからです。実は、ここは、地続きの形で存在しているのです。

 ところで、よく勘違いされる点ですが、成熟され統合された体験の中では、トランスパーソナル(超個的)な意識と個的な実存(意識)は決して排除しあうものではありません。トランスパーソナル(超個的)な意識は、個的状態を透過するように現れてくるのです。それらは併存しているのです。決して、非現実な、宙に浮くような状態ではなく、しっかりと地に足が着いた状態であると同時に、高次の本質的な次元(価値)が透過するよう現れて出ているのです。それが統合されたトランスパーソナル状態というものです。

 これについても、ウィルバーは、未熟な前個〔プレパーソナル〕と成熟した超個〔トランスパーソナル〕の区別ということでたびたび言及しています。そのため、一定の心理的統合の後には、トランスパーソナル(超個的)な体験を深めれば深めるほど、それを統合すれば統合するほど、私たちはより「個」としての在り方や充電を鮮烈で豊かなものにできるのです。

 それを、当スペースでは、状態的にも、技法的にも、仮に「流れる虹のマインドフルネス」と総称的に呼んでいるわけです。それは、普段の自我の中に、トランスパーソナルな「青空のような広がり」を感じとれるような状態です。〈青空の通り道〉ができるような感覚です。そのようなスキルや状態を身につけることで、私たちは、「流れる虹のような」彩り鮮やかなリアリティや創造性を手に入れることができるのです。

【ブックガイド】
ゲシュタルト療法については、基礎から実践までをまとめた総合的解説、
拙著『ゲシュタルト療法 自由と創造のための変容技法』をご覧下さい。

気づきや変性意識状態(ASC)を含めたより総合的な方法論については、拙著↓
入門ガイド『気づきと変性意識の技法:流れる虹のマインドフルネス』
および、深遠な変性意識状態(ASC)事例も含んだ
『砂絵Ⅰ 現代的エクスタシィの技法 心理学的手法による意識変容』
をご覧下さい。

↓動画「【図解】心の構造モデルと心理変容のポイント」

↓動画解説 「変性意識状態(ASC)とは何か その可能性と効果の実際」


われに還る宇宙

 

  核形成という考え方は、塑性物質が、ある姿に固まる性質を理解するうえで役に立つ。第二ステージの場合、この「固着」は粒子そのものである。いっぽう、第六ステージの場合は、目標動物、つがい相手、獲物など、ある強さで狙い定めた対象なり、イメージなりがこれである。(中略)

  人間ないし人間意識にとって、こうした核形成は、ユングが元型と呼ぶものにほかならない。これらは、ある強度charge(チャージは「電荷」と通ずる)を 帯びており、正か負の価を持っていて、心理学用語でいうと、何らかの刺激を引き起こしたり、さまざまな反応パターンないし動因を誘発したりする。人間のよ り大きな発達の中で見れば、これは感情エネルギーの凝縮したものであり、その不可抗力的な力も、けっして克服不可能ではないし、それらを意識の中へ呼び起 こして、そこに捕らえられたエネルギーを解き放つこともできる。

  ほとんどの心理療法は、こうした固着したエネルギーの「核形成」をほぐすことにかかわるが、これは精神エネルギーを自由にしてやる点で、質量を運動エネルギーへと解放することに通じている。


アーサー・M・ヤング(プラブッダ訳)

 

 


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エスの本

 

  人間は、決して、この子どもらしさから抜け出すことはありません。人間が、完全におとなになり切ることはないからです。まれに、そう見えることがあっても、表面だけのことです。子どもが、大きい子のまねをするように、ぼくたちは、おとなのまねをしているだけです。

  深 く生きようとすれば、たちまち、ぼくたちは子どもになります。エスには、年齢がありませんし、エスこそは、ぼくたちの本当の姿ですから。最大の悲しみ、あ るいは最高の歓びの瞬間の人間を見てごらん。顔は子どもの顔になり、身振りも子どもらしくなり、声はふたたび柔らかくなり、心臓は子どものときのように躍 り、目は輝くか曇るかします。

  たしかに、ぼくたちはこうしたことを隠そうとしますが、それは明らかです。注意さえすれば、すぐに、気づきます。ぼくたちが、他人のうちのこれほど目立った兆候を見過ごすのは、ぼくたち自身のうちの、それに気づきたくないからです。

 

G・グロデック(岸田秀他訳)

 

 

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「ワーク」とはⅡ その過程と構造

◆ワークのプロセス(過程)と促進

ゲシュタルト療法のワークは、

クライアントの方の、

内的プロセスに、

そった形で展開していきます。

 

そして、ワークは、

表面的な、紆余曲折の姿の背後に、

人間生体の自律的なプロセスゆえに、

深い部分で、

ある類似した流れと骨組みを持っています。

単純化した図をご覧ください

 

ワークのプロセスは、

核の要素だけを取り出すと、

ゲシュタルトの形成と破壊のサイクルの、

変奏だともいえます。

 

そもそも、

未完了の体験(未完了のゲシュタルト)を、

生み出したのは、

欲求不満によるサイクルの凍結(フリーズ)であるので、

その未完了のゲシュタルトの表出(充足)と破壊のサイクル

という形をとるのです。

 

ここでは、実際のワークが、

どのような手続きをとるのか、

「目的①」の未完了の体験を完了するタイプの、

ワークを例にとって見てみましょう。

 

※「目的②」の葛藤の解消タイプも、

プロセスは、おおよそ同じです。

下段に、図のみ、記載しました。

 

 

1.「入口」(開始)

まず、クライアントの方と、

 ファシリテーターは、

 合意して、ワークという、

 特別な時空に入ります。

↓↓↓

 

2.「感覚・探索

…クライアントの方は、

解決したいテーマに関連して、

自分の中から湧いてくる、

感覚や感情のゲシュタルト(形)に、

注意を向けます。

…ファシリテーターは、探索を促進するための、

焦点化や、提案を行なってきます。

…生体というものは、未完了のゲシュタルトや、

 その付近の感情を刺激されると、

異物を吐き出すかのように、肉中の棘を排出するかのように、

未完了のゲシュタルトを、

知覚の前景に押し出してきます。

おそらく、生体の蠕動運動のためです。

…人は、この内的感覚への没頭の中で、

 軽度な変性意識状態(ASC)に入っていきます。

 そのため、普段は気づけない微細な情報に、

 気づくことができるのです。

↓↓

 

3.「未完了の体験の発見

…そのような中で、クライアントの方は、

 自分の中で、つかえている、

核心的な未完了の(感情や感覚)を、

明確にしていきます。

…または、ファシリテーターが、

 重要なポイントを、色々と焦点化してきます。

↓↓

 

4.「技法的場面設定

…ファシリテーターが、

 その未完了の体験を完了するための、

色々な、技法的な提案を行なってきます。

 「こういうことを行なってみてはどうですか?

 「こう言ってみる(表現してみる)のはどうですか?

 相手や登場人物、言葉や行為等の設定です。

…その設定が、クライアントの方にピッタリと来る場合、

 クライアントの方は、無理のない範囲で、それを行なってみます。

↓↓

 

5.「未完了の体験の完了

…技法的提案内容が、

 クライアントの方に、ピッタリと来るものであった場合、

 クライアントの方は、その実演を通して、

 感情表出と意識化と行ない、

 未完了の体験を完了していきます。

 葛藤と苦痛が消失し、

 アーハ体験や、エネルギーの増大、

 大きな統合感、力の獲得の感じを得ることになります。

↓↓

 

6.「出口」(終了)

ワークという、特別な時空から出ます

 心理療法でいう、「閉じる」プロセスです。

 ワークの内容を完了・主体化して、

 日常的現実に戻ります。

 

さて、前段で、

「生体の自律的プロセス」と書きましたが、

ワークの経過というのは、

クライアントのプロセスをきちんとフォローするかぎり、

音楽的とでもいうような、

類型的な「自然のプロセス」示すものです。

 

ファシリテーターの行なうことは、

このプロセスを阻害しないように、
その名のとおり、
「促進」していくことだけなのです。
 
 

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 ワークのプロセス 2

心身一元論的なアプローチⅡ

「心身一元論的・ボディワーク的アプローチ」より

 


②ゲシュタルト療法における心身一元論的開放

 

さて、ゲシュタルト療法の、

心身一元的論的なアプローチでは、

身体チャンネルを通して、

クライアントの意識しない多様な自我が、

表れてくることを見ました。

 

そして、

ボディ・シグナルを糸口に、

その多様な自我と、

コンタクトすること(技法)についてを見ました。

 

さて、そして、

ここからが重要なのですが、

ゲシュタルト療法においては、

その糸口から、多様な自我の、

深く十全な自己表現、

深い十全な感情表現というものを、

探っていきます。

 

意図せずに、

身体チャンネルに現れる自我とは、

未完のゲシュタルトとして、

やり残した仕事として、

抑圧されていた「自我」だからです。

そして、

その自我に、

十分な表現と存在の場を与えてあげることが、

必要だからです。

 

そして、その感情表現の際に、

この心身一元的な視点が、

とても重要になります。

 

ライヒが、

筋肉の鎧をもつ、防衛的な身体には、

十分な感情体験がないことに気づいたように、

十分な感情体験とは、

十分な身体的運動(表現)が、

ともなうからです。

 

そのため、

ゲシュタルト療法では、

クライアントの方の感情表現の際の、

身体として表現に注目します。

 

身体的な反応や、

ブロックが表れたりする際は、

さまざまなサポートを行ないます。

そして、十分な表出が、

行なわれるようにするのです。

 

そして、実際、

ゲシュタルト療法においては、

クライアントとして、

そのような、心身一元的な、

全身的な、表現活動を繰り返していると、

表現と感情の流れによって、

段々と、

身体のブロックが解除されてきます。

 

身体が変わっていくのが、

実感されます。

呼吸がなめらかになり、

喉や胸がひらき、

骨盤の詰まりがなくなります。

身体の感受性が高まります。

快楽の感度も高まります。

その結果、

使えるエネルギーが増大して、

エネルギッシュになります。

 

(また、目的ではありませんが、

―目的でもいいですが―

年齢も、若く見られるようになります)

 

このように、

体験的心理療法では、

心身一元論的なアプローチが多いのですが、

ワークの進展に従い、

心理的にも、

肉体的(物理的)にも、

全身的な開放が、進んでいくのです。

進化が、

分かりやすい所以です。

 

動画解説「心身一元論的アプローチⅠ」

動画解説「心身一元論的アプローチⅡ」

 



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ブックリスト 関連書籍の紹介

◆ゲシュタルト療法/体験心理療法/関連領域

 

『ゲシュタルト療法』F・パールズ/倉戸ヨシヤ訳(ナカニシヤ出版)

『ゲシュタルト療法バーベイティム』F・パールズ/倉戸ヨシヤ訳(ナカニシヤ出版)

『記憶のゴミ箱』F・パールズ/原田成志訳 (新曜社)

『聖なる愚か者』リッキー・リビングストン/吉福伸逸訳(アニマ2001)

『ゲシュタルト・セラピー』トニー・キー他/岡野嘉宏訳(社会産業教育研究所)

『気づき』ジョン・O・スティーブンス/岡野嘉宏訳(社会産業教育研究所)

『ゲシュタルト療法』倉戸ヨシヤ(駿河台出版)

『ゲシュタルト療法入門』倉戸ヨシヤ編(金剛出版)

『気づきのセラピー』百武正嗣(春秋社)

『家族連鎖のセラピー』百武正嗣(春秋社)

『成長のための効果的な方法』E・マーカス/国谷誠朗訳(チーム医療)

『自己実現への再決断』M&Rグールディング/深沢道子訳(星和書店)
『ゲシュタルト・セラピーの手引き』S・ジンジャー/柴田和雄訳 (創元社)

『性格と神経症』C・ナランホ/柳朋子訳 (春秋社)

『エンカウンター・グループ』C・ロジャーズ/畠瀬稔他訳 (創元社)

『生きがいの探求』ウィル・シュッツ/斎藤彰悟,到津守訳(ダイヤモンド社)

『すべてはあなたが選択している』ウィル・シュッツ/池田絵実訳(翔泳社)

『エスリンとアメリカの覚醒』W・T・アンダーソン/伊東博訳 (誠信書房)

『引き裂かれた心と体』A・ローウェン/新里里春他訳 (創元社)

『バイオエナジェティックス』A・ローエン/菅靖彦他訳 (春秋社)

『バイオエナジェティックス』A・ローウェン他/石川中他訳(思索社)

『オルゴン療法がわたしを変えた』O・ビーン/片桐ユズル他訳(アニマ2001)

『ウィルヘルム・ライヒ―生涯と業績』M・シャラフ/村本詔司他訳 (新水社)

『ことばが劈かれるとき』竹内敏晴(筑摩書房)
『原初からの叫び』A・ヤノフ/中山善之訳 (講談社)

『脳を超えて』S・グロフ/菅靖彦他訳 (春秋社)

『自己発見の冒険Ⅰ』S・グロフ/菅靖彦他訳 (春秋社)

『魂の航海術』S・グロフ/菅靖彦訳 (平凡社)

『ハコミセラピー』ロン・クルツ/高尾威廣他訳 (星和書店)

『サイコシンセシス』R・アサジョーリ/国谷誠朗他訳 (誠信書房)

『意志のはたらき』R・アサジョーリ/国谷誠朗他訳 (誠信書房)

『内なる可能性』P・フェルッチ/国谷誠朗他訳 (誠信書房)

『ドリームボディ・ワーク』A・ミンデル/藤見幸雄他訳 (春秋社)

『ドリームボディ』A・ミンデル/藤見幸雄監訳 (誠信書房)

『シャーマンズ・ボディ』A・ミンデル/藤見幸雄他訳 (コスモス・ライブラリー)

『プロセス指向心理学』A・ミンデル/高岡よし子他訳 (春秋社) 

『うしろ向きに馬に乗る』A・ミンデル/藤見幸雄他訳 (春秋社)

『昏睡状態の人と対話する』A・ミンデル/藤見幸雄他訳 (NHKブックス)

『紛争の心理学―融合の炎のワーク』A・ミンデル/青木聡訳(講談社現代新書)  

『プロセス指向のドリームワーク』A・ミンデル/藤見幸雄他訳(春秋社)

『24時間の明晰夢』A・ミンデル/藤見幸雄他訳 (春秋社)

『身体症状に「宇宙の声」を聴く』A・ミンデル/藤見幸雄他訳(日本教文社)

『人間関係にあらわれる未知なるもの』A・ミンデル/富士見幸雄他訳(日本教文社)

『大地の心理学』A・ミンデル/藤見幸雄他訳 (春秋社)

『ワールドワーク』A.ミンデル/富士見 ユキオ他訳 (誠信書房)

『ディープ・デモクラシー』A・ミンデル/富士見ユキオ他訳 (春秋社)

『プロセス・マインド』A・ミンデル/ 青木聡他訳(春秋社)

『メタスキル』エイミー・ミンデル/諸富祥彦他訳(コスモス・ライブラリー)

『痛みと身体の心理学』藤見幸雄 (新潮選書)

『プロセス指向心理学入門』藤見幸雄他 (春秋社)

『アンコモン・セラピー』 J・ヘイリー/高石昇他監訳(二瓶社)

『ミルトン・エリクソンの催眠療法』 J・ヘイリー編/門前進訳(誠信書房)

『ミルトン・エリクソン入門』 W・H・オハンロン/森俊夫他訳(金剛出版)

『ミルトン・エリクソンの催眠テクニック(Ⅰ・Ⅱ)』R・バンドラー、J・グリンダー/浅田仁子訳(春秋社)
『人間コミュニケーションの意味論(Ⅰ・Ⅱ)』R・バンドラー、J・グリンダー/尾川丈一他訳(ナカニシヤ出版)
『あなたを変える神経言語プログラミング』R・バンドラー、J・グリンダー/酒井一夫訳(東京図書)
『神経言語プログラミング』R・バンドラー/酒井一夫訳 (東京図書)

