さて、今回は、
私たちの内で働いている、
心的システムの、高次の学習階層について、
考えてみたいと思います。
これらは、
変性意識状態(ASC)の中などでは、
しばしば出遭うことになる、
自己システムの隠された側面とも、
いえるものかもしれません。


◆フロー体験で働く機構

ところで、
以前、取り上げた、
フロー体験flow experienceにおいては、
私たちは、高度な集中状態の中で、
特殊な意識(心身)状態に、
入り込むこととなります。

そこにおいては、
私たちは、その行動(行為)を、
圧倒的で、没我的な集中状態で、
行なっているわけですが、
そこでは、

自分で完全にコントロールしているという、

感覚と同時に、あたかも二重写しのように、
「自分でないものの力」によって、
それらの行動が為されているかのような、
不思議な感覚を得ることになります。



その状態においては、
まるで、何かの自動化によって、
高速的に、最適な判断と選択、
迅速で的確なアクションが、
取られていくかのようです。

おそらく、
この状態においては、
ベイトソンのいう、
二次学習の機能の成果が
並外れた状態で働いているとも、
言えるのかもしれません。

また、この状態における、
閃光のようなフリキシブルな創造性からすると
三次学習の要素も、いくらか、
含まれているのかもしれません。

いずれにせよ、
非常にひろい幅の、
学習階層で、
心身の創造性が、
発揮されている状態であると、
推察されるわけです。


◆心身のメタ・プログラマー

さて、ところで、
ベイトソンの友人で、
イルカの研究者や、
アイソレーション・タンクの発明者としても、
著名な、ジョン・C・リリー博士は、
合法時代のLSDを使った、
心理・意識機能の探求者、研究者でもありました。

人間心理における作動のシステムを、
プログラミングや、
そのメタプログラミングとして記述する、
『バイオコンピュータとLSD』(リブロポート)は、
自らをLSDセッションの被験者として、
(精神分析的な知見も含め)
人の心理機能を、
システムの制御体系として、
抽象度高く表現した書物です。

また、その後の、
『意識(サイクロン)の中心』(平河出版社)においては、
前著の体系を引き継ぎつつ、
心身(意識)システムの制御における、
プログラムとメタプログラミングの階層構造を、
各種の実践体験の中で、実験(確認)していくという、
興味深い書物となっています。

そこにおいては、
私たちの日常意識(プログラム)を制御する、
高次のシステム(メタ・プログラマー)についても、
さまざまな考察がめぐらされています。

そして、
フロー的な体験や、それ以上の体験のように、
極度に潜在能力が解放された、
特殊な存在状態においては、
メタ・プログラマー自身が、
私たちの存在を制御し、
操縦していくかのような事態が、
興味深い実体験(事例)とともに、
数多く紹介されています。

そのような事例などは、
例えば、フロー体験の中で、
どのような超越的なシステムが、
私たちの内で作動しているのかを考える際の、
ヒントになるものと思われるのです。

また、その際の、
仮説としての、心の階層モデルなどは、
世界の諸伝統などとも響きあう、
共通性を持ったモデルでもあり、
そのさまざまな比較検討が、
可能なものともなっているのです。


◆「聖霊」の働く階層

ところで、以前、
映画『攻殻機動隊』と、
そのゴーストGhostの変性意識状態(ASC)について、
考えてみた際、
初期のキリスト教徒に見られた、
「聖霊体験」について、
それらを一種の変性意識状態の事例として、
取り上げてみました。

つまりは、
聖書にある、
「聖霊にみたされる」体験を、
システム的に、
意識が、
未知なる心身の「上部構造」とつながる体験として、

とらえてみる可能性について、
考えてみたわけです。

そして、
上部構造とつながるシステムな体験であるがゆえに、
情報が整列されることにより、
私たちの日常意識(下位構造のプログラム)を、
整理・改変する力、
つまりは統合(治癒)する力が、
生まれるのではないかと、
比喩的に、考えてみたわけです。

ところで、
そのように考えてみると、
この、心の階層システム的な仮説が、
先に見た、
リリー博士のいう、
「私たちのプログラム(日常意識)を、
制御するメタ・プログラマー」という仮説と、
近しい姿を取っていることに、
あらためて気づかされるわけです。

そして、実のところ、
筆者自身、
拙著『砂絵Ⅰ 現代エクスタシィの技法 心理学的手法による意識変容』

に記したように、
風変わりな変性意識状態(ASC)を、
さまざまな経験として持ったわけですが、
判然とはわからないものの、
それらの事象の背後に、
何らかのシステム的なつながりがあることは、
類推(予感)できたのでした。

そのようなことからも、
これら心的システムの、
プログラミングにまつわる領域には、
世の事例の多さを考えてみても、
探査検討すべき領域が、
まだ沢山あると感じられるのです。


◆この人生の背後にあるもの

私たちの人生には、
何らかのきっかけで、
日常意識を超える要素が、
変性意識状態の片鱗として、
やって来ることがあります。

それらは、
ひょっとしたら、
私たちの日常意識の背後で働いている、
メタ・プログラマーの、
何らかの調整作用の影響であるとも、
考えることができるのかもしれないのです。

日常生活で、
ふと舞い込む、
覚醒感や、感覚の拡張、

偶然や運として、
それらは姿を現わしているのかも、
しれないのです。

そのため、
当スペースでは
X意識状態などと呼んで、
それらに感覚的に焦点化することなども、
行なっているわけです。

それらに、
意図的に気づき、意識化していくことにより、
私たちの、
高次の学習機能も、
少しずつ高まっていくからです。
そして、おそらくは、
メタ・プログラマーの創造的な影響を、
呼び込むことも、
可能になると考えられるからなのです。



※気づきや統合、変性意識状態(ASC)への

より総合的な方法論については、拙著↓
入門ガイド
および、
『砂絵Ⅰ 現代的エクスタシィの技法 心理学的手法による意識変容』
をご覧下さい。


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【PART1 Basic】ゲシュタルト療法
ゲシュタルト療法【基礎編】
ゲシュタルト療法【実践・技法編】
ゲシュタルト療法【応用編】
「セッション(ワーク)の実際」

【PART2 Standard】
気づきと変性意識の技法 基礎編
変性意識状態(ASC)とは
「英雄の旅」とは
体験的心理療法
NLP 普及・効果・課題
禅と日本的霊性
野生と自然

【PART3 Advanced】
気づきと変性意識の技法 上級編
変性意識状態(ASC)の活用
願望と創造性の技法
その他のエッセイ

【PART4 当スペース関係】
フリー・ゲシュタルトについて
セッションで得られる効果
なぜ、ゲシュタルトなのか
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