『リフレーミング―心理的枠組の変換~』R・バンドラー、J・グリンダー/吉本武史他訳(星和書店)
『心の扉をひらく』C・アンドレアス他/酒井一夫訳(東京図書)

『NLPヒーローズ・ジャーニー』R・ディルツ、S・ギリガン/浅田仁子訳(春秋社)

『愛という勇気』S・ギリガン/崎尾英子訳 (言叢社)

『ジェネラティブ・トランス』S・ギリガン/上地明彦訳(春秋社)
『身体はトラウマを記録する』B・ヴァン・デア・コーク/柴田裕之訳(紀伊国屋書店)

『アクセプタンス&コミットメント・セラピー(ACT)第2版』S・C・ヘイズ他/武藤崇他監訳(星和書店)

『ACTを学ぶ』 S・C・ヘイズ他/熊野宏昭他監訳(星和書店)

『ACTをはじめる』 S・C・ヘイズ他//武藤崇他訳(星和書店)

『よくわかるACT』R・ハリス/武藤崇他監訳(星和書店)

『不安障害のためのACT』 G・H・アイファート他/三田村仰他監訳(星和書店)

『関係フレーム理論(RFT)をまなぶ』N・トールネケ武藤崇他監訳(星和書店)

『脱サイコセラピー論』B・ヘリンガー/西澤 起代訳 (メディアート出版)

『愛の法則―親しい関係での絆と均衡』 B・ヘリンガー/チェトナ小林訳 (和尚EJ)

『プレイバックシアター入門』宗像佳代 (明石書店)

『この世とあの世の風通し』加藤清・上野圭一 (春秋社)

『ひき裂かれた自己』R・D・レイン/阪本健二他訳 (みすず書房)

『経験の政治学』R・D・レイン/笠原嘉他訳 (みすず書房)

『生の事実』R・D・レイン/塚本嘉寿他訳 (みすず書房)

『エスの本―無意識の探究』G・グロデック/岸田秀他訳 (誠信書房)

『対象関係論の展開』H・ガントリップ/小此木啓吾他訳 (誠信書房)

『遊ぶことと現実』D・W・ウィニコット/橋本雅雄訳 (岩崎学術出版社)

『情緒発達の精神分析理論』D・W・ウィニコット/牛島定信訳 (岩崎学術出版社)

『追補 精神科診断面接のコツ』神田橋 條治 (岩崎学術出版社) 

『精神療法面接のコツ』神田橋 條治 (岩崎学術出版社) 

『精神科養生のコツ 改訂』神田橋 條治 (岩崎学術出版社) 

『治療のこころ』シリーズ 神田橋 條治 (花クリニック)

『人格障害の精神療法』福島章他編 (金剛出版)

『ものぐさ精神分析』岸田秀 (中公文庫)

『中空構造日本の深層』河合隼雄 (中公文庫)
『母性社会日本の病理』河合隼雄 (講談社+α文庫)

 

 

◆変性意識状態(ASC)その他関連

 

『宗教的経験の諸相(上・下)』W・ジェイムズ/桝田啓三郎訳 (岩波文庫)

『知覚の扉』A・ハクスリー/河村 錠一郎訳(平凡社)

『チベット死者の書 サイケデリック・バージョン』T・リアリー他/菅靖彦訳(八幡書房)

『意識(サイクロン)の中心』ジョン・C・リリー/菅靖彦訳(平河出版社)

『サイエンティスト』ジョン・C・リリー/菅靖彦訳(平河出版社)

『バイオコンピュータとLSD』ジョン・C・リリー/菅靖彦訳(リブロポート)

『ジョン・C・リリィ 生涯を語る』ジョン・C・リリィ他/中田周作訳(筑摩書房) 

『フロー体験 喜びの現象学』M.チクセントミハイ/今村浩明訳(世界思想社)

『フロー体験入門』M.チクセントミハイ/大森弘監訳(世界思想社)
『超人の秘密:エクストリームスポーツとフロー体験』S・コトラー/熊谷玲美訳(早川書房)

『極限への旅』ロブ・シュルタイス/近藤純夫訳(日本教文社)

『クンダリニー』ゴーピ・クリシュナ/中島巌訳 (平河出版社)

『意識と本質』井筒俊彦 (岩波文庫)

『イスラム哲学の原像』井筒俊彦 (岩波新書)

『叡知の台座』井筒俊彦他 (岩波書店)

『ユング自伝(1・2)』河合隼雄他訳 (みすず書房)

『ヘルメティック・サークル』M・セラノ/小川捷之,‎永野藤夫訳(みすず書房)

『人間性の最高価値』A.H.マスロー/上田吉一訳(誠信書房)

『死の地帯』ラインホルト・メスナー/尾崎治訳(山と渓谷社)

『明晰夢』S・ラバージ/大林正博訳(春秋社)

『深層からの回帰』S・グロフ他/菅靖彦他訳 (青土社)

『魂の危機を超えて』S・グロフ他/安藤治他訳 (春秋社)

『スピリチュアル・エマージェンシー』S・グロフ他/高岡よし子他訳(春秋社)

『無意識の探険』吉福伸逸 (TBSブリタニカ)

『トランスパーソナル・セラピー入門』吉福伸逸 (平河出版社)

『自我と「力動的基盤」』M・ウォシュバーン/安藤治他訳(雲母書房)

『無境界』K・ウィルバー/吉福伸逸訳 (平河出版社)

『意識のスペクトル 1・2』 K.ウィルバー/吉福伸逸他訳 (春秋社)

『アートマンプロジェクト』K.ウィルバー/吉福伸逸他訳 (春秋社)

『トランスパーソナル心理療法入門』 諸富祥彦編著 (日本評論社)

『チベット死者の書』 川崎信定訳 (筑摩文庫)

『サイケデリックス』D・M・ターナー/本田礼訳 (第三書館)

『ドン・ファン・シリーズ』C・カスタネダ/真崎義博他訳(二見書房、太田出版)

『ローリング・サンダー』ダグ・ボイド/北山耕平訳 (平河出版社)

『アメリカ・インディアンの口承詩』金関寿夫(平凡社)

『シャーマニズム(上・下)』M・エリアーデ/堀一郎訳 (筑摩文庫)
『シャマニズム』U.ハルヴァ/田中克彦訳 (三省堂)

『シャーマンへの道』M・ハーナー/吉福伸逸訳 (平河出版社)

『シャーマニズムの精神人類学』ロジャー・N・ウォルシュ/安藤治他訳(春秋社) 

『聖なる量子力学9つの旅』フレッド・アラン・ウルフ/小沢元彦訳 (徳間書店)

『奇蹟を求めて』P・D・ウスペンスキー/浅井雅志訳 (平河出版社)

『弟子たちに語る』G・I・グルジェフ/前田樹子訳 (めるくまーる)

『夢ヨーガ』タルタン・トゥルク/林久義訳 (ダルマワークス)

『虹と水晶』ナムカイ・ノルブ/永沢哲訳 (法蔵館)

『チベット密教の瞑想法』ナムカイ・ノルブ/永沢哲訳 (法蔵館)

『臨死体験』B・グレイソン他編/笠原敏雄訳 (春秋社)

『死を超えて生きるもの』ゲイリー・ドーア編/井村宏治他訳(春秋社) 

『臨死共有体験』R・ムーディ/堀天作訳 (ヒカルランド)

『オメガ・プロジェクト』ケネス リング/片山陽子訳(春秋社)

『幻覚世界の真実』テレンス・マッケナ/京堂健訳(第三書館)

『神々の糧(ドラッグ)』テレンス・マッケナ/小山田義文他訳 (第三書館)

『ビー・ヒア・ナウ』ラム・ダス他/吉福伸逸他訳 (平河出版社)

『ダス・エナーギ』P・ウィリアムズ/MOKO訳 (春秋社)

『体外への旅』ロバート・A・モンロー/川上友子訳 (ハート出版)

『魂の体外旅行』ロバート・A・モンロー/坂場順子訳 (日本教文社)

『究極の旅』ロバート・A・モンロー/塩崎麻彩子訳 (日本教文社)

『投影された宇宙』M・タルボット/川瀬勝訳 (春秋社)

『われに還る宇宙』アーサー・M・ヤング/プラブッダ訳 (日本教文社)

『変性意識の舞台』菅靖彦 (青土社)

『洗脳体験』二澤雅喜(宝島SUGOI文庫)

 

 

◆その他の関連領域

 

『日本的霊性』鈴木大拙 (角川文庫)

『精神の生態学』G・ベイトソン/佐藤良明訳 (新思索社)

『精神と自然』G・ベイトソン/佐藤良明訳 (新思索社)

『天使のおそれ』G・ベイトソン他/星川淳他訳 (青土社)

『知恵の樹』U・マトゥラーナ他/管啓次郎訳 (ちくま学芸文庫)

『暗黙知の次元』M・ポランニー/高橋勇夫訳 (ちくま学芸文庫)

『知覚の現象学(Ⅰ・Ⅱ)』 M・メルロ=ポンティ/竹内 芳郎他訳 (みすず書房)

『眼と精神』M・メルロ=ポンティ/木田元他訳 (みすず書房)

『自分を信じて生きる―インディアンの方法』松木正 (小学館)

『あるがままの自分を生きていく―インディアンの教え』松木正 (大和書房)

『ビジョン・クエスト』S・フォスター他/高橋裕子訳 (VOICE)

『千の顔をもつ英雄(上・下)』J・キャンベル/平田武靖他訳 (人文書院)

『生きるよすがとしての神話』J・キャンベル/飛田茂雄他訳 (角川書店)

『神話の力』J・キャンベル他/飛田茂雄訳 (早川書房)

『昔話の形態学』V・プロップ/北岡誠司他訳 (水声社)

『通過儀礼』ファン・ヘネップ/綾部恒雄他訳 (岩波文庫)

『儀礼の過程』V・ターナー/冨倉光雄訳 (新思索社)

『ハンテッド』T・ブラウン.Jr/さいとう ひろみ訳 (徳間書店)

『グランドファーザーの生き方』T・ブラウン.Jr/さいとうひろみ訳(ヒカルランド)

『ヴィジョン』T・ブラウン.Jr/さいとう ひろみ訳 (徳間文庫)

『狩猟の哲学』オルテガ イ・ガセー/西沢龍生訳 (吉夏社)

『タントラ 狂気の智慧』C・トゥルンパ/高橋ユリ子他訳 (めるくまーる)

『タントラへの道』C・トゥルンパ/風砂子 デ・アンジェリス訳 (めるくまーる)

『秘められた自由の心』タルタン・トゥルク/林久義訳 (ダルマワークス)

『クリシュナムルティ・目覚めの時代』M・ルティエンス/高橋重敏訳 (めるくまーる)

『自己と組織の創造学』ウィル シュッツ/斎藤彰悟,到津守訳(ダイヤモンド社)

『U理論』C・オットー・シャーマー/中土井僚,由佐美加子訳(英治出版)
『リアリティのダンス』A・ホドロフスキー/青木健史訳(文遊社)

『実験演劇論』J・グロトフスキ/大島勉訳(テアトロ社)

『造形思考(上・下)』P・クレー/土方定一訳(筑摩書房』
『アート・スピリット』ロバート・ヘンライ/野中邦子訳(国書刊行会)

『フリープレイ 人生と芸術におけるインプロヴィゼーション』S・ナハマノヴィッチ/若尾裕訳(フィルムアート社』
『アウトサイダー・アート』(求龍堂)

『ネクロノミコン(Ⅰ・Ⅱ)』H・R・ギーガー/山形浩生訳 (河出書房新社)




※気づきや統合、変性意識状態(ASC)への

より総合的な方法論については、拙著↓
入門ガイド
および、
『砂絵Ⅰ 現代的エクスタシィの技法 心理学的手法による意識変容』
をご覧下さい。

マジック…

テイクを繰り返し、

「何が足たりない?」と聞くと―

(キューブリック)は、

「マジックだ」と。

トム・クルーズ





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および、
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「ワーク」とは Ⅳ 通過儀礼とコミュニタス

さて、

「ワークとは」では、

そのセッションの体験過程について

見ました。

 

ここでは、

その構造とプロセスが、

どのようになっているのかを、

少し普遍的な視点から、

見ていきたいと思います。

 

ここで、

ひとつ参考になるモデルがあります。

人類学者ファン・へネップが記し、

ヴィクター・ターナーが、敷衍した

「通過儀礼」の過程についてのモデルです。

 

それによると、

通過儀礼に参加する者は、

次の3つのプロセスを経て、

通過儀礼を完了していきます。

 

分離・離脱(separation)

周縁・境界(margin/limen)

再統合・集合(aggregation)

です。

 

儀礼の参加者は、

①まず、構造化された日常生活(日常性)から、切り離され、離脱します。

②次に、境界状態(リミナリティ)にある、非構造的・コミュニタス的な存在に、

変容していきます。

この状態は、日常性の文脈(意味)が、

相対化(無化)された、曖昧で、両義的な状態です。

③再び、構造化された世界に戻ってきます。

このようなプロセスを経るというわけです。

 

実は、このようなプロセスは、

ゲシュタルト療法のワーク(セッション)におけるプロセスと、

大変似通ったものと、なっているのです。

 

ワークの体験過程においては、

①まず、ワークのセッション空間に入るということで、

 クライアントは、普段の日常性から切り離され(離脱)ます。

②次に、ワークが、進展していくと、

クライアントは、感覚的な没入状態から、

軽度の変性意識状態に入りこみます。

それは、リミナリティとコミュニタスの領域であり、

そこは、意識と無意識との交流が起こっている状態です。

③ワーク終盤では、無意識からの力(資源)を持ち帰りつつ、

日常的な自我と、統合をはかっていきます。

 

以上のように、

ワークの体験過程自体が、

ある種の通過儀礼的な過程(構造)を、

持っているのです。

 

ところで、

V・ターナーは、上記の過渡的状態、

境界状態(リミナリティ)に現れる、

存在状態を、「コミュニタス」と呼びました。

そして、

社会におけるコミュニタスの機能を、

構造化された日常性や社会に、

対置したわけですが、

そのコミュニタスの特性を、

さまざまに記しています。

 

「コミュニタスは、実存的な性質のものである。

それは、人間の全人格を、他の人間の全人格との関わり合いに、

巻き込むものである」

「コミュニタスは、境界性(リミナリティ)において、

社会構造の裂け目を通って割り込み、

周辺性(マージナリティ)において構造の先端部に入り、

劣位性(インフェリオリティ)において構造の下から押し入ってくる。

それは、ほとんどいたるところで、

聖なるもの、ないし"神聖なるもの"とされている。

恐らく、それが構造化され制度化された諸関係を

支配する規範を超越し、

あるいは解体させるからであり、

また、それには未曾有の力の経験が

ともなうからであろう」

(ターナー『儀礼の過程』冨倉光雄訳 新思索社)

 

ここでは、コミュニタスの力が、

社会の構造を、再編する力として、

さまざまな社会階層から、

流入する姿が描かれていますが、

これは、心のモデルとしても、

同様に見ることができます。

 

既存の日常意識の構造に、

沸騰した無意識の力が交錯し、

心の構造そのものを、

刷新・再編するプロセスです。

 

そして、このことは、

ゲシュタルト療法のワークにおいても、

起こってくるというわけです。 



※気づきや統合、変性意識状態(ASC)への

より総合的な方法論については、拙著↓
入門ガイド

※この通過儀礼と、人格的変容の全体像については、

拙著をご覧ください。↓

『砂絵Ⅰ: 現代的エクスタシィの技法 心理学的手法による意識変容』

 

 


【PART1 Basic】ゲシュタルト療法
ゲシュタルト療法【基礎編】
ゲシュタルト療法【実践・技法編】
ゲシュタルト療法【応用編】
「セッション(ワーク)の実際」

【PART2 Standard】
気づきと変性意識の技法 基礎編
変性意識状態(ASC)とは
「英雄の旅」とは
体験的心理療法
NLP 普及・効果・課題
禅と日本的霊性
野生と自然

【PART3 Advanced】
気づきと変性意識の技法 上級編
変性意識状態(ASC)の活用
願望と創造性の技法
その他のエッセイ

【PART4 当スペース関係】
フリー・ゲシュタルトについて
セッションで得られる効果
なぜ、ゲシュタルトなのか
メニュー/料金
著作紹介
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夢のワーク ゲシュタルト療法の場合

さて、「夢」は、

無意識にいたる王道とも言われ、

心理療法の各派が

重視しているものです。

 

ゲシュタルト療法においても、

独自の理論や、

ワークの技法を持っています。

 

実際のところ、

ゲシュタルト療法の、

夢のワークは、大変ユニークなもので、

新鮮な気づきを得ることが、

できるものとなっています。

 

ここでは、

その方法論や手順について、

記していきましょう。

 

 

①理論

 

ゲシュタルト療法では、

夢に登場してくる人物や、

事物(風景の含めて)とは、

クライアントの方の「断片化された自我」

であると考えます。

 

クライアントの方の心の全体が、

夢として、

現れていると考えるわけです。

そのため、

通常のワークと同じく、

クライアントの方が、

それぞれの自我の状態をよく体感し

気づきを得て、

自我同士の交流や統合を図っていくことが、

ワークの目的となります。

 

 

②手順1 現在形で話してもらう

 

まずは、

クライアントの方トに、

夢の話をしてもらいます

 

この時、ポイントがあります。

夢の話を、

「現在形で」話してもらうのです。

 

通常、人は、夢の話をする時に、

「~であった。~でした。」と、

過去形で話します。

 

しかし、このワークでは、

それを、夢を見ている当事者になって、

「今~しています」

「今、~が~しています」

と現在形で、話してもらうのです。

 

夢とは、

常に生きつづけている無意識の表現です。

このような話し方に変えることにより、

クライアントの方は、

ダイレクトに感じることができます。

 

また、過去形の回想形式では、

要約されてしまうことによって、

見過ごされてしまう、

小さな場面や細部、

または情動の反応に、

細かく気づくことができるからです。

(クライアントの方の、

反応が顕著な場合は、

そこからすぐに通常のワークに、

うつります)

 

 

③手順2 実演化する(登場人物になる)

 

夢を話してもらった後に、

クライアントの方に、

 

気になる場面を、

ピックアップしてもらいます。

その「場面」を、ワークの素材としていきます。

 

その場面の中で、

クライアントの方が「気になる」、

色々な登場人物や事物を、

エンプティ・チェアに置いていきます。

 

そして、エンプティ・チェアのワークと同様に、

その役に、なってもらい、

その夢人物の背後に、

とのような欲求や自我がひそんでいるか、

探っていきます。

 

エンプティ・チェアのワークと同様に、

出てくるプロセスにしたがって、

ワークを展開していきます。

 

ところで、

通常、夢の中で現れる自分=主体は、

普段の日常的現実の中で、

自分が同一化しがちな自分です。

 

一方、自分以外の他者・事物は、

大概、自分が排除し、切り離してdisownいたり

周縁化marginalizeしている、

自我が多いものです。

 

しかし、実際に、

それらの自我状態になってみると(同一化してみると)、

それは、大概、秘めた智慧を持っており、

現在の人生に対する、

さまざまな(実存的な)ヒントを与えてくれることが、

多いのです。

 

さて、以上が、

ゲシュタルト療法における

夢のワークの進め方のあらましとなります。

 

夢のワークは、

実際に体験してみると、

私たちの心の中の、

深い智慧や可能性を知る、

新鮮な機会となります。

 

また、

私たちの内的世界への信頼を深め、

内なる創造力に接触する機会にも、

なるのです。

 


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【PART1 Basic】ゲシュタルト療法

ゲシュタルト療法【基礎編】

ゲシュタルト療法【実践・技法編】

ゲシュタルト療法【応用編】

「セッション(ワーク)の実際」

 

【PART2 Standard】

気づきと変性意識の技法 基礎編

変性意識状態(ASC)とは

「英雄の旅」とは

体験的心理療法

NLP 普及・効果・課題

禅と日本的霊性

野生と自然

 

【PART3 Advanced】

気づきと変性意識の技法 応用編

変性意識状態(ASC)の活用

創造性開発 creativity development の技法

その他のエッセイ

 

【PART4 当スペース関係】

フリー・ゲシュタルトについて

セッションで得られる効果

 なぜ、ゲシュタルトなのか

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ビジョン・クエスト…

グラハム 

 

 彼はいいやつで―そして、ヘロイン中毒だった。ビジョン・クエストのことをはじめて聞いたのは、元中毒者(ジャンキー)たちの治療コミュニティにいた頃である。最初から、彼は自分の力試しとして、大自然の力とともに、ひとりで過ごすことに、誰よりも熱意を示していた。カウンセラーたちも皆、それが彼にとって、有益だろうと口をそろえた。

 社交上は、彼はスターだった。活力に満ちた魅力的な男性で、気取らず、知性をもって話した。しかし、ひとたび、治療コニュニティの支援組織や友人たちと別れ、一人サン・ラファエロの街頭へ、昔のヤク仲間たちがひと嗅ぎやろうぜと待ち伏せ、彼も自分たちと同類なんだということをなんとか証明しようと手ぐすねひいているところに戻ったとき、彼がどうするか、誰にも分からなかった。

  だから、彼は、治療コミュニティの友達連中を伴って、ネバダ州トイヤベ山脈のリーズ川源流へと赴いた。カウンセラーのアルと看護婦のアンジェラ(必要に応 じてメタドンを投与するため)も同行した。そこにいる間、彼は蛇がぬくもった岩にすり寄っていくように、山々になついた。アッパー・ソーミル・クリークの 土手で拾ってきたミミズを持って、レインボウズ川とイースタン川で、自分の限界に挑戦した。柳の木のうろで寝た。小谷を登っては、矢じりを握って帰って来 た。馬のように食べ、子羊のよう眠った。「これこそ、ぼくにぴったりの生活だ」と、彼は宣言し、カウボーイになるんだと話していた。彼が、治療コミュニティにおけるスターだとしたら、高地の荒れ野では、一輪の花だった。

  ビジョン・クエストから戻ってきたとき、彼はひとまわり大きくなっていた。自己を試し、自己を分析するいい時間を過ごしたのだった。晩夏の陽光は力強く、 純粋だ。彼の肉体の不純物を焼き尽くした。断食は、内側から、彼を浄めた。彼は、川の近くに生えていた茂みから、野生のローズヒップを摘み、濃く甘やかな ハーブティをいれた。その眼は澄んで、動物のそれのように機敏だったし、体は引き締まり、こんがりと焼けていた。とにかく、とんでもなくいい状態のよう だった。

 その夜、分かち合いとおびただしいみやげ話のあと、彼はもう戻らないつもりだ、とみんなに告げた。都会にはもうなんの興味もない。ここにとどまって、場合によっては谷間の牧場かどこかで雇われてもいい。

  それから私たちは、帰ることについてじっくり語り合った。たき火は、芳しいジュニパーの香りを吸い込み、星々は忘却を誘う砂原の上をゆっくりと踊りながら 横切っていく。帰ってモンスターに直面することへの恐怖こそ、本当のモンスターなのだ、というのが私たちの結論だった。

 翌朝、私たちは出発した。この時は、悲しかった。峡谷の斜面を登っていくとき、川は、緑色の蛇が柳の皮を脱いでいるかのようにキラキラときらめいていた。「ここで学んだことは決して忘れない」とグラハムは誓った。

  一ヵ月後、彼は治療コミュニティを卒業して、サン・ラファエロに戻り、パタルマで養鶏場の清掃の仕事について暮らし始めた。仕事場へはバスで通勤し、毎晩 ぐったりと疲れて帰宅した。彼にヘロインの手ほどきをした昔のガールフレンドと、よりを戻した。でも、ヤクはやっていないよ、と私たちには話していた。

  私は二度ほど、彼の住まいに立ち寄った。窓がなく、部屋の片隅にテレビがあるだけの気が滅入るようなアパートだった。もう一方の隅には神殿ができていた― 祭壇の絵の前に鹿の頭蓋骨―、一対の枝角、黒曜石の細片とビジョン・クエストの写真や記念の品を飾ったものである。彼はポイント・レヤやヨセミテへ行こう かと思う、とあいまいに話していたが、自分をすり減らしていくような今の生活に対する自己嫌悪にどっぷり漬かり、無力感にとらわれた様子だった。煙草をふ かし続けていた。

 二ヶ月ほどして、彼のことが新聞に載った。ガールフレンドと一緒に、盗品と「量不明のヘロイン」所持で捕まったのだ。そして、刑務所に舞い戻った。スタート地点に戻ったわけだ。

 長い間、彼の消息は知れなかった。そして三年後、私たちは高速道路ですれ違った。彼は、古いけれどまともな小型トラックの荷台に道具箱をのせて走っていた。「やあ」とやや興奮した感じで声をかけてきた。「やあ!」と私も叫び返した。「どうしてる?」

 彼は窓から頭を突き出し、満面に笑みを浮かべてどなった。「足洗ったよ!


 S・フォスター&M・リトル『ビジョン・クエスト』(高橋裕子訳)





※気づきや統合、変性意識状態(ASC)への

より総合的な方法論については、拙著↓
入門ガイド
および、
『砂絵Ⅰ 現代的エクスタシィの技法 心理学的手法による意識変容』
をご覧下さい。

 

 

人生の迷い道…

道で迷う体験は、もっとも中身の濃い、豊かな体験です。

なぜなら、自分にとって未知であった、

未開発の自分の能力を発見・開発するチャンスだからです。

ちなみに、最終的に大きな充実した人生に到達した人々は、

例外なく、人生の迷い道の体験を持っています。

それなしで大成した人はいません。

神田橋條治

 

内側へ注意を向け変える練習を続けてゆくと、

ある時点で「気持ちがいい」という感じが変化することがあります。

苦しみや悲しみを包み込んだ「気持ちがいい」に変わるというか

進化(深化)した感じです。

その気分は「気持ちがいい」という言葉よりも、

「充実」とか「定まる」とか「自己肯定」とかの言葉がなじみます。

その気分はまた、芯のところに興奮があり、

それを、厚みのある静けさが包み込んでいる

という感じでもあります。

神田橋條治

 



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たまきはる…

 

たまきはる曠野のいのち夏草をおほひて遠く果てきいくさは

村上一郎

 

 

たまきはるいのち生きむと思ふ日のわが道はかたくただかたくあれ

村上一郎

 




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覚醒とは…

覚醒とは、太陽にもっとも近い傷口である

ルネ・シャール




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自己啓発セミナーとは


さて、体験的心理療法の説明をすると、人によっては、昔流行し、社会問題にもなった「自己啓発セミナー」を連想したりします。
ここでは、その関連について少しご説明してみたいと思います。

◆「自己啓発セミナー」の系列

日本で広まり、現在も、多くの系列が残っているもの(大部分)は、「ライフダイナミック社」のものです。これは、おそらく、その名のとおり、アメリカにあった「マインドダイナミックス」と「ライフスプリング」とを合わせたものでしょう。また、自己啓発セミナーを語る言葉の中に、ベトナム帰還兵用プログラム云々というものがありますが、実際のプログラムを見ても、戦争後遺症をケアできる内容などないので、おそらく作為的な作り話か、都市伝説の類いといったでしょう。また同じく、プログラムのデザインにゲシュタルト療法家が関わったという記述もありますが、ゲシュタルト療法家といっても、昨今のNLPer(NLP実践家)のように、当時はゲシュタルト療法家も雨後の筍のようにいたでしょうから、実質的にはあまり意味のない肩書きでしょう。

◆洗脳的プログラムとは ―「複数の自我状態」について

さて、自己啓発セミナーに関係して、よく「洗脳」という言葉が使われます。
(上記、ライフダイナミック社のセミナーについてのルポも『洗脳体験』という書名でした)

この洗脳については、一般的なイメージ(理解)に少しズレがあるので補足しておきたいと思います。

一般に「洗脳」というと、何もないところ(人)に、任意の(勝手な)情報を流し込んで、その人(洗脳される人/被洗脳者)をこちら(洗脳者)の意のままにプログラミングしてしまうというイメージがあります。
しかしながら、それは実態とは違います。

「洗脳的な状態」が生じるという場合、そこには洗脳される人の中に必ず「元ネタ」が必要となります。
事前に、その人(洗脳される人)の内部に、潜在的に「洗脳内容に呼応する因子(欲求、自我)」が微少であれ、あらかじめ存在していることが必要なのです。
無からの、洗脳ということは起こらないのです。
(→「複数の自我状態について」)

そして、その人(洗脳される人)のその欲求(自我)部分が、ある洗脳的な状況下で、洗脳プログラムの力を借りて急激に覚醒して、他の欲求(自我)を圧倒することにより、洗脳的な状態が現れてくるのです。

実際のところは、その欲求(自我)部分は、(洗脳にまつわる)そういったニーズを元々どこかで潜在的に持っていたのです。

私たちの中には、さまざまな欲求(自我)の潜伏とニーズがあるものです。
それ自体は、なんら問題ではありません。
分裂と気づきの欠如が問題的なのであり、そういった面が、洗脳的な他者につけ込まれるスキを与えてしまうのです。
私たちが、一定程度の統合状態を実現していたり、自己のさまざまな欲求(感情)に気づき awareness を持っていれば、被洗脳的な状態に入ること(洗脳されること)はありません。

洗脳者側は、洗脳される人々の「潜在的な欲求」を、類型的・直感的に知っており、その欲求が自分たちのプログラムに呼応し、誘導・強化されるように操作を行なっていくわけです。
また、コミットメントを深めるように、ストーリー化を行なうのです。

ところで、この洗脳に呼応する欲求(自我)は、その人(洗脳される人)の人格の全体性の中では、「部分的」なものです。
そのため、通常は、ある程度時間が経つと、心の全体性の中で、その突出した欲求(自我)部分は弱体化して、霧散していきます。洗脳は解けます。心の全体は、基本的には調整機能があるからです。
普通は、洗脳された人の人格の中で、洗脳状態は、心の全体性の中では「不自然」であるがゆえに、自然のプロセスの中で解消されていくのです。

そのため、洗脳を維持するには、ある種の「不自然な強化」が必要となります。
そのための仕掛けを、洗脳者(自己啓発セミナーの主催者)は理解しているわけです。

「勧誘活動」などはその動機付け(その自我の維持)の方法です。
多くのカルトが、この方法論を採用しています。

他者への勧誘活動とその達成感によって、その欲求(自我)部分が維持され、生き残るように主催者(洗脳者)は動機付けを行なっていきます。
そのため、その欲求(自我)部分は、自己が生き残るために、必死に他者への勧誘活動を行なうわけです。
勧誘が成功すれば、その分だけ、その欲求(自我)は生きながらえられるので、強迫的に次の勧誘に挑みます。
こうして、勧誘と動機付けのサイクルが形成されていくわけです。

◆自己啓発セミナーと体験的心理療法との違い

さて、それでは、自己啓発セミナーと、ゲシュタルト療法のような体験的心理療法の違いはどこにあるのでしょうか?

その根本的な違いは、自発性と全体的(ホリスティック)な性格の要素です。
自己啓発セミナーでは、体験的心理療法にあるような、のびやかな真の自発性や全体的(ホリスティック)な性格に到達することはできません。
本来的な意味での人格変容を起すことはできないのです。

洗脳的なセミナーの特異な効果は、参加者(洗脳される人)のセミナーに呼応する欲求(自我)が、つまりは人格の一部分(一部の自我状態)が、プログラムの力を借りて、普段のその他の自分(欲求・自我)を圧倒してしまうことにあります。
その力で、それまでにないエネルギーを生み出すのです。

しかし、借り物の枠組みによる、部分的自我の解放には、つねに操作的・恣意的な要素が残るため、その解放もニセの解放でしかないのです。
人格の全体性の中では、自発的な発露として生じた変容ではないため、その一部の自我状態は「特異に肥大化した違和感」をずっと持ち続けます。
とても、「不自然」なものなのです。
そのため、それらの解放というものは、中途半端な「部分的」「表層的な」解放にとどまざるを得ないのです。
深部から湧出した自発的で全体的(ホリスティック)な人格解放ではないのです。

それが、自己啓発セミナーが「なぜ、本当には深まらないのか」の理由です。
「変化は起こすものではなく、起こるものだ」とは、フリッツ・パールズの言葉です。
そのため、自己啓発セミナーでは、真に深いレベルでの人格的変容や、全人格的変容は起こらないのです。

しかしながら、体験的心理療法を行なう者は、自己啓発セミナーの仕組みや、それが何故相変わらず、人を惹きつけているのかを、よく理解する必要があります。
そこには、この現代社会が欠落させているシステムや、その結果として人々への(本能的な)洞察と、そこへつけ込む周到な方法論が用意されているからです。

 

【ブックガイド】
ゲシュタルト療法については基礎から実践までをまとめた解説、拙著
『ゲシュタルト療法 自由と創造のための変容技法』
をご覧ください。

気づきや変容、変性意識状態(ASC)を含むより総合的な方法論については、
拙著
『気づきと変性意識の技法:流れる虹のマインドフルネス』

および、
『砂絵Ⅰ 現代的エクスタシィの技法 心理学的手法による意識変容』
をご覧下さい。

NLP 神経言語プログラミングとは 天才のモデリング技法  ―普及・効果・課題

NLP(神経言語プログラミング
Neuro-Linguistic Programming)は、
リチャード・バンドラー博士と、
ジョン・グリンダー博士によって、
創始された能力開発技法です。

彼らが、天才的な人々、
ゲシュタルト療法のフリッツ・パールズ、
催眠療法家のミルトン・エリクソン、
家族療法家のバージニア・サティアらの、
治療技法をモデリングし、
そのエッセンスを、方法論化したものです。

NLPについては、

日本に導入されてから、

20年近くが経ち、

スクールも書籍も、

非常に多くなっており、

だいぶ、認知もひろがってきましたので、

ここでは、当スペースの視点から、

見ていきたいと思います。

 

というのも、

導入初期にあった不足(欠陥)が、

修正されずに、

そのまま広まってしまったため、

現在では、

NLP(神経言語プログラミング)も、

多くの輸入品(メソッド)にありがちな浅知恵のまま、

退潮?しようとするかにも、

見えるからです。

それは、大変、

もったいないことでもあるのです。

 

特に、NLPを、

その発生の源までさかのぼって、

(創造的時代の沸騰を背景とした)

オリジナルNLPの、

その特徴を理解した上で、

限界と可能性、適用範囲、

その有効な使い方を、

理解していくことは、

とても重要だと思われるのです。

 

そのことで、

「あまり効かない」と言われている、

NLPの内実(意味合い)や、

「効かす方法」を、

より理解できるようになると、

思われるからです。

 

そして、

その点を理解することで、

NLPは、ずっと豊かな使い方や、

効果を得ることが、

できるからです。

 

◆創始者の役割分担について

 

さて、NLP(神経言語プログラミング)は、

バンドラー博士と、グリンダー博士の、

二人のカップリングによって、
創られましたが、
筆者は、ここに、役割分担を見ています。

 

実は、ここに、すでに、

NLP(神経言語プログラミング)の、

本質的な要素(秘密)が、

出揃っているのです。

 

このことを理解することで、

NLPの本質的な要素を、

理解することができるのです。


さて、
諸々の情報を総合すると、
(筆者の直観ですが)
リチャード・バンドラー博士とは、
「モノマネの天才」なのではないかと、
思われます。
(彼には、モノマネ者に特有の、
うら寂しさと道化性、矯激性があります)

 

そして、

バンドラー博士が、
パールズや、エリクソンと接する中で、

彼らから、身体的に、
シャーマニックに、
「写しとったもの」を、
グリンダー博士が、

記述に起こしていく。

(いわゆる「モデリング」です)

 

このようなことから、

NLPのアイディアは、

はじまったのではないかと、

思われるのです。

 

そして、今度は、

役割交代をしてみて、

グリンダー博士が、

実際に、それらを実践してみて、
効果が出るかを検証してみる。


そのようなことを繰り返す中で、
初期のNLPができたのではないかと、
筆者は、推測しているのです。

いわば、

「霊媒と審神者(サニワ)」の、
カップリングです。

各人の優れた才覚が、

そこに活かされていたわけです。

 

そのため、
二人が、決裂したことで、
NLPの方法論的な基盤づくりの、
創造的な側面は終焉したのです。
(その後は、枝葉末節の、
応用展開です)


◆NLP(神経言語プログラミング)の特性について

さて、世の中には、
Liteと名前のついたソフト商品があります。

 

「○○Lite」、つまり、「簡易版」です。
もともとある商品の、機能を色々と落として、
初心者にも、簡易に使用できるようにした商品です。

NLP(神経言語プログラミング)とは、ある意味、
このLite商品といえるものです。


ゲシュタルト療法Liteだったり、
催眠療法Liteだったり、しているわけです。
初心者にも、大変使いやすいのです。
しかし、機能を落としている分だけ、
残念ながら、効き目も弱いのです。

 

NLPは、ゲシュタルト療法や、
フルスペックの体験的心理療法のような、
強度な変性意識状態(ASC)や、
深い自発的な感情の導出、
深層レベルの、

心理プログラミングの書き換えは、
引き起こせません。

 

比較的軽度な知覚レベルの調整、
時間が経つと、じきに消えてしまうような、
軽度のプログラミング修正が、

多くの作用です。

(その理由は→効果的に作用するNLPのフレームとは)

しかし、実は、

逆に、そこが、
NLPのいいところ(利点、安全性)でも
あるのです。

体験的心理療法や、

強度な変性意識状態(ASC)

何らかの知覚的変容などを、
まったく経験したこともない、
一般の人々にとっては、
抵抗や障壁が低く、
かつ、安全な範囲内で、
「小さな知覚変化」
「内的変化」を、
経験することができるものだからです。

 

この手の情報が、恐ろしく少なく、

かつ、多くが、ニセモノでしかない、

現代の日本の中では、
それらは、おそらく、
人生ではじめての経験となるでしょう。
しかし、そのことで、
自分自身に、

そのような変化が、

起きる可能性があることに、

気づいていくことができるからです。

(NLPよりも、

もっと大きく変わる方法論への予感も、

生まれてくるわけです)


それは、
人生を変えるヒントや、

きっかけになるものです。

 

映画『マトリックス』に出てくる、

モーフィアスの、

赤いピルではないですが、

自分や人生を変える方法論が、

この世にあることを、

予感することができるからです。

 

もっと探求を進めたい人にとっては、

意識拡張のための、
各種さまざまな方法論が、
存在しているので、
そちらの探求を進めていけば、

よいことになるからです。


◆セッションでの使用方法

NLPには、
興味深い技法や知見が、
多々あります。
また、説明モデルや、
理論的言語に長けています。

その点は、彼らの師匠でもあった、
グレゴリー・ベイトソンまで戻ると、
彼らの当初の意図も見えやすくなります。
 

実は、NLPは、

NLPだけの「コンテクスト」の中で使っても、

なかかな活きてこないものなのです。

もう一つ高い学習階層で、

オーソドックスな心理療法を含めた、

もう一つ広い文脈の中で、

使う必要があるのです。

 

つまり、

世の中の多くのNLPが、
効果のないものになってしまっているのは、
この点についての、
経験や理解が、

欠けてしまっているためなのです。

 

そのため、
NLPを技法として、

セッションなどで、使用する場合は、
すべてが、

使用する側の問題に、
帰着していきます。

NLPの技法を、
いっぱいいっぱいで、
教科書どおりに、使っているレベルでは、
効果の面でも、
なかなか厳しいものがあるのです。

NLPのさまざまな手法の、

生まれて来た背景や、

大元の原理や仕組みを理解し、
セッションの場面場面で、
構成的に、

応用的にアレンジして使えてはじめて、
NLPの道具としての有効さも、

活きてくるのです。

 

彼らのいう

「天才のモデリング」の深い意味も、

分かって来るのです。

ひいては、

ご自身の「天才性」を、

引き出す観点も、

生まれて来ることになるのです。

 

ここでは、

そのような視点から、
NLPのいくつかの方法論を取り上げ、
その内容を検討してみたいと思います。

 

そのことで、

NLPの可能性もまた、

開いていくものであるからです。

 

 

日本のNLPは、なぜ退屈なのか
効果的に作用するNLPのフレームとは
NLPニューロ・ロジカル・レベル(神経論理レベル)の効果的な利用法
知覚と感情が編成する、この世界 サブモダリティとエンプティ・チェア
NLP・ゲシュタルト・夢見
才能における相補性 NLPとビートルズ
サブモダリティの拡張 NLPとビートルズその2



※気づきや変性意識状態(ASC)についての、

より総合的な方法論は、拙著↓

入門ガイド

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『砂絵Ⅰ 現代的エクスタシィの技法 心理学的手法による意識変容』

をご覧下さい。

 

 

 

↓動画「変性意識状態(ASC)とは」

 

↓動画「変性意識 映画『マトリックス』のメタファー 残像としての世界

 

↓動画「ゲシュタルト療法と、生きる力の増大」

 

↓変性意識状態への入り方はコチラ

 動画「気づきと変性意識の技法:流れる虹のマインドフルネス」

 

↓より多様で、深遠な変性意識状態については、コチラ

 動画「ゲシュタルト療法 変性意識状態 エクスタシィ(意識拡張)」

心身一元論的・ボディワーク的アプローチ

①ボディワーク・セラピーの地平

 

ゲシュタルト療法の創始者、

フリッツ・パールズの教育分析を行なった、

ヴィルヘルム・ライヒWilhelm Reichは、

初期の精神分析運動を加速した重要人物です。

(パールズに、ライヒを薦めたのは、

カレン・ホーナイだったと言われています。

「あなたは複雑なタイプなので、

ライヒじゃないと理解できないかもしれない」と)

 

ライヒは、活動の初期から、

物議をかもす、

さまざまな先進的な知見を持っており、

その後も、キワモノ的な扱いや、

一部では、カルト・ヒーロー的な扱いもありますが、

現在においても、その考えのすべてが、

きちんとフォローされているわけではありません。

 

 

まず、ライヒは、

精神疾患において、

目立ったトピックとしての「症状」ではなく、

一見、見過ごされがちな、

「性格」という、

恒常的な運用システムについて、

早くから注目しました。

そこに、病理が、温存される「戦略」(性格戦略)を、

見抜いたのです。

 

近年、「人格障害」が、

精神疾患をはじめ、

社会のさまざまな場面で、

注目を集めるようになりましたが、

(そういう難治の事例が、増えているからですが)

この「人格(性格)」というものの運用を核とした、

システムへの洞察や、働きかけにおいても、

ライヒは、先見の明を持っていました。

「性格の鎧」とは、

彼が有名にした言葉です。

 

さらに、重要なのは、

この「性格の鎧」が、

平行して、

私たちの肉体の中に、

「筋肉の鎧」として、

存在していることに注目したことです。

 

生気のない目。

浅い呼吸。

悪い皮膚の色。

貧弱な手足。

こわばった身体の動作。

等々…

それらが、

防衛的な生活史によって、

つくりあげられた、

(「性格の鎧」とパラレルな)

「筋肉の鎧」だと、

気づいたのです。

 

そして、その肉体のブロック()、

緊張や硬化に、直接働きかけることが、

深い情動の解放を促し、

心理的な面からの解放と、

相乗効果を生み、

より一層、速く深い治癒効果となることを、

発見したのでした。

 

ここから、

ボディワーク・セラピーの、

大きな潮流が育っていくことになったのです。

 

ライヒの直弟子であった、

アレクサンダー・ローエンの、

「バイオエナジェティックス」では、

ライヒが発見した、

身体の特有のブロック箇所に、

直接働きかけるワーク/エクササイズと、

心理的な分析とを組み合わせた、

体系的なシステムを、洗練させました。

 

別章では、

呼吸と感情との関係について触れました。

人は、通常、呼吸を止めることによって、

感情の流れを止めます。

その結果、

筋肉は段々と「硬化」し、ブロックと化します。

そして、

感情の流れは、細くなり、

流れにくくなります。

生命力が、枯渇し、

精神に障害が現れます。

 

身体の特有のブロック箇所は、

背骨にそって流れるエネルギーを、

遮断するように、

背骨に対して、「垂直に」「切る」ように、

できてきます。

目、喉、胸部、骨盤等々にです。

そこに、直接的に働きかけていくのです。

 

 

②ゲシュタルト療法における心身一元論的開放

 

さて、ゲシュタルト療法の、

心身一元的論的なアプローチでは、

身体チャンネルを通して、

クライアントの意識しない多様な自我が、

現れてくることを見ました。

 

そして、

ボディ・シグナルを糸口に、

その多様な自我と、

コンタクトすること(技法)についてを見ました。

 

さて、そして、

ゲシュタルト療法においては、

その糸口から、

多様な欲求や自我状態の、

深く十全な表現、

深い十全な感情表現というものを、

探っていきます。

 

意図せずに、

身体チャンネルに現れる自我とは、

葛藤や未完了のゲシュタルトとして、

抑圧されてがちな、

欲求(自我)だからです。

そのため、

その自我に、

十分な表現と存在の場を与えてあげることが、

必要となります。

 

そして、

その感情表現の際には、

心身一元的な視点が、

特に重要になります。

 

というのも、

ライヒらが、

筋肉の鎧をもつ、防衛的な身体には、

十分な感情体験がないことに気づいたように、

十分な感情体験とは、

十分な身体的運動(表現)が、

ともなうものだからです。

 

そのため、

クライアントの方の感情表現の際に、

身体表現にも注目します。

そこに、十全でしなやか、

自己一致した表現があるのか、

確認します。
 

また、実際、

ゲシュタルト療法においては、

クライアントとして、

そのような、心身一元的な、

全身的な、表現活動を繰り返していると、

表現と感情の流れによって、

段々と、身体の緊張や硬化が解除されてきます。

 

身体エネルギーが流動化し、

身体が変わっていくのが、

実感されます。

使えるエネルギーが増大して、

見た目にもエネルギッシュになります。

 

このように、

ゲシュタルト療法は、

心身一元論的なアプローチであり、

ワークの進展に従い、

心理的にも、

肉体的にも、

全身のしなやかな解放が進んでいくのです。

統合の進化が、

物理的にも、分かりやすい所以です。

 

※気づきや統合、変性意識状態(ASC)への

より総合的な方法論については、拙著↓
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および、
『砂絵Ⅰ 現代的エクスタシィの技法 心理学的手法による意識変容』
をご覧下さい。

へリンガーのファミリー・コンステレーション

ファミコン


バート・ヘリンガー氏の創始した、

「ファミリー・コンステレーション」は、

興味深い心理療法です。

 

「コンステレーション」とは、

配置、布置、星座という

意味であり、

ユング心理学などでは、

よく使われる言葉です。

 

ファミリー・コンステレーションは、

A・ミンデル博士の、

プロセスワークで行なう、

「ワールドワーク」の、

元ネタになったとも言われますが、

実際に、そのセッション(ワーク)を経験していくと、

個人と集団(集合)

または、

個人的なテーマと、

集団(集合)的なテーマとの間にある、

一種、不思議な、

エネルギー的な結びつきについて、

感覚的な体験を、

深めていくことができます。

 

 

①ワークの方法

 

通常、心理療法のワークでは、

セラピストが、

クライアントの方の主訴を聞き、

当然ですが、

クライアントと直接に、

何らかのやり取り、

働きかけを行なっていくことにより、

ワークを進行させます。

治癒のプロセスを促進します。

 

しかし、

ファミリー・コンステレーションにおいては、

まず、そこが違うのです。

 

セラピストが、

クライアントの主訴を聞いた後、

クライアントの家族や家系等について、

いくつかの質問を行ない、

そのワークで使っていく、

「登場人物」を、

幾人か選定していきます。

(多くは、家系に関係した、両親や親族です。

クライアントが、

実際に会ったことのない人物も含みます)

 

そして、クライアントに、

「本人(自分)役」も含めて、

その登場人物たちの「役」を演じてもらう人=「代理人」を、

ワークショップの参加者の中から、

直観で、選んでもらうよう、要請します。

 

クライアントは、

それぞれの役の「代理人」を、

自分の役も含めて、

数名(人数分)選び、

部屋の中の、ここだと思う場所に、

(登場人物たちの、「関係性」を、感じながら)

空間配置します。

 

そして、そこから、

面白いことですが、

セラピストと、

この代理人たちとによって、

代理人同士のやりとりによって、

ワークが、展開されていくのです。

 

そして、

クライアントは、

それを、横で見ているのです。

 

これは、

心理療法としては、

大変、奇妙な(異様な)光景です。

 

 

②ワークの展開と体験

 

さて、

代理人を演ずる参加者は、

通常、クライアントのことを、

ほとんど知りません。

そのワークショップの当日に、

会場で、初めて会ったからです。

 

しかし、

代理人として、

その、家族・家系関係の「場」の中、

「空間配置」の中に立つと、

他の代理人(家人)との関係が、

エネルギーの強弱、

快不快の身体感覚、

感情的な情報として、

なぜか、感じられてくるのです。

 

その情報を、手がかりに、

セラピストは、

代理人たちとやり取りを進め、

代理人たちに、

空間移動をさせ、

表現を促し、

代理人(家人)の、

からだの向き、

立ち位置や位置関係を、

さまざまに変えて、

調整していきます。

 

そのことにより、

その家系(家族)の、

正しい位置関係や、

その家系(家族)の中で、

排除した(欠落させた)人物やテーマを、

探っていくのです。

 

それは、あたかも、

家系(家族)の関係性自体が、

ひとつの生体として持っている、

自律的なエネルギーを、

ほぐし、伸ばして、

「整列」させるかのように、

展開していきます。

(これを「もつれを解く」と呼びます)

 

そして、ワーク(セッション)では、

その整列・展開の果てに、

クライアントを、

家系(家族)の配置の中に、

招きいれ、

その家族・家系の、

全体のエネルギーを、

正しく流れていくように、

調整していくのです。

 

クライアントに、

自己の家系の存在と、

そのつながりを理解してもらい、

自分の存在の位置を、

深く理解してもらうのです。

 

 

 

さて、

ファミリー・コンステレーションの、

ワーク(セッション)は、

通常の心理療法とは、

まったく進め方も、

体験の質も違います。

 

しかし、

クライアントにとっても、

役を演じた、代理人にとっても、

とても不思議な、

印象深い体験となります。

 

私たちの背後に生きている、

「家系のエネルギーの流れ」という、

よくわからない力が、

何らかのエネルギーとして、

存在していることを、

(自分たちに影響していることを)

体験する、

貴重な機会となるからです。

 

そしてまた、

そのようなテーマが、

一定の心理療法的なセッションの中でも、

実は、浮上していること、

そして、

関わっていくことができることに、

気づくからです。

 

それはまた、

セッションの新たな可能性を、

見出していくことにもなります。

ミンデル博士が、

ワールドワークを、

着想していったようにです。

 

実際、

筆者自身も、

その後の経験の中で、

ファミリー・コンステレーションで、

体験した要素は、

ゲシュタルト療法その他の、

セッションの中でも、

人物たちの場の配置や、

エネルギーの流れにより、

色々と現れていることを、

その後、確認していきました。

 

そして、

ファシリテーションの幅を、

広げていく霊感にもなったのです。

 

 

   

※気づきや統合、変性意識状態(ASC)への

より総合的な方法論については、拙著↓
入門ガイド
および、
『砂絵Ⅰ 現代的エクスタシィの技法 心理学的手法による意識変容』
をご覧下さい。

エンプティ・チェア(空の椅子)の技法Ⅱ

スライド2

さて、
「エンプティ・チェアの技法Ⅰ」

では、
一番よく使用されるタイプの、
使用方法とその原理を、
見てみました。

 

誰か実在の人物を、
エンプティ・チェアに置いて、
その人物に、語りかけ、
伝いたいことを伝えたり、
また、相手になってみて、
その気持ちを探ってみるという、
形のものです。

 

また、これとは別に、

ワークが、進行する中で、
クライアントの方の中から出てくる、
心的欲求(感情)を、
エンプティ・チェアに、
展開していく手法があります。
これは、とても効果を発揮する技法です。

ここでは、それについて、
見ていきましょう。


①「複数の欲求(自我)」を知る

私たちは、
「複数の欲求(自我)」を持っていますが、
ほとんど、それらを意識することなく、
生活していることを、

別に、見ました。

そのため、
それらの欲求(自我)が葛藤を起こし、
私たちを苦しめていても、
その解決の糸口が、

なかなかつかめないのです。
私たちが、
「複数の自分」であることに、
無知であるからです。

ここにおいては、何よりもまず、
「真に知る=識る」ことが、
解決の入り口となります。

しかし、

真に「知る=識る」とは、
「解釈=理論」を、

当てはめることではありません。

「真に識る」とは、
対象との、存在的な同調・同化においてしか、
また、全身的な関わり・交わりの中でしか、
なかなか、得られないものなのです。
それは、感覚的な把握に他なりません。

エンプティ・チェアの技法は、
「複数の欲求(自我)」を、
直接的に体験し、
それら自身になり、
それらを内側から識り、
それらを生きることができるがゆえに、
大きな効果を持つものであるのです。


②「複数の欲求(自我)」を切り分け、取り出す

さて、私たちが、
「複数の欲求(自我)」の存在に、
普段、気づけないのは、
それらが、

よく「見えない=認知できない」からです。

それは、喩えると、
あたかも、濁った暗い水面から、
水面下の、
ぼんやりとした鯉(欲求、自我)の影を、

見ているようなものです。

それらを、ぼんやりと、
悶々とした情動の惑乱(衝動、圧迫)として、
感じているだけなのです。

エンプティ・チェアの技法は、
喩えると、この、
「鯉(欲求、自我)」を、一旦、
濁った暗い池から、
「澄んだ生け簀」に、移すようなものです。

そこにおいて、
私たちは、自分の中にある、
さまざまな複数の欲求(自我)を、
目の当たりにすることができるのです。
そして、
それらを、直接見ることや、
体験することが、
できるようになるのです。

実際の使用場面でいうと、
ワークを展開していく中で、
クライアントの方の中に、
2つの自我の葛藤を見出すことがあります。

 

それは、
胸の前で、両手を合わせて、
ギューと押しあっている感じです。

または、
クライアントの方が、
ある感情を表現しようとしている時に、
「ノイズ」のように、
それを妨げる力(存在)を感知する場合があります。

そのような場合に、
クライアントの方に、
それらの存在を指摘し、
それらを、椅子に、
ロール(役)として、
分けて(置いて)みることを、提案していきます。


②各「欲求(自我)」を生ききる
 
葛藤がある場合、
それは、例えば、
胸の前で、両手を合わせて、
「押しあっている」ような感じとしました。

この状態は、それぞれが、
相手を押しているので、喩えると、
二人が「同時に」しゃべっているようなもので、
騒音(欲求・感情)が混じりあっていて、
それぞれの欲求(感情)や、
自我の言い分は、
よくわかりません。

さて、
「押しあっていた両手」の、
片方の手を、いきなり外すと、

どうなるでしょう?

つっかえがはずれて、
もう片方の‎手の力が、バーンと出ます。
ロール(役)を分けるとは、

そのようなことです。

クライアントの方に、
それぞれのロール(役)に分かれてもらい、
片方の欲求(自我)の妨げを

取り除いた状態で、
もう片方の欲求(自我)そのものに

なってもらうのです。

そうすると、
葛藤の時には、体験もできなかったような、
各欲求(自我)の存在が、
バーンと、表に出てくるのです。

そして、
クライアントの方に、

それぞれのロール(役)に、
代わりばんこになってもらい、
欲求(自我)同士の対話を、

進めていってもらうのです。

さて、実は、
各欲求(自我)は、お互い、
相手に言いたいことがあったために、
相手の存在を妨げるという事態が、
起こっていたのです。

そのため、
クライアントの方には、
ロール(役)を分けた状態で、
まず、
それぞれの欲求(感情)の状態を、
十二分に体験してもらいます。


その欲求(自我)が、

「何者」であるのかを、
全身全霊で、

理解・認識してもらいます。

そして、その上で、
欲求(自我)同士の対話を

進めていってもらうのです。

そして、
お互い相手の言い分を、
十分認められるようになると、
葛藤はなくなり、
それぞれの欲求(感情)が、
自分自身になり、
各々で、並存できるようになるのです。

相手の欲求(自我)は、
敵やライバルではなく、
別の機能をもった仲間であると、
分かるようになるからです。

さて、エンプティ・チェアの技法を使った、
ワークは、大体、このような形で、
展開します。
葛藤→分離→対話→統合のプロセスを、
たどっていくのです。

エンプティ・チェアの技法は、
ゲシュタルト療法の代表的なテクニックですが、
大変、有効な技法であり、
単なる心理療法にとどまらない、
応用的な活用が、
可能な手法ともなっているのです。

 

↓実際のセッション(ワーク)は

・セッション(ワーク)の実際

・セッションで得られる効果と成果

 

 

※エンプティ・チェア技法の、

詳細な手順や、応用的な使い方、

また、気づきや変性意識状態についての、

総合的な方法論は、拙著↓

入門ガイド

『気づきと変性意識の技法:流れる虹のマインドフルネス』

および、

『砂絵Ⅰ 現代的エクスタシィの技法 心理学的手法による意識変容』

をご覧下さい。

 

※エンプティ・チェアの技法について、

 もっと知りたい方は、専門姉妹サイト

 →「エンプティ・チェア・ワークス」

 

 

↓動画「ゲシュタルト療法 エンプティ・チェアの技法Ⅱ 葛藤解決」

 

動画「ゲシュタルト療法 エンプティ・チェアの技法Ⅰ」

 

↓動画「葛藤解決の方法(ポイント)」

 

↓動画「葛藤解決の方法(ポイント)Ⅱ ネガティブな感情の扱い方」

 

※エンプティ・チェアの技法を、きちんと効果的に使うと↓

 動画「ゲシュタルト療法と、生きる力の増大」 

 

※エンプティ・チェアの応用的な使い方は↓

 

※エンプティ・チェアの技法の詳細な解説は、コチラ(第二部)↓



エンプティ・チェア(空の椅子)の技法Ⅰ


「エンプティ・チェアの技法」は、心理療法の世界においては、ゲシュタルト療法といえば、すぐにエンプティ・チェアの技法が想起されるほどに、ゲシュタルト療法のイメージとなっているものです。また、現在では、カウンセリングやコーチングなどでも、簡易な形でテクニックとして広く取り入れられたりもしています。

 しかし、実は、エンプティ・チェアの技法の効果にはかなり広い幅があります。浅い効果(視点/ポジションの転換)のレベルから、深い効果(分裂した自我状態の統合)のレベルまで、さまざまなレベルの効果を発揮するものなのです。

 そのため、エンプティ・チェアの技法は、その原理(構造)をよく理解することで、より深い領域で的確に使っていくことができるようになります。ところが、エンプティ・チェアの技法は、セッションの中で自分自身がその変容を充分に体験していないと、その原理(構造)を深いレベルでは理解できないようにもなっています。そのため、古典的なゲシュタルト療法の教科書においてさえ、充分な記述がないことになっているわけです。

 ここでは、なるべく構造的なわかりやすさを考慮して、記述していきたいと思います。

 

 さて、ところで、エンプティ・チェアの技法は、セッションの中の、さまざまな場面において利用でき、効果を発揮するものとなっています。一番、多く使用される方法は、誰か実在の人物を、エンプティ・チェアに置いてみて、(そこに居ると仮定して)その人物に、語りかけ、伝いたいことを伝えるというものです。また、相手になってみて、その気持ちを探ってみるという、形のものです。では、この手法の、原理的な意味を少し見ていきましょう。

①原理

 さて、心理学、フロイトの精神分析においては、「投影 projection」といえば、自分が心理的に抑圧したもの=自分のものと認めたくないもの=分裂した心的内容を、相手(外部の世界)に投げ込む「防衛機制」を指しています。自分の潜在意識(無意識)に抑圧した心理的内容は、どこかに消えてしまうのではなく、それを投影しやすい他者を見つけて、そこに映し出されるというわけです。

「あの人はなんかすごく嫌な人」「あの人は生理的に受けつけない」という時、多くの場合、私たちは、自分の内にある受け入れたくない要素、認めたくない要素(自分の感情)を、相手に投影しているものです。「あんな邪悪な感情を持っているのは、(自分ではない)あの人だ!」「自分は、あんな邪悪な感情はまったく持っていない!」という風になっているわけです。そのことで、その感情を「自分のもの」と感じることから守られるわけです。自分の心地良いセルフ・イメージが守られるわけです(「私はいい人」)。しかし、そのように制限的なセルフ・イメージ(ニセの自己像)を持つことで、心の奧底では苦しい葛藤も生じますし、対人関係の苦痛や生きづらさも生まれてきてしまっているわけです。

また、そこまで心理的内容に限定しなくとも、私たちは一般に、外部の世界(他者)を知覚でとらえようする時は、無意識的に、自分の内的(心的)要素を外部の世界に投影して、物事を把握しようとしているものです。
後に、「暗黙知」というコンセプトで有名になる科学哲学者マイケル・ポランニーは、私たちが対象世界をとらえる際の、身体知の投影(投射)についてさまざまな考察をめぐらしています。そのアイディアは、フランスの哲学者メルロ=ポンティの身体論などからインスパイアされたものです。

「画家は、その身体を世界に貸すことによって、世界を絵に変える」(メルロ=ポンティ『眼と精神』木田元他訳、みすず書房)

上は、画家が創作活動の中で、身体感覚を投影して、風景(対象)をとらえる(統合・体内化)する様子を比喩的に描いた言葉ですが、私たちは、通常、潜在意識も含めた心身の全存在で、世界や他人に関わり、それを把握しようとしているわけです。私たちは、客観的に、ニュートラル(中立的)に、外部世界をとらえているわけでは決して無いのです。

他人や外部世界が、ニュートラル(中立的)に、客観的にとらえられるようになるのは、ある程度、自分の心的投影の歪みが解決された後での話です。

さて、エンプティ・チェアの技法は、この「投影 projection」の原理を応用したものになっています。そして、その心理的投影の歪みを取り去るため(分裂を統合するため)の技法となっているのです。

②技法と手順

エンプティ・チェア(空の椅子)の技法は、クライアントの方とセッションを進めるなかで、クライアントの方にとって、「或る人物との関係性」が重要なテーマであると感じられた時、また、強い感情的な価値(付加エネルギー)を有していると判断された場合に、まずは提案される技法のひとつです。

(1)まず、クライアントの方に、空いている椅子や座布団の上に、その人が居ると仮定してもらいます。

(2)次に、その人に、言いたい事を伝えてもらいます。

さて、簡単に書きましたが、「架空の劇」にもかかわらず、このようなこと自体が、クライアントの方にとって、心の負担となる場合もあるので、丁寧で慎重なやり取りや場の設定が必要です。

というのも、この原理は、上の図のようになっているからです。

つまり、椅子に置く「その人物」とは、実はクライアントの方の中に存在している心的内容(欲求・自我状態)の投影されたものだからです。言い換えると、心的内容(欲求・自我状態)そのものだからです。

仮に「人物A」を置いた場合、そこに、クライアントの方が見ているのは、人物Aに投影している、自分の心的欲求A(自我状態A)そのものなのです。(本人は、それに気づかず、そこに人物A本人を、見ていると思っていますが…)

そして、この場合、そこに見た人物A=心的欲求Aとの「抑圧・葛藤関係=関係性(非対称性)」において、今度は、自分がただちに心的欲求B(自我状態B)となってしまうのです。意識が、自分を欲求B(自我状態B)と同一化してしまうのです。目の前に、抑圧された欲求(自我状態A)が投影されているので、反発・対立構造的に、自分がアンチAである「自我状態B」になってしまう(同一化されてしまう)からです。

ポイントは、ここです。

心的欲求(自我状態)Aと心的欲求(自我状態)Bとの対立構造(=カップリング・非対称性・両極性・葛藤)のなかで、己の意識的なアイデンティティ(同一化)が、一方側の自我状態に拘束され(囚われ)てしまっているわけです。
私たちは普段、自分を十全な自分だと思ってますが(錯覚してますが)、実は、自分の中の「部分的な存在状態」、自我(欲求)Bに同一化している存在で
しかないのです。
ここを実感的に理解できることが、エンプティ・チェアの技法を理解するための要点です。そうでないと、形だけで椅子を移ってもらう、中身のないセッションになってしまうからです。

ちなみに、これが、普段の日常の人間関係のなかでも、私たちが苦しめられたり、不自由(拘束的・囚われ)になってしまう理由なのです。

実は普段も、私たちは、目の前の実在する他人に苦しめられたり、拘束されて(囚われて)いるのではなく、その人に投影している自分自身の自我(欲求)状態の、葛藤構造(非対称性・両極性・分裂)に拘束されて(囚われて)、苦しめられているのです。世間に多い、加害者と被害者のカップリング、ゲシュタルトでいうトップドッグ(超自我)とアンダードッグ(下位自我)のカップリングも、心の非対称的な分裂構造として、私たちの心の中に、元々存在しているものなのです。

そのため、潜在意識の中にある、この自我(欲求)状態AとBとの関係性を、充分に意識化することや、その苦痛化した非対称的な構造(葛藤・緊張)を解放し、変化(緩和・流動化)させることが、治癒や統合のためには必要なことなのです。そのためには、この非対称的・葛藤的な拘束のなかで、強く緊張している感情エネルギーを解放していくことが必要となるのです。

しかし、そのやり方(方法・技法)は、実はシンプルなことなことでもあるのです。

方法としては、今同一化しているその自我状態の情動や感情を充分に体験し、表出・表現しきっていくということなのです。放出しきるということなのです。

たとえば、今同一化している自我状態Bになった場合は、そこで体験している感情体験をメッセージとして、十分に感じ・体験して、余すところなく、人物(自我状態)Aに向けて表出し、表現し、伝えることなのです。願望、不安、恐れ等々も含めあらゆる感情に気づき、体験し、表現しきることなのです。

そのことを行なうことで、自我(欲求)状態Bの十全な存在体験、存在表現となり、充溢した十全な存在状態を導くことになるのです。そのことで、過度な緊張エネルギーが放出され、弛緩し、強い拘束が少し弛みだすのです。重要なのは、「充分に感じ、体験し、伝えきる」ということです。それが、欲求不満な溜まっている言えない(禁じられた)気持ちを解放し、完了させることにつながるのです。

もしも、ここで、 「自我状態B」に充分同一化できて(なりきれて)いなく、そのBがはらむ情動が充分に体験・表現されない場合は、「自我B」は「自我B」ではなく、「自我B(-A)」のように、「Aの存在に少し毀損されたB」という、葛藤を含んだ中途半端の存在(自我・欲求)にとどまってしまっているのです。これだと、「自我B」の十全な存在状態にならないのです。そうなると、葛藤的・非対称的な拘束を脱するのに、不足が生じてしまうのです。次に見るように、椅子を移っても、自我状態が変わることが起きないのです。ここには、注意深い観察とアプローチが必要となるのです。

③役割交替

さて、次に、クライアントの方に、Bから、Aの椅子(位置)に移動してもらいます。

すると、自我(欲求)状態Bが充分に表現されていた場合、クライアントの方の意識は、直ちに、自我(欲求)状態Aに同一化します。自我(欲求)状態Bが充分に表現されていない場合、Bの要素を、Aの椅子(位置)に持ち込んでしまうため、自我(欲求)状態Aに充分同一化できないこととなります。「自我A(-B)」の状態です。

この自我(欲求)状態変換の技法的原理は、催眠で言うところのアンカリング(知覚情報と自我状態の結びつき)になります。先ほどのBの役の時に、Aの椅子に、自我(欲求)Aを投影していたので、Aの椅子に、座った時に、直ちに自我(欲求)Aに同一化するのです。

まとめると、B(本人役)の時に、自我(欲求)状態Bが充分に表現されていたか否か、Aの椅子に自我(欲求)状態Aを、クライアントの方が充分に投影できていたか否かが、重要なポイントととなります。この表出と投影が充分になされていないと、椅子を代わったところで、充分に自我(欲求)状態Aに同一化することができないからです。

そして、この自我(欲求)状態への同一化を通して、クライアントの方は、普段は分裂(投影)していた、自分の自我(欲求)状態の意図を、深いレベルで体験し、感じ取ることができるようになるのです。
これは、普段の日常生活では、決して起こらない事柄です。
そのため、ファシリテーターは、ワークの各ステップの中で、クライアントの方がそれぞれの役の時に、充分に(混じり気なく)、その自我(欲求)状態単体に深く同一化できているかを、きちんと確認していかなければならないのです。

もし、そうでない場合は、まったく別の心的内容(自我)が、そこに存在している可能性もあるので、場合により、「別のアプローチ(そのⅡ) 葛藤解決」を部分導入しないといけないかもしれないからです。

④役割交替の繰り返し

さて、そして、椅子を交互に移りながら、この役割交替を、何度か繰り返します。

すると、(同じ存在である)意識・気づきが、両方の自我状態A・Bに交互に同一化していくことで、分断していた非対称的なAとBの間に、意図(情報)の流通(横断)がつくりだされます。
相手の自我状態に対して、共感的理解が少しずつ生まれ出すのです。意図(情報)とエネルギーが交流しはじめ、対称性が生まれだすことになるのです。

ここでは、意識・気づきのメタ(上位)的な位置が、情報の経路として効果を発揮します。体験を体験する気づきの力です。

また、役割交替を、何回も繰り返す必要性は、非対称的で、硬化した相互拘束を溶解するには、片方ずつ、少しずつエネルギーを流すしかないからです。固く留められた2箇所のネジを弛める要領です。片方を弛めるともう片方が弛めやすくなります。その片方を弛めると元の片方がさらに弛めやすくなります。この繰り返しで相互拘束がほどけるのです。
 その各自我状態の中にひそんでいる感情・意識・認識・信念の「塊」は長年に渡り固形化しているので、それを溶かすには、少しずつ動かし、揺さぶるようにエネルギー(感情)をさまざまなパターンで流し、体験する必要があるからです。

自我欲求の非対称的構造は、揺り動かすような動きを与えないと、深い部分のエネルギーが自由に流れ出さないからです。各自我状態の深いところに存在している、真のメッセージを聴き取ることができないからです。役割交替を繰り返すことで、クライアントの方も、各自我状態にも慣れてきて、各自我それ自身(単体)の内実に、より深い気づきをもって同一化をすることができるようになるのです。

そして、ワークを進めていき、たとえば「自我状態B」が充分に体験されていくと、「自我状態B」は「自我状態B´」や「自我状態Y」へと姿(状態)を変えていくことになります。なぜなら、「自我状態B」という状態自体が、相互拘束(反発と葛藤)によって生み出されていた、偏った部分的状態だっただからです。十全な体験と表現ができて、拘束が弛むことで、「自我状態」はより本来の姿(状態)へと戻っていくことになるのです。

そして、変容した「自我状態X」「自我状態Y」として交互に交流を深めていくと、これら自我(欲求)状態を対立している自我(欲求)状態としてではなく、自分の中の「役割」(部分)でしかなかったことに気づける「大きな広がった状態」に、クライアントの方は移行していくことになるのです。
そして、「自我状態X」「自我状態Y」が溶け合い、合わさったような、そしてさらにそれを超えた、フラットで充実した広がり(空間)を、自分自身の中に見出していくこととなるのです。
これが「統合」状態ということになります。

この状態を、ゲシュタルト療法(パールズ/フリードレンダー)の用語で「創造的中立性(創造的無関心) creative indifference 」と呼ぶこともできます。
「両極性(の葛藤)」が均衡・中和・消滅した中空状態/感覚です。
「両極性」にとらわれることのない自由な無の空間、ゼロ・ポイント、空性です。
セッションの中でも、ここで人はしばしば、澄み切った静かさのスペース(空間)のひろがりを経験したりもします。
(この「創造的中立性」状態と、次世代のトランスパーソナル心理学が「トランスパーソナル(超個/超人格)」的と呼ぶ意識状態が、地続きでつながっていることは予感できると思います。このような点が、ケン・ウィルバーが、ゲシュタルト療法(心身一元論的心理療法)とトランスパーソナル的な状態を連続的にとらえることを可能にする「実践的/実在的な根拠」でもあるのです)

さて、時として、この統合された自我(欲求)状態が、「自我状態Z」として現れてきた場合は、新しい椅子を別に用意して、その場所を与えてあげるというのも、技法的にはアリです。

そして、クライアントの方は、変容した自我/欲求状態XとYを体験しつつ、自分が過去に外部世界や相手に投影していり、自分だと信じ込んでいた自我(欲求)状態AとBが、偽りの、仮の状態(姿)であったことにまざまざと気づくことができるのです。
クライアントの方が、実在するAさんに投影していた、自我(欲求)状態Xの姿を、自分でもアーハ体験のように気づきくことになるのです。「Aさんだと思っていたのは、自分のXだったのだ!」と驚くことになるのです。幻想や霧が晴れた了解感と、充実した統合的なエネルギーを感じるようになるのです。

そして同時に、実在するAさんに投影していた、自我(欲求)状態A自体が、元来、自分の分裂した自我状態・パワーであったことに気づくのです。そして、そのパワーを、自我状態Xとして、自分のものとすることができるです。
クライアントの方は、分裂して生きられていなかった別の自分と統合されることで、ひとまわり大きくなった自分、パワフルになった自分を実感することができるのです。

※よくある間違い(失敗)について

よく、エンプティ・チェアの技法について、「なかなか終わらない」「終わらせ方が分からない」「腑に落ちない(気持ち悪い、モヤモヤした)終わり方になる」「頭で考えただけの結果になる」というような話を聞きます。
このような場合は、各「自我(欲求)状態の変容」が起こせていないことが一番の問題といえます。ワークの中で、クライアントの方が、それぞれの自我(欲求)状態に深く同一化することや、体験を深めることができていないのです。特に、感情的な要素です。
対立・葛藤状態にある「自我(欲求)状態A・B」のままで、椅子を移っていても、それは元々の葛藤状態を確認するだけのことで、統合は起きません(視点の転換くらいのことはできます)。各自我(欲求)状態への深い同一化(体験とエネルギーの解放)と、自我(欲求)状態X・Yへの変容を通じて、本当の統合も起きてくるのです。
このあたりの誘導は、微細精妙な技法と、自己の変容体験とリンクしてきますので、この技をより深めたい方は、ぜひ当スペースで学んでみていただければと思います。セッションにおいては、ファシリテーター自身の持っている変容体験が、クライアントの方の変容体験に同期しますので、ごまかしの効かない世界となります。より深い変容体験を持っているファシリテーターの方が、クライアントの方により深い体験を起こすことができるのです。シンプルな話なのです。

さて、以上が、エンプティ・チェア(空の椅子)の技法のあらましとなります。この技法は、さまざまな活用場面を持っており、また、その効果も多様なものです。そのため、ゲシュタルト療法を超えて、色々な流派でも、採用されることになったのです。

しかし、この技法のもつ潜在能力は、それだけに終わるものではないのです。
たとえば、「意識 awareness 」が、限定的な自我(欲求)状態をさまざまに移動していくこの技法のプロセスは、逆に、意識 awareness そのものが持っている非限定的な力を照らし出すことにもなります。それは、さきに少し触れたようにトランスパーソナル(超個的・超人格的)といわれる状態の秘密(原理)を解き明かす重要なヒントでもあるからです。

そして、このことが体験的に理解できると、トランスパーソナル心理学の理論家ケン・ウィルバーが、「ゲシュタルト療法的な心身一元論的統合(ケンタウロスの状態)は、ごく自然にトランスパーソナル的体験に移行する」と指摘していることの深い(深遠な)意味を理解できるようにもなってくるのです。

そして、それを単なる理論ではなく、実際の体験としても実感できるようにもなるのです。当スペースでは、なぜ、トランスパーソナル的な体験が得られやすいのかということの原理的な説明にもなっているのです。

同様に、私たち人類が、何万年にも渡って実践してきたシャーマニズム的伝統の秘密も、実は、この技法や、それが生み出す変性意識状態(ASC)との関係に含まれていたりもしていることがわかってくることになるのです。

このようなさまざまな点からも、この技法を深いレベルで身につけていくことは、同時に、人生を根本的に変える(超える)決定的な技法を手に入れていくことにもなるのです。

※実際のセッション(ワーク)は↓をご参考ください
セッション(ワーク)の実際
セッションで得られる効果
※関連記事
エンプティ・チェアの技法Ⅱ 葛藤解決
葛藤解決の方法(ポイント)Ⅰ
葛藤解決の方法(ポイント)Ⅱ ネガティブな感情の扱い方

※エンプティ・チェアの技法について、もっと知りたい方は、専門姉妹サイト
 →「エンプティ・チェア・ワークス」

※エンプティ・チェアの技法は、下記の事柄に強い効果や変容を人に起こします。
変性意識状態(ASC)とは何か
【図解】心の構造モデルと心理変容のポイント 見取り図

【ブックガイド】
ゲシュタルト療法については、基礎から実践までをまとめた拙著
『ゲシュタルト療法 自由と創造のための変容技法』
をご覧下さい。
ゲシュタルト療法の応用的、進化的な使い方については、気づきと変性意識の方法論である、拙著↓
入門ガイド
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『砂絵Ⅰ 現代的エクスタシィの技法 心理学的手法による意識変容』

をご覧下さい。 

ゲシュタルト療法 セッション(ワーク)の実際

【内容の目次】

セッションの構造的普遍性
セッションの流れ【要約版】
ワークとは

 ①信頼できる安全な空間(場)づくり
 ②あつかうテーマを決める
 ③リラックスして、3つの領域に気づきをひろげる。
 ④深い欲求(感情)に気づき、焦点化する。
 ⑤気づきを深め、欲求(感情)を展開する。体感を通して解決する
 ⑥現実に、より着地(統合)する
 ⑦ワークの終了


▼セッションの構造的普遍性

当スペースで行なっているセッションは、進化型(深化型)のゲシュタルト療法となります。
ゲシュタルト療法のもつ感覚的、流動的、即興的、創造的なアプローチ(ワーク)をベースに、よりクライアントの方が潜在意識の発現を体験され、自身の変容を経験していただけるように深化させた形となっています。

ところで、ゲシュタルト療法のセッションというものは、瞬間瞬間の感覚や感情、心やからだのエネルギー、気になることや快苦に丁寧に気づいていくというプロセスとともにじっくりと進んでいきます。
そのため、その展開はとてもナチュラル(自然)な、人間の生理的なプロセス、潜在意識の自律的な発現をたどっていくものとなります。
(適切で核心的なアプローチがあれば、その中でクライアントの方は変性意識状態(ASC)の中に入っていきます)

そのため、セッションの深いプロセス(体験過程)というものは、興味深いことに私たちが子供の頃からなじんでいる昔話やおとぎ話や神話のパターンと大変似かよったプロセス(構造)をたどっていくことになるのです。昔話や神話とは、人類が長い歴史的な歳月をかけて、自らの心の姿を映し出したものであり、私たちの根源的な心の構造が映し出されているものだからです。
そのパターンとは、
「主人公が、別世界(異界、変性意識状態)に冒険に行って、宝物(秘密のパワー、癒し、人生の変容)を獲得して、元の世界に戻って来る」
という形です。このような冒険物語に似たパターンをもっているのです。
この普遍的なパターンが私たちの心にとって重要であるがために、NLP(神経言語プログラミング)などでも、ジョゼフ・キャンベルの「神話モデル」が重視される理由となっているのです。
英雄の旅 (ヒーローズ・ジャーニー) とは何か

当スペースのゲシュタルト療法のセッションも、そのような神話物語の形式と似たパターンを持っています。
この神話物語との類似性は、セッションというものが人間心理の普遍的な構造に根ざした「創造と刷新(再生)のプロセス」であることを意味しているのです。
ところで、ゲシュタルト療法の創始者フリッツ・パールズが「自分はゲシュタルト療法の創始者ではなく、再発見者にすぎない」と言ったのはそのような意味合いです。とても本質的な原理によってできているのです。そのため、ゲシュタルト療法は、心理療法というだけでなく、潜在意識のさまざまな領域(可能性と創造性)を探索する上でも、とても有効な方法論となっているのです。

たとえば、ユング心理学の流れをくむプロセスワーク(プロセス指向心理学)の創始者アーノルド・ミンデルは指摘します。

「現代のゲシュタルト療法の創始者であるフリッツ・パールズは、先住文化のシャーマンがいれば間違いなく仲間として歓迎されたであろう。パールズは、自己への気づきを促すために、夢人物(ドリーム・フィギュア)や身体経験との同一化ならびに脱同一化法を用いた。そして、モレノの「サイコドラマ」から、夢見手が自分や他者を登場人物にすることによって夢の内容を実演化する方法を借用している」(ミンデル『ドリームボディ』藤見幸雄監訳、誠信書房)


それゆえに、誰においてもゲシュタルト療法の感覚を習得されていくことは、潜在的な創造力を解放する決定的なメリットにつながっていくわけなのです。
当スペースが、ゲシュタルト的アプローチを心理統合(治癒)だけに限定するのではなく、創造的なアウトプットの開発や意識の拡張といった多様な側面にフォーカスしている理由でもあるのです。

以下では、そのような(当スペースの)ゲシュタルト療法のセッションが、どのような内容を持つものかを解説いたしたいと思います。

【ブックガイド】
ゲシュタルト療法については、基礎から実践までをまとめた拙著
『ゲシュタルト療法 自由と創造のための変容技法』
をご覧下さい。
おとぎ話や神話が持つ、深い意味合いは、コチラ↓
『砂絵Ⅰ: 現代的エクスタシィの技法 心理学的手法による意識変容』
変性意識や気づきについての入門は、コチラ↓
『気づきと変性意識の技法:流れる虹のマインドフルネス』
「英雄の旅(ヒーローズ・ジャーニー)」




▼ワークとは

ゲシュタルト療法では、セッションの中で、ファシリテーターと自らの心理的テーマに取り組み、それを解決していく作業のことを「ワーク」と呼びます。
ゲシュタルト療法同様、米国西海岸系の体験的心理療法では、クライアントとして或るテーマに取り組むことをだいたい「ワーク work (作業)する」と言います。そのため、厳密にいうと、契約されたセッション時間の中に「ワーク」という取り組みの単位があるという構造になっています。

さて、ワークは、クライアントの方とファシリテーターとの相互のやりとりで、進行する取り組みのものとなっています。1つのワークは、大体30分~90分かけて行なわれます。

ここでは以下で、実際にゲシュタルト療法のワークでは、どのような事柄が行なわれるのかについて描いてみたいと思います。クライアントの方がどのような内的体験をされ、どのように解放や心理的統合を得るのかについてプロセスにそって描いてみたいと思います。

古典的なゲシュタルト療法はグループセラピーですので、ワークを希望するクライアントの方が挙手をして参加者皆の前で、ファシリテーターとワークを行ないます。個人セッションの場合は、クライアントの方とファシリテーターと二人で以下のようなことを行なっていきます。

◆気づき awarenessの力の重要性

ところで、ゲシュタルト療法のセッションにおいては、クライアントの方にご自分の欲求や感情に刻々と「気づいてawareness」いただき、表現してもらうということを行なっていただきます。これがセッションの核となります。

この「気づきの力」については、最近では「マインドフルネス」という言葉とともに、その本当の能力(機能)が知られるようになってきました。
「気づき」とは、単なる認知や認識とは違います。
「気づき」「マインドフルネス」の機能は、私たちの通常の日常意識や注意力に対して、メタ(上位)的な位置と働きを持っているものなのです。そして、正しく使うと私たちの心理的統合と成長を大いに促進するものなのです。
逆の言い方をすると、普段の私たちはあまり「気づきを持たない状態」で生活しているといえるのです。
ゲシュタルト療法のセッションやマインドフルネス瞑想をきちん行なうと、このことに気づかれると思います。

フリッツ・パールズは語ります。

「『気づく』ことは、クライエントに自分は感じることができるのだ、動くことができるのだ、考えることができるのだということを自覚させることになる。『気づく』ということは、知的で意識的なことではない。言葉や記憶による『~であった』という状態から、まさに今しつつある経験へのシフトである。『気づく』ことは意識に何かを投じてくれる。」(パールズ『ゲシュタルト療法』倉戸ヨシヤ訳、ナカニシヤ出版)

そして、

「『気づき』は常に、現在に起こるものであり、行動への可能性をひらくものである。決まりきったことや習慣は習された機能であり、それを変えるには常に新しい気づきが与えられることが必要である。何かを変えるには別の方法や考え、ふるまいの可能性がなければ変えようということすら考えられない。『気づき』がなければ新しい選択の可能性すら思い付かない。『気づき』と『コンタクト』と『現在』は、一つのことの違った側面であり、自己を現実視するプロセスの違った側面である。」パールズ『ゲシュタルト療法』倉戸ヨシヤ訳、ナカニシヤ出版)

ワークを通して、クライアントの方は、マインドフルネスの静かな自己集中を行ない、このような〈気づき〉の状態をまざまざと体験していくこととなります。そして、自分が人生で刻々と新しい行動をとれる存在であることを、新しい心の解放とともにまざまざと体感していかれることになるのです。


①信頼できる安全な空間(場)づくり


さて、まずワークでは、それが行なわれる空間が大切となります。この場の空間づくりは、第一にはファシリテーターの仕事(役割)です。そのため、通常ファシリテーターからクライアントの方へその空間でのルールや取り決め事項などをさまざまな事柄を説明させていただきます
一方、クライアントの方には、そのセッション空間やファシリテーターの存在(質)信頼に足るものであるか否かを、ぜひご自分の感覚で確かめていただければと思います。さて、これらのことがなぜ重要なのでしょう?

ワークが効果的に行なわれるためには、クライアントの方にとって、その空間(ワークショップ、セッション・ルーム)が「安心できる、守られた空間」であることが必須となるからです。
それでなければ、クライアントの方は安心し、リラックスして自分自身の心の底に降りていき、深い感覚や深い感情に気づいたり、触れたりすることなどできないからです。ましてや話したり表現することなどはできないからです。

また、安心できる信頼できる空間であると、クライアントの方が感じたならば、プロセスの中で、クライアントの方はごく自然な形で意識の変容状態である変性意識状態(ASC)に入っていきことにもなるからです
そして、その状態は、自然治癒のような形でクライアントの方の潜在意識を活性化させ、癒し(統合)を行なうセラピーの大きな下支えとなっていくのです。そのためにも、信頼できる空間であるか否かというのは、とても重要な要素となっているのです。クライアントの方はこの部分については、ぜひご自分の直観や嗅覚を信じていただければと思います。


②あつかうテーマを決める


通常は、ワークのはじめに、クライアントの方が、そのセッションであつかってみたいテーマを提出します。テーマは、それがクライアントの方自身の感覚・感情を訴えるものであれば、大体のところあつかえます(簡単にあつかうべきではないテーマは別として)。

テーマはおおよそ、クライアントの方がその時気になっている生活上の課題や願望、快苦をテーマに取り上げることが多いものです。
そのように、今現在、気持ち的・生理的に前景に現れてきているテーマを切り口とすると、潜在意識からより深いアウトプット(解決策、方向性、治癒、創造性)が得られやすくなるからです。それが「ゲシュタルト」というものの性質でもあるからです。

・今、課題や障害と感じていること(感情や行動)。
・今、自分が強く望んでいる事柄
・今持っている心の迷い・葛藤・苦痛

・人生の中で達成したいテーマ
・最近(また昔から)、気になっていること
・人生の課題で答えが欲しいこと
・気になる身体症状や夢

などなどです。

いくつかテーマを用意しておいて、ワークの直前に「心の中で高まってきた事柄」があつかうのにもっとも適したテーマです。それは心自身が発しているシグナルだからです。

ところで、セッションに来た時点でも、クライアントの方自身が自分のテーマが何なのか明確になっていないケースもとても多いものです。
「とりあえず、何かやってみたくて来ました」というケースです。しかし、それで全然かまいません。

実際、ワークのとっかかりとしては、クライアントの方が、今現在、気になっていること(気持ち、出来事)を色々と話していかれる中で、ファシリテーターがその話を受けて、質問をしたり、焦点化することで、ワークのテーマを一緒になって見つけていく(提案させていただく)というパターンも多いのです。

ところで、ゲシュタルト療法のワークにおいては、以下に見るように、「今ここ」の感覚(感情)に焦点化して、そこで現れてくる欲求(感情)に丁寧に気づき、それをたどっていくことで必ず重要な(核心的な)テーマにたどり着けるという考え方(理論)があります。そのため、はじめに設定するテーマについては、あまり詰めて考えなくともいいといえるのです。


③リラックスして、3つの領域に気づきをひろげる。


さて、ここからが、セッションの本編に当たる部分です。おおよそのテーマや方向性が決められた後、クライアントの方のテーマが持つ内実を探索していく段階となります。

ところで、ワークの最中に、クライアントの方に行なっていただくこといえば、基本的には、心を静かにマインドフルネスの状態になり、ご自分の奥から湧いくる感覚や欲求(感情)の動きに、気づきを向け続けていき、それを表現してもらうということだけです。

ファシリテーターはそのシェアを受けて、その体験をさらに深めていただくための、またより深い展開を行なっていただくためのさまざまな提案を行なっていくのです。

そして、クライアントの方には、それら提案に興味が湧いた場合にのみ、また自分の心の表現としてそれが「ピッタリ来た」「興味が湧いた」「響いた」と感じられた場合に、それらを「実際に行なって」いただくのです。
また、ご自身で「よりぴったりとした表現」「別にもっとやりたいこと」が浮かんできた場合は、それを行なっていただきます。

つまり、さまざまな体験や表現を、
・より感じてみたり、
・より気づきの焦点を当ててみたり、
・より大きく表現してみたり、
していくわけです。

また、気づいて awareness いくことに関していえば、心をマインドフルネスの状態にして、「3つの領域(主に、内部領域、中間領域)」湧いてくる欲求(感情)を拾いあげ(ピックアップし)ていくことが行なっていただくことです。
3つの領域とは、別に記したように。ゲシュタルト療法が考える、注意力が向けられる3つの領域のことです。

①肉体の中の感覚世界や感情世界である内部領域
②まわりに見える外部世界を感じている外部領域
③思考や空想の行き交う中間領域 です。
→「気づきの3つの領域」

とりわけ重要なのは、①の内部領域です。そこに生きた実質や葛藤が存在しているからです。
クライアントの方には、
たえずご自分の内部・外部・中間領域で起こるさまざまな感覚や感情のシグナルに気づきを向けていただくわけです。

そのため、ワークの際中、ファシリテーターはしばしば問いかけます。

「今、何に気づいていますか?」
「今、何を感じていますか?」
「今、何を体験していますか?」

クライアントの方には、ワークの進行に合わせてさまざまな表現を行なっていきますが、常に戻ってくるのはこの地点です。この気づきの地点が、ワークのアルファ(始点)でありオメガ(終点)であるのです。

「その感じ(感情)をよく感じてください」
「その感覚(感情)をよく気づいてみてください」

このようにファシリテーターは言います。その感覚・感情・欲求により焦点化していただくためです。
その感覚の中
にこそ「答え」があるからです。その感覚とそこに在るものが「答え」を知っているからです。
今ここで自分に起きている感覚や感情にただまっすぐに気づいていくだけで、治癒(解放と統合)のプロセスは自然に活性化し、私たちの調整機能はグッと深まっていくものなのです。

自分の内的欲求(感情、快苦)に今ここで刻々気づいていること、そこにすべての出発点と答えがすでにあるのです。ゲシュタルト療法が「今ここのセラピー」といわれる所以です。

中間領域の思考や空想や連想に流されしてまうのではなく、それらに流されずに、内部領域のプロセスや外部領域の現実にただ気づいていくという支点が、変容と統合をつくっていく要であるのです。
これが、気づき awareness の力の重要性なのです。

………………………………………………………………………………

さて、ワークの具体的場面(風景)をもう少し細かく説明しますと…

ファシリテーターは要所要所で、上記のように、クライアントの方の中で起こっている欲求(感情)について問いかけと確認を行なっていきます。クライアントの方にご自分の感覚を澄ましていただき、3つの領域のさまざまな感覚チャネルの欲求(感情)に気づいていただきます。気になっていることをシェアいただきます。例えば以下のようにです。

▼肉体の感覚・欲求に気づく
→お腹のところに凝りを感じます。
→肩のところが重くなったように感じます。
→胸の中がムカムカ気持ち悪いです。

▼視覚/イメージ/ヴィジョンに気づく
→昔の学校で大勢でいる風景が見えます。
→何か黒い煙のようなイメージがそこにあります。

▼聴覚/声/言葉に気づく
→こんな言葉が思い浮かびました。
→知り合いが昔こんなことを言ってました。
→耳を刺すような音が聞こえます。

▼記憶に気づく
→こんな出来事が浮かんできました。
→こんな夢を思い出しました。

クライアントの方のシェア(報告)を受けて、ファシリテーターはさらなる感覚や感情への焦点化やその奥にものを探るためのさまざまな提案を行なっていきます。
このようなやり取りを行なう中で、クライアントの方はご自身の中の「より気になる感覚(感情)」というものを明確にしていくこととなるのです。
そのプロセスを通じて、自己の内部への潜入がどんどんと深まっていくこととなるのです。また、この過程でだんだんと軽度な変性意識状態(ASC)入っていくというこも起こってくるのです。


④深い欲求(感情)に気づき、焦点化する


さて、ゲシュタルト心理学の世界では、生体(生物の生理)にとって緊急かつ必要な欲求(感情)が、「図」となって感覚の前景に現れてくると考えています。ゲシュタルトとは何か

ワークの実際の場面でいうと、気になった欲求(感情)というものは、そこに気づきを当てるとあたかも異物を吐き出すかのようにその奥底の欲求(感情)を前面に押し出してくることとなります。そして、その奥底の欲求(感情)に気づいていくと、さらにその奥底の欲求(感情)が出てくることとなるのです。
そこで
だんだんとエネルギーが流れてくるのです。そして、このような気づきと焦点化を深める中で、その欲求(感情)の深い正体現れてくることになるのです。
そのプロセスが進む過程においては、肉体的に弛緩が起こったり、小さなアハ体験(小さなサトリ)が起こったりします。何か「わかった感じ」に触れるのです。それが、ワークを進めるサインやシグナル、道標となります。
このようなプロセスでワークは進んでいきますが、クライアントの方の欲求(感情)への探索が深まっていきますと、やがて少し強めの欲求(感情)の塊/鉱脈たどり着くこととなります。

これが、クライアントの方が、普段の日常意識ではなかなかつかまえられない核心的なテーマ(とその入口)であるのです。
テーマは、心の中でさまざまな形で存在しています。
ご自分の中にある複数の相反する欲求(感情、自我状態)が対立しているために、心にストップや制限をかける「葛藤状態」や、
過去の体験が未消化に終わっているため、心の中でストップをかけている「未完了の体験(ゲシュタルト)」「やり残した仕事 Unfinished Business」などです。

ところで、「葛藤状態」や、「未完了の体験」というものは、通常、私たちの中では、体験記憶や抑圧の重層性にしたがって、ミルフィーユのように多層状になって構成(存在)されているものです。そのため、強い感覚にたどり着いたといっても、それは入り口(表面)にたどり着いたという意味合いとなります。
そこから一皮一皮剥いて、さらにその奥底にある核心に向かっていくというのがワークのプロセスとなります。ただ、ここにおいては、クライアントの方はすでに一種の変性意識状態(ASC)に入っているため、比較的スムーズな形でそのプロセスを内奥の世界まで追跡していくことができるのです。ワークが終わった後で、まるで別世界(異界)に入って行った体験だったと振り返ることが多いのもそのためです


◆ゲシュタルト療法の介入技法の意味 (心を可視化する)

ところで、ゲシュタルト療法といえば、エンプティ・チェア(空の椅子)の技法や、身体の動きや表現を使った技法など、比較的派手な?技法がイメージされがちです。
これらの技法は、そもそも何の効果を狙ったものかといいいますと、上で見たような感覚(欲求・感情)により焦点化し、増幅(促進)するために行なうものです

通常、私たちの感情というものは、混然一体の悶々とした塊の状態にあり、その感情の内訳(明細)を、私たちは明確にはとらえられてはいません。また、ワークの最中においても、さまざまな感情がもつれつつ行き交っているので、その中にどんな感情があるのか分からないのです
この個々の感情のゲシュタルトを明確にしていくのが、プロセス展開の肝となります。
技法的な工夫によって、このゲシュタルトを明確にし「心を可視化」するというが各種の技法的介入の意味なのです。
クライアントの方の欲求(感情)を焦点化したり、切り分けたり、増幅したりするためにこれらの技法を使うのです。

【例】
「その感覚(気持ち)はどんな姿(形、色、感触、冷熱、硬軟)をしていますか?」
「その感覚はなんと言っていますか?」
「その感覚は、からだのどこにありますか?」
「からだのその部分は、なんと言っていますか?」
「からだのその部分と会話できますか?」
「たとえば、この椅子に、その○○という気持ちを取り出すことができますか?」
「ここに置いたその気持ちは、どう見えますか?」
「たとえば、○○と言ってみる(表現してみる)のはどうですか?」
「実際に、そう言ってみると、どんな気持ちがしますか?」
といったような具合です。

このようにして、欲求(感情)に、ゲシュタルト的な感覚実体を与えることにより、心のエネルギーの流動化を促し、その姿をより明確にとらえられるようになっていくのです。
また、その欲求(感情)の表現を通して、さまざまな欲求(感情)同士の対話や交流・融合を図ることもできるのです。
そのことが心理的な解決と統合に決定的に作用していくことになるのです。


⑤気づきを深め、欲求(感情)を展開する。体感を通して解決する


さて通常、クライアントの方の中で深い気づきが得られた後でもさまざまな別の欲求(感情)が残っている(待機している)ものです。
先ほど触れたように、心はミルフィーユのように幾層にも渡って、層状に構成されているものだからです。
それら表層上のものを超えて、ある程度の核心的な層(腑に落ちる層)に触れることまでを、ワークは目標とします。

ところで、人間の心は層状に積み重なって構造化されているので、或る心のテーマ(欲求・感情)が、気づきと表現を通して解放されると、自然にその下からさらなる次のテーマ(欲求・感情)が現れてくることになります。
このプロセスの繰り返しにより、心のより深くまで探索していけることとなり、日常生活では予想もできなかったようなより深い解放と変容、統合を得ることができるのです。

そして、この探索の深まり(次元)の深さが、通常のカウンセリングやコーチング、NLPなどと較べた場合の、ゲシュタルト療法の持つ圧倒的な効果の秘密でもあるのです。アーノルド・ミンデルが指摘するようにシャーマニズム的な深さでもあるのです。

◆変性意識状態(ASC)の体験とスキル

さて、古典的・教科書的なゲシュタルト療法がよく理解していないことですが、重要な要素でもある変性意識状態(ASC)について少し解説してみたいと思います。

このようにワークの中で、自己の感覚に深く没頭し沈み込んでいく過程で、クライアントの方は、軽度な変性意識状態(ASC)に入っていくこととなります。それがゆえに、普段気づけないことに色々と気づけたり、普段行なわないような表現を(あまりまわりを気にせずに)行なえるようになるのです。これは、変性意識状態(ASC)においては、日常意識の価値観や知覚が希薄になり、潜在意識からの欲求(感情)、自我状態とよりダイレクトなつながりが達成できているからです。
また、変性意識状態(ASC)自体が、クライアントの方の深部にある潜在意識の活性化と自律性を増大させ、自由な解放状態や創造的な統合状態へと運んでいくことにもなるのです。

くわえて、変性意識状態(ASC)は、クライアントの方が普段同一化している自我状態や日常意識から、クライアントの方を強く解き放つ作用も持ちます。
これがワークの中で、クライアントの方が、しばしば、超越的でトランスパーソナルな(個人性を超えた)新世界を体験する理由でもあるのです。それはしばしば、鮮やかな知覚的光明に満ちた意識拡張体験になったりもするのです。

◆体感を通した表現スキルの獲得

ところで、また、ゲシュタルト療法の特徴でもありますが、クライアントの方には、実際に感じた欲求(感情)について「心身で体感を通して」表現していただくことを行ないます。心身一元論的な理論に裏付けられたものですが、ここが重要なポイントとなります。

このような身体的アウトプット(表出・表現・外在化)の体験が、クライアントの方の心身の中で組織化され、心理的統合と表現力の決定的な力となっていくからです。
それは、頭の中(中間領域)だけではなく、実際に「物理的(内部領域・外部領域)に」表現することは、心身の神経的・脳的・物理的・エネルギー的に直接作用することになるからです。肉体動作を通して、その体感エネルギーを通して、物理的・神経的に書き換えることになるからです。
そのため要所要所で、ファシリテーターは、クライアントの方の物理的な表現を促していくこととなります。それはそれがとても決定的な統合(心身の組織化)の効力を持つためであるからなのです。

 

そして、クライアントの方は、ワークの中でこのような気づきと物理的表現、小さなアーハ体験を繰り返す中で、やがてひとつの感情的な納得、統合的な腑に落ちる段階(地点)に到達することとなります。
その地点で、ひと一区切りの創造的解決(解放と統合)がもたらされるのです。
そして、クライアントの方の気づき・ある種のサトリ・充実感と統合感・着地感とをもって、ワークは終了していくのです。
クライアントの方にとってその感覚は、自分の本当にやりたいことを葛藤や妨げなくできるように感じられる充実感、もしくは自分の欲求がひとまとまりになったような統合感、集中された「まとまり感」、主体感として感じられるものとなるのです。


⑥現実に、より着地(統合)する


ワークの最後の段階では、クライアントの方の深い部分から出てきたばかりの、まだ柔らかい新しい欲求(感情)、統合感を、日常生活で充分に活かしていけるか確認を取っていきます。
変性意識状態(ASC)の異界の中でとらえられた、その新しい欲求(感情)感覚が、日常的現実できちんと活かされるように創造的調整をとっていきます。

新しい心の要素(意欲、能力、欲求)は、過去の人生の中で理由があって抑圧されていた自我の要素となります。
そのため、その新しい自我(意欲、能力、欲求)が、既存の日常生活の中でもしっかりと自立し、新しい力を発揮できるように居場所と防具(結界)を持つことが大切となるのです。

そのため、ワークの最後の場面では時間をかけて、(変性意識状態から抜け出ていくとともに)新しく現れてきた自我状態(意欲、能力、欲求)と既存の自我状態との統合を定着させていきます。

具体的な手法としては、現実の実務的な場面のリハーサルや、(グループの場合などは)巡回対話の技法など色々ありますがここでは省略いたします。

この場面は、ワークとしては、新しい自我状態をサポートし、たくましく育てていく方向づけとして、決定的に重要な場面(局面)でもあるのです。


⑦ワークの終了


クライアントの方が、日常意識と日常感覚の中で、統合感(着地感)をしっかりと得られたと確認された段階で、ワークは終了します。ワークの空間が閉じられていきます。


さて、以上、長くはありましたが(また大枠を単純化して書きましたが)、ワークの中核的なプロセスを解説いたしました。

実際のワークは、クライアントの方のさまざまな想いや逡巡を探索しつつ、あちこちに寄せては返す波のように行きつ戻りつしながら進んでいくものです。
しかし、漂流しつつ展開するそのプロセスの背後(核心)には、クライアントの方が元来持っているパワフルで素晴らしい自律性と創造性の泉が必ず待っているものなのです。

そして、このようなワークの探索を通じて、クライアントの方の人生は、確実に変化・変容していくものであるのです。ぜひ実際のワークを体験してみていただければと思います。

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もし、明日を違ったものにしたければ

もし、君たちが、明日を違ったものにしたければ、

まず今日を違ったものにしなければならない。

もし、今日が単に昨日の結果であるなら、

明日もまったく同様に、今日の結果となるだろう。 

                ―G・I・グルジェフ


  ウスペンスキー『奇跡を求めて』(浅井雅志訳)


グルジェフは、別に、
フランスの学院に掲げた文章群の中にも、

「明日という病から自由になった者のみが、
ここに来た目的を達成することができる」と、

たしか書いていました。


人生において、
何かを「為す」ことができる時とは、
「今、ここ」だけです。

そこを逃して、他に、「時」はありません。

今日、少しだけ、新しい局面をひらいたら、
明日は、少しだけでも、違ったものになります。

今日を、今ここを、怠惰に流したら、
何も変わらない明日が、そのままあるのです。


新しい生の局面をひらきたいなら、
今日、少しだけでも、努力して、
小さな冒険をしてみること。

そんな繰り返しが、
いつしか、
私たちを思いがけないところに、
運んでいくのです。




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プロフィール

松井 雄 (まつい ゆう)

ゲシュタルト療法家/ファシリテーター。変性意識活用トレーナー。創造性開発トレーナー。

 はじめまして、こんにちは。
 私は長年に渡りゲシュタルト療法をはじめ、各種の体験的心理療法、瞑想技法、気功、シャーマニズム野生の気づきの技法NLP、コーチングなどを学び、さまざまな現場で実践してきました。また、その過程の中で心身の深い変容体験、特異な変性意識体験、さらには風変りなトランスパーソナルな(超越的)体験などをさまざまに得てきました。
 また、長年従事した企業勤務においては、各種の実務―営業活動から人事・教育研修担当、新規事業開発やネット事業、オンデマンド事業、店舗運営展開事業まで―幅広い分野の事業に携わってきました。
 そして、そのような実務経験の中で、ちゃんと焦点化されていない点ですが、今の日本社会の大きな問題として、人々のマインド面(動機づけ/関係性/自己実現)での課題や、能力開発・創造性開発メソッドの不在について、
痛感することになったのでした。現在の日本経済(ビジネス)の大きな行き詰まりが、制度や実務に関するものだけではなく、マインド面に大きく関わることは明白だとも感じられたからでした。そして、それらを解決し打開する可能性のある、さまざまな方法論(心理療法やマインドフルネス、コミュニケーション理論や組織開発等)について探求を行ない、新しい構想を練ることにもなったのでした。

 そのような結果として、ゲシュタルト療法変性意識状態(ASC)、マインドフルネスやコーチング、シャーマニズム的な方法論等を、コンビネーションで構成的に使うフリー・ゲシュタルト・ワークスを起こすことになりました。そして現在、進化型のゲシュタルト療法変性意識状態(ASC)を使い、人々の深い心身変容、潜在意識活用や成果の達成、超越的な能力開発や自己実現をサポートする活動を各種行なっています。
 現在の、のびしろのない、完全に行きづまっている(詰んでいる)現代日本においてこそ、人間の基盤的能力(生きる力)を根本から刷新し、潜在能力を解放する、超越的な心理療法の方法論が有効だと考えているわけです。
※私自身が、どのように
「ゲシュタルト療法」を発見して、学んだ数多の方法論の中から、何故ゲシュタルト療法というものを主なメソッドに選んだかの経緯については下記をご覧ください。ゲシュタルト療法の特色がご理解いただけると思います。もっとも、ゲシュタルト療法自体に、非常に多岐にわたるタイプがあり、個々の実践者(ファシリテーター)によって、アプローチがまったく異なるものですが、私自身のゲシュタルト療法の解説にもなっています。私自身のゲシュタルト療法は、さまざまなタイプのものを統合した、より一段進化(深化)させた形になっていますが。
「なぜ、ゲシュタルトなのか ゲシュタルト療法を技法として選択した理由」

 ところで、これまでさまざまな人々の深遠な「変容」をお手伝いをさせていただいた経験からも、個人的にもったさまざまなトランスパーソナル(超越的/超脱的)な経験からもお約束できることがあります。
 それは、誰の中においても開花することを待っている、並外れた魂(自己実現、超精神)の力が「存在の別の階層(別のフロア、開かずの間)」に存在しているということです。むしろ、それは私たちの存在のデフォルト、前提なのだということです。秘教的な伝統の中で、「悟り」とは、そもそものデフォルトなのだという知見と同じようなことです。

 多くの人は、この「人生デパート」の1階(1F)だけをうろつき回って、お店のすべてだと思い込んでいます。「もう、すべてのお店を見終わってしまった(あーぁ、つまんない)」と感じています。まわりの人も皆そう言っているので、自分でも、なんとなくそう信じこんでいるわけです。

 1階とは、この「日常意識」の世界です。普段のこの生活世界です。しかし実は、この人生デパートには、まだ上部の階層が沢山存在しているのです。2階3階、5階10階、さらに20階30階と続いているのです。まだ楽しいお店や興味深いお店が沢山、山ほど存在しているのです。また、その果ての最上階には、すべてを〈まばゆい空〉に吸い込んでいくような屋上も開けているのです。まさにワンダーランドです。しかし、それらは、この「日常意識」以外の世界ですので、「普段の生活」では知ることができなくなっているのです。ですので、要は、そこ(上部の階層)へ至るための通路や階段、エレベーターや非常口を見つけて、それを自分のものにするということなのです。あなただけの道が存在しているのです。
 当スペースでは、あなただけのその「秘密の通路や階段」を見つけていただくことになります。
 心の未知の可能性を信じ、探索し、人生で素晴らしい自己実現(超越)を達成していきたいという人に対しては、必ずお力になれることをお約束いたします。
それが、当スペースがご案内している「流れる虹のマインドフルネス」の世界なのです。 


 他に、心理学的シャーマニズム研究所を主宰。日本ゲシュタルト療法学会会員。東京サイコセラピー・アカデミー(旧東京ゲシュタルト研究所)トレーニングコース終了(2003年)。ゲシュタルト・ネットワーク・ジャパン ファシリテーター養成コース終了(2013年)。NLPマスタープラクティショナー(英国NLP学院。2005年)。著書に『気づきと変性意識の技法:流れる虹のマインドフルネス』『砂絵Ⅰ:現代的エクスタシィの技法 心理学的手法による意識変容』『ゲシュタルト療法ガイドブック:自由と創造のための変容技法』(デザインエッグ)『砂絵Ⅱ:天使的微熱、あるいは脱「人間」の意識変容(仮題)』(近刊予定)


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